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動物愛護管理法改正に関するパブリックコメントへの意見



「動物愛護管理のあり方について(案)(「動物取扱業の適正化」を除く)」 及び「動物取扱業の適正化について」(案)に関する意見



2011年11・12月に環境省が行った、2012年の動物愛護管理法改正に向けたパブリックコメントについて、生物多様性保全・法制度ネットワークは以下の意見を提出しました。

 



(1)動物愛護管理法の目的に、「生物多様性の維持」を加えること


 現行法の目的の条文を以下のように修正する。
「動物による人の生命、身体及び財産、生物の多様性に対する侵害を防止することを目的とする。」

<理由>
 野生由来のペット動物の安易な輸入、繁殖、販売、そして遺棄(放流)といった一連の行為が、国内外の生態系と生物多様性の維持に多大な悪影響を及ぼしている。
 生物多様性基本法では、関連法の見直しを行うことを定めており、また生物多様性条約第10回締約国会議では、愛知目標において、生物多様性の保全を関連法に導入し主流化していくことを日本政府は合意している。動物愛護管理法では、動物の遺棄(放流)を禁止し、動物取扱業を規制し、動物の適正飼育を普及啓発することを定めており、この観点からも生物多様性の保全に寄与するべきである。

(2)虐待の防止の対象動物に両生類・鑑賞用魚類を加えること

  現行法では、動物の遺棄・虐待罪が適用される「愛護動物」は、人が占有・所有する哺乳類・鳥類・爬虫類までとなっている。遺棄については、これに加えて両生類・鑑賞用魚類を含めるべきである。

<理由>
 ペットの遺棄(観賞用魚類については放流)が、日本の本来の生態系を損ない、生物多様性に多大な悪影響を与えている。すでに日本全土に広がったアライグマ、ミシシッピーアカミミガメ、世界遺産登録地の小笠原でのグリーンアノール等の外来動物対策には、多大の費用と労力が費やされている。とくに、沖縄の河川等では、ゼブラダニオ等の外来種の鑑賞用魚類が蔓延しており、生物多様性に甚大な悪影響を及ぼしている。また、ペットに付着する寄生虫、寄生昆虫や病原性ウイルスの拡散など、生態系への悪影響も懸念される。

(3)動物取扱業が取り扱う対象動物に両生類・鑑賞用魚類を加えること

 現行法では、動物取扱業が取り扱う動物は哺乳類・鳥類・爬虫類までとなっている。これに加えて両生類・鑑賞用魚類を含めるべきである。

<理由>
 鑑賞用魚類等の遺棄(放流)は、あたかも「命を助ける」善行とみなすような風潮があり、そのために河川や湖沼に多種多様のペット用の魚類等が放たれている。川崎市の民間団体「おさかなポスト」には年間1万匹を越える観賞用魚類の引取り依頼があるという。安易な野生動物のペット飼育を戒めるとともに、適切な飼育管理の方法を普及させる必要がある。
 そのためには、現在動物取扱業に課せられている「販売時の説明責任」を、両生類・観賞用魚類の取扱業者にも課し、顧客に対して啓発普及をすすめるべきである。

(4)罰則を大幅に引き上げること

  2004年に制定された特定外来生物法では、生態系に対する侵害は環境犯罪の一種であるとみなし、罰則の上限は個人に対しては懲役3年、罰金300万円、法人に対しては罰金1億円とされた。動物愛護管理法においても生態系保全の観点から罰則を引上げるとともに、無登録営業や虚偽登録等を行う動物取扱業者及び法人に対する罰金を大幅に引き上げるとともに、営業停止等の行政処分も強化するべきである。
 第44条の3 動物の遺棄の罰金を100万円に引き上げる
 第46条〜第50条 動物取扱業の違法行為の罰則引上げ
 第46条(無登録営業、不正登録、業務停止命令違反、勧告命令違反)
   個人は罰金300万円、法人は1億円(現行は罰金30万円、法人規定なし)
 第47条(変更の無届、虚偽の変更届出、無報告又は虚偽の報告、立入検査の拒否又は
  妨害・忌避)
   個人は罰金100万円、法人は1000万円(現行は罰金20万円、法人規定なし)
 第49条(廃業の無届、虚偽の届出)
   個人は罰金50万円、法人は500万円(現行は過料20万円、法人規定なし)
 第50条(標識の掲示義務違反)
   個人は罰金30万円、法人は100万円(現行は過料10万円、法人規定なし

<理由>
 罰則が緩いために、悪質な業者の再犯があとを絶たない。罰則の引き上げは、善良な業者には何の問題もなく、かつ悪質な業者の違法営業を抑止する効果がある。

(5)動物取扱業の登録の取消し期間を延長すること

  第19条における登録の取消し、2年から5年に延長するべきである。また営業の一部停止期間を6カ月から2年に延長するべきである。

<理由>
 業務停止や登録取消の期間が短いために、悪質な業者がすぐに営業を再開することが可能である。犯罪の抑止のためにも、期間を延長する必要がある。

(6)動物取扱業の登録取消し措置の要件に、関連法における違反行為を含めること

  動物取扱業に対する罰則の強化として、動物の取扱いに関連する法律(種の保存法、鳥獣保護法、特定外来生物法等)における違反行為についても、登録取り消しの要件に含めるべきである。

<理由>
 動物の所持・飼育・取引等を規制する法律には、動物愛護管理法のほかに種の保存法、特定外来生物法、鳥獣保護法、狂犬病予防法、感染症予防法などがあるが、営業停止の根拠とされる法律違反は動物愛護管理法に対するもののみとされている。
  たとえば、希少動物を密輸販売するペットショップや無登録の希少動物を売買する業者等が摘発され、種の保存法上の罰則が適用されて処罰された場合でも、営業停止を命じることができず、また、鳥獣保護法で捕獲が禁止されているメジロ、ホオジロなどの野鳥を密猟者から仕入れて販売する店が摘発され、有罪となった場合でも、営業停止させることができない。そのため、再犯が繰り返されている。
  しかし、そもそも種の保存法および鳥獣保護法は、動物の個体に対する適切な配慮を趣旨として含んでおり(種の保存法第7条:個体等の所有者当の義務、鳥獣保護法第19条〜27条:鳥獣の飼養、販売等の規制)、特定外来生物法、狂犬病予防法および感染症予防法は、動物の適正管理によって生態系や生命財産、健康等の保護を目的としているという点で、それぞれ動物愛護管理法の目的・趣旨と共通する点を有している。従って、これら法律(以下「動物関連法」という)の遵守は、動物愛護管理法の適正な実施に不可欠といえる。
  このような観点から、動物取扱業者が動物の取引に関する関連法に違反した場合に、登録の取消(営業停止)措置を定める必要がある。
  なお、種の保存法と特定外来生物法は環境省の直轄の業務であり、動物取扱業者の実態把握や見回り、立ち入りといった日常的監視は困難である。そのため、上記措置を導入するに当たっては、各動物関連法の主務官庁から、動物愛護管理法主務官庁(都道府県知事)への通報制度の整備が必要となる。

 

以 上