鳥獣保護法から野生生物保護法へ
☆1999年6月鳥獣保護法「改正」
日本には野生生物を包括的に保護する法律が未だ存在せず、多くの野生動物・自然保護の団体やグループが法律の制定を求めています。
そのような中、1999年に「鳥獣保護及び狩猟に関する法律」の「改正」案が出され、一部農林議員による狩猟と有害駆除の規制緩和の要請、および捕獲の許可権限の市町村への委譲などで、全国各地における過剰な狩猟・駆除が生じるおそれが高まりました。
このことから、全国の自然保護・野生動物保護に関わる団体やグループ、研究者、市民を含めた各方面からの働きかけによって活発な議論が国会で行われ、野生生物保護の法制度の確立の必要性が認識され、これが当ネットワークの活動の土台となりました。
国会での質疑は参議院先議で行われ、野生鳥獣の科学的計画的保護管理制度をうたいつつ、それを確保する制度が担保されないまま市町村等へ安易に駆除の丸投げで委ねることに対して、議員の中からも懸念の声が高まり、活発な質疑が行われました。
これを受けて、改正条文に3年後(2002年)に見直しをするとの附則が付けられ、また、参議院及び衆議院において、特定鳥獣保護管理計画へのNGOの参加などを求める付帯決議がつけられました。
*1999年の主な改正内容
・地方分権一括法により鳥獣の捕獲権限を委譲することを可能とする
・「特定鳥獣保護管理制度」の新設
☆2002年7月鳥獣保護法「再改正」
1999年の鳥獣保護法「改正」後、危惧した通り、市町村レベルにおける密猟や違法捕獲の問題が噴出したことや、特定計画実施に関わる体制の不備が指摘され、抜本的改正の必要性はさらに高まりました。
2002年の国会で再度改正案が国会にかかりましたが、これはカタカナ書きの条文を現代用語に改める程度に終わり、国会で活発な論議はあったものの、懸案事項はすべて先送りとされ、本質的な改正はさらに2年後の2004年に持ち越されることになりました。
そこで、当ネットワークは再度2004年の抜本的改正に向けて、野生生物保護法制の確立を展望しながら、活動を継続していくこととなりました。
2002年の改正では、法の目的に初めて「生物多様性の確保」が入り、また鳥獣の定義を哺乳類と鳥類に属する野生動物としたことなど、一部評価できる点もありますが、生物多様性確保のための生息地の保全は依然として担保されておらず、哺乳類の中から大部分の海生哺乳類を適用除外とするなど、内実が伴わない状態になっています。また、鳥獣保護行政にかかわる人材や予算は慢性的に不足したままであり、科学的な生態調査や農林業被害の客観的な算定の基準もないままの安易な駆除が続いています。
*2002年の主な改正内容
・条文のひらがな書き・口語体化
・目的規定に「生物多様性の確保」の導入
・海洋哺乳類の一部を保護対象(鯨類等は適用除外)
・鉛散弾の使用制限
・違法捕獲鳥獣の飼養禁止、ほか
☆2006年鳥獣保護法「再々改正」
本来の予定では2004年に再々改正が行われる予定でしたが、環境省自然保護局では自然再生法、外来生物法などの新法の制定に時間をとられ、鳥獣保護法の改正はまたも大幅に先延ばしとされました。その代わりに2004年1月に野生鳥獣保護管理検討会を設け、3年に及ぶ議論で問題の洗い出しと対策が提言されました。中山間地における過疎化、耕作放棄地の増加、狩猟者の高齢化等により、鳥獣被害問題への対策は、何よりも野生鳥獣の保護管理を担う人材の育成と配置であることが、もっとも重要な課題であり、それらが盛り込まれた改正案となることが期待されました。
しかし、2006年に参議院先議でかかった改正案は、1999年に意図された抜本的見直しとはほど遠いものでした。とらばさみなどのわなの規制強化、輸入鳥の標識制度など一部進展した事項もありますが、人材育成については何の取り組みもなされませんでした。
*2006年の主な改正内容
・狩猟免許を、銃とわなに区分する
・すべてのわなに標識の装着の義務付け
・狩猟におけるとらばさみの使用禁止
・輸入鳥獣に標識の装着の義務付け、ほか
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