生物多様性保全・法制度ネットワーク
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CBD−COP10フォローアップ

ツキノワの会
草刈秀紀

 生物多様性条約第10回締約国会議(以下、COP10)が2010年10月に開催され9ヶ月が経過しました。今回、日本の議長国(2010年10月〜2012年9月)としての9ヶ月間を評価します。

 大きく二つに分け、東日本大震災(以後、3.11)前と後で何が変わり、何をすべきか、考えて見たいと思います。
 

 まず、COP10に間に合わせるべく進めていた「地域における多様な主体の連携による生物の多様性の保全のための活動の促進等に関する法律案(生物多様性保全活動促進法)」が国会審議を経て12月3日に成立、12月10日に公布されました。

 次に、12月下旬、「国際生物多様性年」が終了し、クロージングイベントが石川県で開催され、2011年の「国際森林年」に引継がれました。同時期、国連総会では「国連生物多様性の10年」が決議され、国連加盟国が合意しました。政府では、国連決議を受けて、5月の生物多様性の日に、キックオフを開くべく準備を進めました。

 一方、ABS議定書(生物の多様性に関する条約の遺伝資源の取得の機会及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分に関する名古屋議定書)の批准に向けて、国内法の必要性の有無と批准のタイミングも模索されました。議定書発行の為の各国の署名手続きは、2011年2月2日からニューヨークの国連本部で始まり、コロンビア、イエメン、ブラジルとアルジェリアの計4カ国の代表が議定書に署名しました。残念ながら、日本はタイミングを逸してしまいました。

 また、COP10に向けて、国内の市民団体が一つになり活動して来た、CBD市民ネットも3月末の終結集会に向けて準備していました。
 

 このような状況の中、戦後、経験したことがない3.11により国も市民も研究者も企業もあらゆるセクターがCOP10の議長国としての躍進に向けた計画の出鼻をくじかれてしまいました。

 このような状況の中、環境省は、3月29日に「海洋生物多様性保全戦略」を完成し、発表しました。残念ながら、この海洋保全戦略は、3.11の影響は考慮されていない戦略となっています。

 昨年の国会から議論になっていた環境影響評価法の10年目の見直しは、処々の問題はあったものの2011年の第174回国会で「環境影響評価法の一部を改正する法律案」が可決し、4月27日に公布されました。風力発電などが対象に加わりました。
 

 CBD市民ネットワークは、4月29日、終結総会を開き、後継組織として、「国連生物多様性の10年市民ネットワーク(UNBD市民ネット)」がスタートしました。

 ABS議定書の日本批准は、5月11日に行われ、5月までに13カ国が署名を行いました。現在、国内法の必要性の有無について作業が進められています。

 5月の生物多様性の日のイベントは、震災復興支援シンポジウム「震災復興に向けて〜がんばろう東北!〜」―国連生物多様性の10年と国際森林年を踏まえて―」の開催に変わりました。
6月には「平成23年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書−地球との共生に向けた確かな知恵・規範・行動」がまとめられました。
 

 COP10で世界が合意した2020年までの愛知目標の短期目標には、生物多様性の損失を止めるために効果的かつ緊急な行動を実施すること。2020年までに回復力のある生態系と、そこから得られる恩恵が継続されることを確保し、そして、地球の生命の多様性を確保し、人類の福利と貧困解消に貢献すること。そして5つの項目を挙げています。@生物多様性への圧力(損失原因)の軽減・生態系の回復・生物資源の持続可能な利用、A遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分、B適切な資金・能力の促進、C生物多様性の課題と価値が広く認知され、行動につながること(主流化)、D効果的な政策の実施、予防的アプローチと科学に基づく意思決定、を必要としています。

 日本は、短期目標の「効果的かつ緊急な行動を実施する」と言う点で、スタートダッシュができなくなってしまいました。3.11後、COP10が開かれたことが忘れ去られている状況の中、国は、生物多様性国家戦略2010の改訂作業を開始しました。2012年のCOP11までには「生物多様性国家戦略2012」の完成を目指していますが、現状は、前途多難と思われます。

 更に、今後の喫緊の国際会議関連の予定を見ると、日本がどこまで踏み込めるのか心配になります。

 来年(2012年)は、国際会議が目白押しです。

6月:国連持続可能な開発のための世界会議(Rio+20)(ブラジル)
6月:ラムサール条約第11回締約国会議(ルーマニア)
9月6日〜15日:第5回世界自然保護会議(韓国)
10月:生物多様性条約第11回締約国会議(インド)

 各国際会議で、COP10を成功させた日本、地震・津波・原発事故の3重苦を抱えた日本が何を発信するのか、世界は注目すると思います。

ツキノワの会−人と野生動物との共存を考える
『ツキノワ』連絡誌132号(2011.7.23)掲載より

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