第123回国会 参議院環境特別委員会会議録第9号
平成四年五月二十七日(水曜日)
午前十時一分開会
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委員の異動
五月二十一日
辞任 補欠選任
三重野栄子君 久保田真苗君
五月二十七日
辞任 補欠選任
真島 一男君 藤田 雄山君
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出席者は左のとおり。
委員長 渕上 貞雄君
理 事
石川 弘君
森山 眞弓君
西岡瑠璃子君
委 員
井上 章平君
石渡 清元君
大島 慶久君
木宮 和彦君
須藤良太郎君
原 文兵衛君
藤田 雄山君
久保田真苗君
清水 澄子君
堂本 暁子君
西野 康雄君
高桑 栄松君
沓脱タケ子君
中村 鋭一君
山田 勇君
国務大臣
国 務 大 臣
(環境庁長官) 中村正三郎君
政府委員
環境庁長官官房
長 森 仁美君
環境庁企画調整
局長 八木橋惇夫君
環境庁自然保護
局長 伊藤 卓雄君
文化庁次長 吉田 茂君
事務局側
第二特別調査
室長 宅間 圭輔君
説明員
外務省国際連合
局地球環境室長 伊佐敷真一君
大蔵省関税局輸
出保税課長 花井 伸之君
文化庁文化財保
護部記念物課長 吉澤富士夫君
林野庁指導部計
画課長 田中 正則君
林野庁指導部経
営企画課長 弘中 義夫君
水産庁研究部漁
場保全課長 吉崎 清君
通商産業大臣官
房審議官 林 康夫君
通商産業大臣官
房審議官 姉崎 直己君
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本日の会議に付した案件
○絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)
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○委員長(渕上貞雄君) ただいまから環境特別委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告をいたします。
去る二十一日、三重野栄子君が委員を辞任され、その補欠として久保田真苗君が選任されました。
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○委員長(渕上貞雄君) 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律案を議題といたします。
本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言を願います。
○久保田真苗君 昨日環境白書が閣議決定されたと報道で拝見したんですけれども、せっかくのこういう時期ですから環境委員に配付されていてもよかったんじゃないかと思うんですが、配付していただいたんでしょうか。
○国務大臣(中村正三郎君) 御指摘のとおりこれはお届けした方がいいと私も感じますが、今現在届けられているかどうか調べて、早速お届けするように取り計らいたいと思います、
○久保田真苗君 大変注目されている時期なので、少なくとも報道関係と同時にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
それで、きょうは絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律案ということでございまして、これは自然環境保全審議会の答申に基づいてされたと思うのでございます。
自然環境保全審議会の答申の中にも、絶滅のおそれに追い込んだ圧迫要因で共通しているのは決して自然的ないろいろな生成それから消滅というような事態ではなくて、人間の生活領域の不断の拡大によるところの圧迫要因であるというふうなことが書かれております。全く私もそのとおりだと思いますので、こういうことによりまして動植物の生息地の破壊や減少といった事態が防止されることを心から願うのでございますけれども、私はこの種のための環境としましては大変なときに至っているんじゃないかと思うわけです。
世界の人口を見ますと、世界人口白書などによりますと一九九〇年には五十三億人。それが一秒に三人、一日に二十五万人、一年間に約一億人の人口増加があって二〇〇〇年には六十二億人を超えるだろう。そして二十一世紀中にはほぼ三倍になるだろう。遠いことはこれからのいろんな要因があると思いますけれども、まず二〇〇〇年ぐらいまでに約十億人近い増加があり、そこに経済活動が活発になり排気ガスもふえ、そして生物のすんでいる生息地が侵されていくという状況は、まずこの予測のように進んでいくんじゃないかと思います。環境庁として人間の生活領域の発展による今後の環境の変化をどういうふうにとらえていらっしゃるか、お聞かせいただきたいと思います。
○政府委員(伊藤卓雄君) 非常に大きなお尋ねでございますのでうまくお答えできるかどうかわかりませんが、日本の場合は狭い国土の中で非常に過密な人口、これは主として都市部を中心に生活をし発展をしてきたという歴史があるわけでございます。その過程でやはり林を開発し畑地をつくりというような形で山の方に拡大をしていくという傾向がありますので、どうしてもそういった過程で私どもと生物の生活領域が衝突をする。その中でいろんな形で種が失われていくという傾向にあるわけでございます。
これは日本の地形その他を考えますとなかなか今のところはとまっていないわけでございますけれども、やはり生物、自然が大事であるという意識のもとに環境行政を初め各般の行政も行われつつあります。一つのやり方といたしましては、守るべきところは守るという形での地域指定、それから都市部におきましても都市の緑地の保全をするというような法律、制度等もございます。あるいはそういった法律にかかってはおりませんでも、現在の自治体等では身近な自然を守ろうということでいろんな工夫がなされておるわけでござ
います。そういうことで、現段階では遅きに失したと言われるかもわかりませんが、そういったことの大事さを悟り、そういった手が打たれつつございますので、従来のような形での衝突どは違った形になるんじゃないかと思います。
世界的な課題といたしましては、いろんな形で環境悪化が進んでおりまして、その大きな原因がやはり人口の問題。それが引き起こす貧困の問題との関連でやはり自然が無秩序にむしばまれておるということで、同じような人間と自然との衝突の場面が各所で出てきており、これが今日の地球環境問題の基本になっておりまして、世界各国の為政者がそれを意識し、今回のサミット等にも期待を寄せているところではないかというふうに考えているところでございます。
○久保田真苗君 環境サミットでもいろいろなやりとりがあるというふうに聞いております。ただ、私はこういう絶滅に瀕している種の生息地というものが人口の増加、人間の活動領域の増加、経済面からのいろいろな廃棄物等の造出、そういったものの流れの中で基本的な体系としては非常に圧迫されていく。その要因が弱まることは恐らくないんじゃないか。したがいまして、環境行政においては、私は強い決心でもって絶滅のおそれのある野生動植物を守るというそういう姿勢でいろいろな場面に臨んでいただきたい。
それは非常に単純な言い方かもしれないけれども、そういう大きな背景を考えますとそれをやるのは環境庁の仕事だというふうに考えますので、きょうはそういう観点からの御質問を幾つかさせていただきたいと思います。
それで、ワシントン条約の締約国に日本がなったのが昭和五十五年でありますから、それから数えて十三年目になるわけです。この三月には締約国会議も日本で開催される、そういうことになりました。また、今まで条約違反の取引について日本が非難を浴びることも多くございましたけれども、科学当局としての環境庁とか農林水産省、また条約の管理当局としての通産省、それに水際での確認に当たってこられた税関、大蔵省、こういったところの御努力の結果で締約国会議ができたということは大変結構なことだったと思いますし、またこうした国際的な背景の中でこの法律案がつくられたことの意義は認めておきたいと思います。
それで、今回の法律案は、今度廃止になります既存の法律の絶滅のおそれのある野生動植物の譲渡の規制等に関する法律に比べまして、例えば違法の輸入者に原産国へ返還をさせることができるようになるとか、それから罰則が幾らか強化されたというようなことで前進が見られると思いますし、環境庁としては非常に御苦労されてここまでこぎつけられたんだという点は私も評価しておきたいと思います。
ただ、この際お聞きしておきたいのは、一つは国際希少野生動植物の対象なんです。この法案の十二条で希少生物の譲り渡し等を禁止しておられるのは適切だと思います。また、こういうふうに原則的に禁止して、特定の要件を満たした場合だけ譲り渡しを認めるというその原則も非常に理にかなっていると思います。しかし、国際希少野生動植物としてはワシントン条約の附属書Tのみが対象になっていると聞くのですが、その点はそれで十分とお考えになっているんでしょうか。
○政府委員(伊藤卓雄君) 先生御指摘のとおり、本法案におきましては「国際希少野生動植物種」という定義を第四条の四項で置いております。ここでは「国際的に協力して種の保存を図ることとされている絶滅のおそれのある野生動植物の種(国内希少野生動植物種を除く。)であって、政令で定める」ということになっておるわけでございますが、これは、私どもといたしましては先生も御指摘のように、ワシントン条約で言いますところの附属書Tを念頭に置いた表現でございます。附属書Tの方では、「絶滅のおそれのある種であって取引による影響を受けており又は受けることのあるものを掲げる」こととされているということでございますのでこれを考えておるわけでございます。
附属書Uの対象となりますものは、「現在必ずしも絶滅のおそれのある種ではないが、その存続を脅かすこととなる利用がされないようにするためにその標本の取引を厳重に規制しなければ絶滅のおそれのある種となるおそれのある種」を掲げるということでございます。附属書UはランクがIに比べてちょっと低いといいますかそういう位置づけのものということで、一定の証明書があれば取引がなされるという前提のものでございますので、ここまで私ども法律で国内規制をかける必要はないんではないかというふうに考えたわけでございます。
○久保田真苗君 ですけれども、この附属書皿の方が九九%です。ほとんどは附属書のUになっているんですね。そして、例えばワニ皮のように、同じ種類のワニ皮であるけれども原産国によって附属書Tになったり附属書Uになったりするというふうに伺うんですね。そうしますと、実際には附属書Tなのに、国内での識別ができないところから附属書Tの方の取引規制も崩れていくというそういうものがかなりあるのじゃございませんか。
○政府委員(伊藤卓雄君) 附属書TあるいはUにしましても、輸出入の管理につきましてはいわゆる水際規制ということでそれぞれの所管省において御努力をいただいておるところでございます。
今おっしゃったように、IとUの区別がしにくいから国内法で何とかならないかというお尋ねかと思いますけれども、実はそこに基本的な問題点がございます。そういった加工されたもので小さくなったものについてどう判断するか。あるいは国内に入ってからでも仮にそういうものであるなら判断しにくいわけでございますので、一つ一つのものが何らかの形で識別できるという前提での今の制度でございますが、できないものについてどうしていくかというのは、国際取引だけでなくて国内規制をやる場合も問題として今後検討をしていかなければならない課題だと考えているところでございます。
○久保田真苗君 国会の附帯決議がございますね、昭和六十二年、現在の絶滅のおそれのある野生動植物の譲渡の規制等に関する法律の。これが成立するときに、国会で附帯決議の冒頭のところでこういうふうに言っているんですよ。「規制の対象となる「希少野生動植物」の種は、ワシントン条約附属書Tに掲げる種に限定することなく、適切な評価を行うことにより同条約の効果的実施に資するよう、その範囲を定めること」と。
これはどういうふうに対応していただけたんでしょうか。
○政府委員(伊藤卓雄君) 原則的に附属書Tのものについては許可制にかからしめているわけですけれども、一部につきましては国によりまして登録制という形で管理しておるものもあります。
○久保田真苗君 今の御答弁はよくわからなかったんです。原則としては許可制だけれども登録しているものもあると。どういう意味ですか。
○政府委員(伊藤卓雄君) ワニの例でお尋ねでございますけれども、ある地域からのものにつきましては登録をすることによって輸入する際の管理をする。したがって、登録票をつけて転々流通することがあり得るということでございます。
○久保田真苗君 それは今度の新法によってそうなったんですか。
○政府委員(伊藤卓雄君) これは従来の国内法からそういう取り扱いをしておるものでございます。
○久保田真苗君 今回も衆議院側では改めてこの点を附帯決議に加えているということは、実際に前の附帯決議が何も考慮に入らなかったということだと思いますけれども、その点は何か理由があるわけですか。登録制ということはあるけれども、少なくとも一定の種については附属書Uについても御検討あってしかるべきだったと思いますけれども、その点は検討していただいた結果なんでしょうか。
○政府委員(伊藤卓雄君) 衆議院サイドでは、「ワシントン条約附属書Iの種に限定することなく、同条約の効果的実施に資するよう、その範囲を定めること。」という御指摘のような決議がなされております。これは附属書Uにつきまして書けという御趣旨とは必ずしも私どもは理解していないわけでございますけれども、附属書Uのものにつきましても、ワシントン条約の趣旨の合うように国内管理ができるようにしろという御趣旨と理解をしているところでございます。