第3回生物多様性国家戦略懇談会(議事録)
(文責:草刈秀紀)
日時:2001年5月21日午後1時半から4時半
場所:霞ヶ関ビル
司会:小野寺
座長:小野委員
委員:全員出席
コメンテーター:糸賀氏出席
事務局:環境省
傍聴席:30名以上分空きあり。
【環境省】
5月7日、総理から「自然との共生」という言葉が2度出ている。考え方が変わりつつある。
【委員】
今日は、自然環境基礎調査と里山がテーマ。里山は、声はすれど姿は見えず。定義は、自然志向の象徴的な利用ではないか。そもそも米の生産の場として、存在して来た。優れたエコトーン地域。最近、里山の維持として問題が生じてきている。人が生産活動する=攪乱する。緩やかなレベルとしてあった。大都市集中の反面として里山がある。自然環境基礎調査について説明してもらう。
【環境省】
多様性センター勤務。資料により説明。人の国勢調査になぞって緑の国勢調査=自然環境基礎調査。目的、意識的にバックデータを集める。30年で85億円の予算を投入してきた。エコシステムアプローチの一つと考えている。調査体制がモデルとなる。見直しが必要と考えている。環境省ならではの調査を考える必要がある。
【環境省】
里山の分析。資料により調査。集落を取りまく地域で二次林を中心とした地域を主体としている。中間的な領域。700万ヘクタール。国土の保全上軽視できない地域。多様な価値と権利関係が錯綜する地域。自然保護の行政上新たな取り組みが必要。シイ、カシ、ぼうがりんは含まれていない。全国で200万ヘクタール。それぞれの特性に応じて里山の保全をしていくことが必要。希少種の保全は、地域の生活や文化に関わる問題。問題解決=地域での合意形成が必要。
【委員】
自然環境基礎調査と里山、2点について議論してほしい。
【コメンテーター】
昭和48年の第一回基礎調査を実施。初期の調査の枠組みは? 自然環境保全法で5年ごとに基礎調査をやる。その仕組みと目的を検討した。3つのキーワード。全国の植物社会学的な植生図=植生自然度を明らかにする。20万分の1相関植生図しかなかった。5万分の1の植生図を作る。その後10段階で植生、人工化を明らかにする。国土の守るべき自然を明らかにする。3番目が関東地方。自然環境と人間環境。基礎資料を明らかにする。植生自然度の調査で客観的に評価したことは良い。10万分の1,5万分の1と細かくなっていった。国土利用計画の為の基礎、ベースができたが、自然度の評価を欠いた。自然度の概念が一人歩きした。自然度の高い10と9を開発側が重視した。限定的な評価に使われてきた。これは、失敗だった。国土庁の国土利用計画で種目別の利用計画、植生図の分布状況から北海道には、半分以上湿地が残り原野開発の対象となってしまった。環境保全長期計画の中で、国土の中でどれだけ自然のを残すか、特別地域をどれだけ増やせるか?
自然度9から考えた。自然度の概念が一人歩きした。10段階の自然に応じた管理、修復の方法に使われるべきと思っていた。里山がどれだけあるか自然度7であれば19%あっった。問題意識があっったが、そのままになってやっと目を向けられるようになっった。総合的な自然環境、生態系のシステム、特定の尺度で評価すること。
環境フィールド調査は1回目でお蔵入りになった。
田中知事が脱ダムと言っているが、再検討が必要。環境の基本度を別の意味でトライすることが必要。
環境省の環境研究総合推進管理のメンバーを10年やっている。環境省の研究の枠組み、個別研究の採択などやってきている。一括計上、未来環境想像型の研究。環境修復の応用研究など。生物多様性が自然系の中では重点的な課題になっている。生物多様性の総合的な枠組みを作って欲しい。
【委員】
基礎調査で分布のデータが整理してきて、他の国にはない制度。モニタリングにも役立ってきている。生物多様性のアプローチでも多様性について多くの情報が必要。環境のテーマが重点的になってきている。面としての国土の把握、様々な自然環境の情報を重ねることが必要。10キロメッシュの分布の整理がされているが、日本の湿地は狭い。10キロメッシュのモザイク性を見ることが必要。種の保全を把握するには分布だけではダメ。生態の情報が少ない。生活史も分かっていない。種の生息、生育適地、環境の重要性が分かっていない。どのような情報が分かっていれば種の絶滅を止めることはできない。基礎資料として選ぶことはできるが、有効な情報が何かを考えることも必要。
【委員】
資料1-2の1回目と2回目の比率。73年、87年=15年。自然林、二次林が減って農耕地が増えている。何が一番の原因か? 環境省以外でも調査している。国土庁の河川、農水省の農村のデータはないのか? 都市とか公園のデータはないのか? 国営公園もある。市内の公園でもある。
【環境省】
1回目と2、3回目は、調査の精度が違う。20万分の1と5万分の1で違う。データ的に比較ができない。他省庁の調査、全国的な観点で資料を準備した。準備不足で割愛した。
【委員】
3回の終わりが昭和の始まり、ゴルフ場ができはじめた。
【環境省】
断面をとらえるところまで答えられない。2、3回の10年のデータは、きちっと捉えられない。
【委員】
プランニングの仕事では調査疲れという言葉がある、プランの知恵がでない。リゾート法、農地の転用ではなく里山を使ってきている。規制緩和の話しがでている。今のデータをどう使うか考えるべき。農地をどうするか急を要する。
【環境省】
昭和48年、石油ショック。国土の土地利用のバブル、40年代とバブル期を比べると安定的になっている。局所的に都市周辺の宅地、安定的に続いている。地域限定的に続いている。人が住まなくなったところにゴミの不法投棄が起こっている。
【委員】
外中では違うのが分かった。アセスでは、植生自然度の物差しに問題。使い方の問題、生産者責任がある。自然の問題は前からあった。基礎調査は、48年から。環境指標の議論では、生き物、自然系の議論があった。自然系については、データの蓄積とどんなデータがどこにあるのか見ていく。機械的にデータを集める。同じ土俵の上で検討する方針であったが、自然系に足を引っ張られた。データに差異があるので同じ土俵で議論できない。データがメッシュでとらえていて、データをどう読むか。メッシュが荒いか細かいか? 細かくすれば良い訳ではない。継続して調査することが必要。何に使うか、どう政策に使うか議論も必要。
【委員】
3点。1.人口センサスがやりにくい。回答がもらえない。80万世帯もらえない。今の体制で続けられるか心配。中央省庁が自治体にお願いするのは、難しい。組織論にかかる。分析のフレームワークがきちんとしていない。経済理論に基づいてフレームワークがある。分析ができる。国土庁のフレームワークがない。生物多様性をやるフレームワークがあってしかるべき。地域生物多様性=文献。統計収集もそのように向かうべき。人口統計は5年に1回。点的に捉える。全国に網掛けすることが必要。
【委員】
当事者。基礎調査の座長である。世界的に見ても日本は総合的な面で不十分ではあるが進んでいる。そのデータが生かされていない。重要湿地の洗い出しでまとまってきている。陸上の重要生態系のあぶり出しは、できあがってきている。IBPの調査。生物の現存量。国際的な総合調査でプラスになった。マクロなものもあってしかるべき。林野では、生物資源モニタリング調査。GISから森林全体の現存料を推定する調査をも出てきている。生物がその群集にどういう影響をおよぼすか、ほとんどやれていない。センターができて整理して使えるようになってきたが、どういう視点でどう使うかの政策が必要。調査のメリハリが必要。どの項目を何年に1度やるのか、メリハリ。自然度は、自然から見た場合、どれだけ人の手が入っているかから見た。データの一人歩きが問題。緑の国土計画を思い切って作ることも必要。
【委員】
リサーチとポリシーを明確にする必要がある。何を国民に訴えるかハッキリする必要がある。何を訴えたいのかハッキリしていない。73年以降15年間の差ではあるが、比較は可能。メッシュを細かく切れば計算はできる。方形区の大きさが違うだけ。即差的なデータを使うべき=ゴルフ場の増加期と今との比較。方法論の整備。体の大きさと体重の相関、動物の群によって違う。そのデータを握って、比較する。データを区別して利用すべき。時勢に応じた調査の戦略がはっきりしていない。
【委員】
データベースがどのようにできているか? アセス審査をやる立場からそのメリハリがむちゃくちゃ金かけている。データベース保管のシステムに使えるように検討を要する。地方自治体では、環境データベースとアセスに連携してデータベース化している。調査の時に不足データの補足など注文をしていない。縦割り的なデータの取り扱いに問題がある。
【委員】
地方が中心になって調査するが共通性も必要、知見がある人からガイドラインの提示も必要。昭和30年代に局長になるとは考えていないかった。生物多様性戦略として、従来の発想を変えるのか本当のねらい。前回の国家戦略は、とにかく仕立てて見たかった。今回は、自前でどうするかが本来の目的。地方も各省も巻き込む仕組みが必要。地方で生物多様性部長ができてくるはず。身近な自然を評価する=豊かさの根元。国民の求めているものを明らかにする。
【委員】
生物多様性に関わる情報は、地域に根ざして収集する必要もあるが、群集のつながりを考えると個別の地方自治体には収まらない。全国的に整備するデータも必要。
【委員】
限られた予算と人員で何を重点的にやるか重要であるが全て重点的には、できない。
【委員】
90年に生物多様性という言葉が大きく取り上げられた。それによって調査内容も変わってきた。時代に相応しいものを考えながらやっていく必要がある。
【環境省】
「調査疲れ」は、数百万データ、調査から入力に力がいったが、最近は分析のイメージがわいてきた。処理系は進んできた。分析フレームが問題になってきた。里山ストレートのデータはない。連続性を維持して、かつ自然保護に必要なデータが必要。
【委員】
里山について。
【委員】
二次林として里山を捉えてデータが出されているが、統計的、時間的には、それしか方法がない。里山は広い意味がある。里山の山は地形のやまではない。農村の方は、野良に対して山がある。植物資源として考えている。植物資源を採取するだけではなく、持続的な利用が考えられている。人と自然の触れあいの場としてある。伝統的な農業、生活に必要なもの、里の生産が成り立つように考えると里山の配置が決まっている。多様な環境が用意される。適度な環境。適度なストレスがかかわることにより多様な生物が生き残れる。保存の為のデータ。自然と文化が絡んだ里山から考える調査研究が必要。モザイク性のある空間。
【委員】
ギフチョウその他生息環境が重要。自然のない環境を作り出しているので重要。里山がなぜ重要なのかアピールのポイントを整理すべき。環境を維持する担い手がいない。それをどうするのかが重要。水田も同じ。田園風景の方がもっとひどい。今の農産物のあり方に警鐘を鳴らすことも必要。
【委員】
農業の近代化、開放的な使い方。従来あった生態系をどう価値づけるか。資料より。コナラ、クヌギ、アカマツ林、水田地帯と関連したもの。ミズナラ林は、材を利用するために出てきたもの。異質である。
【委員】
入会権は、学生に理解されていない。制限物件は、死滅している。第1回は、山地、里地と言う側面でやった。里地、里山が大きな場所として取り上げていない。水循環は、里地とつながる、生物多様性とつながる。部会としては意識している。地域づくりの取り組みの推進も同じ。アセスは、記述と比較を一緒にいれている。
【委員】
1.農水で中山間地をやっている。オーバーラップしている。環境省として自然保護局から自然環境局になった。自然保護ではなく自然環境という見方を。2.人の手から離れたら遷移する。変移性の大きさ、数か? 杉林はじゃまになった。遷移の善し悪しを決めておく必要がある。3.活動フィールド、国有地が低い。国有林が入ってはいけないと言っているのか、高いところにあるからか? 国有林も調査すべき。
【コメンテーター】
長野県自然保護研究所で研究成果がまとまってきている。信州里山の総合研究をこれから取り組む。里地自然地域という広い面で取り組む。水循環を考えると流域圏として考える。奥山、里山、里地、河川を中心に考える。里山の自然科学的な研究、里山の生物多様性の面を客観的に考える。種のレベルと面的な把握。土地利用。里山のモザイク性、植生をベースに生物との相互作用。水系を軸にした一つの回廊として考える。現在の状況ではなく、時系列で把握する。手入れされている里山、遷移している里山(本当に荒れているのか)、を見る。2.里山を主体環境系。里山の人間活動、暮らし、里山文化、が生物多様性をどのように維持したか? 文化生態、環境社会学、農村文化など見ていく。客観的な面と文化的な面を相互に関連ずけて、里山の環境保全機能を県レベルでゾーニングしていく。逆分析、生物多様性と開発、土地利用の逆分析をGISを使って分析する。里山は、国ではなく地方行政機構がやっていくべき。田中知事の8つのビジョンの中に里山研究があり、各部横断的な体制でやっていく。
【環境省】
二次林で国有林。立地の面からその側面が強い。
【委員】
農家を継ぐ人がいない。社会学的な調査をちゃんっとやらないとだめ。
【委員】
モザイクとして水循環系として見ていく。流域圏と人との関わりを見る。どのように評価してどう見るか?
【委員】
里山と里地。里山の環境学:植物資源のモザイクを里山、それに農地などが加わったものを里地。利用や管理:新しい形で植物利用、バイオマス利用。環境の問題を総合的な解決する為に、水辺の土木工事に里山を見る。
【委員】
社会学的な調査が入らないと里山は分からない。中山間地域では、農水。
【環境省】
野生生物をテーマにする。野生生物の施策、データを整理して検討してもらう。
【環境省】
次回まだ決まっていない。
以上。 |