第156回国会 環境委員会 第8号
平成十五年四月二十二日(火曜日)
   午前十時開会
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   委員の異動
 四月二十二日
    辞任         補欠選任
     愛知 治郎君     椎名 一保君
     山東 昭子君     松山 政司君
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  出席者は左のとおり。
    委員長         海野  徹君
    理 事
                大島 慶久君
                清水嘉与子君
                段本 幸男君
                小川 勝也君
                高橋紀世子君
    委 員
                小泉 顕雄君
                山東 昭子君
                椎名 一保君
                真鍋 賢二君
                松山 政司君
                山下 英利君
                小林  元君
            ツルネン マルテイ君
                福山 哲郎君
                藁科 滿治君
                加藤 修一君
                弘友 和夫君
                福本 潤一君
                岩佐 恵美君
                田  英夫君
   国務大臣
       環境大臣     鈴木 俊一君
   副大臣
       環境副大臣    弘友 和夫君
   大臣政務官
       環境大臣政務官  望月 義夫君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        大場 敏彦君
   政府参考人
       外務省総合外交
       政策局国際社会
       協力部長     石川  薫君
       厚生労働省医薬
       局食品保健部長  遠藤  明君
       農林水産大臣官
       房審議官     山本 晶三君
       農林水産技術会
       議事務局研究総
       務官       永山 勝行君
       環境省総合環境
       政策局長     炭谷  茂君
       環境省自然環境
       局長       岩尾總一郎君
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  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物
 の多様性の確保に関する法律案(内閣提出)

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○委員長(海野徹君) ただいまから環境委員会を開会いたします。
 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律案の審査のため、本日の委員会に外務省総合外交政策局国際社会協力部長石川薫君、厚生労働省医薬局食品保健部長遠藤明君、農林水産大臣官房審議官山本晶三君、農林水産技術会議事務局研究総務官永山勝行君、環境省総合環境政策局長炭谷茂君及び環境省自然環境局長岩尾總一郎君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(海野徹君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
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○委員長(海野徹君) 遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律案を議題といたします。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○段本幸男君 自民党の段本でございます。
 まず最初に、遺伝子組換えという、トップバッターでもありますので、新しい分野の技術について少しお尋ねしたいと思うんですが、遺伝子組換え技術というのは二十一世紀の恐らく科学技術の重要な柱になる、このことは間違いないだろうというふうに思うんですね。この分野で、今現在、特に農産物の分野で非常に進んで研究、取組がなされているというふうに伺っておりますが、どのようなレベルにあるのか、そして今後どのような発展が見込まれるのか、これについてお尋ねしたいと思います。
○政府参考人(永山勝行君) お答えいたします。
 農作物に関する遺伝子組換え技術は、これまでの品種の改良ですとか栽培技術の改良といった取組では実現できない高品質、高機能、低コストでの食料の生産を可能にすることにより、豊かな国民生活の実現に大きく寄与する可能性を有しております。
 我が国では、独立行政法人、試験研究機関の独立行政法人ですとか大学等の研究機関を中心に、遺伝子組換えに必要となる技術の開発、あるいは有用遺伝子の機能解明、また遺伝子組換え農作物の開発を行っているところでございます。現在のところ、青色のカーネーションですとかウイルス病に強いペチュニアなどが開発されております。
 この技術を発展させるためには、遺伝子組換え農作物の食品としての安全性、また環境への安全性の確保を図るとともに、新しい技術でございますので、その推進に当たっては国民に十分説明いたしまして、その理解を得ながら推進していくことが重要であると考えております。
○段本幸男君 安全を確認しながら進めておられるということですが、その安全確認について、非常にこれは今回の法律でも主題だと思うんですが、重要なことだと思うんですが、どういう基準に基づいてやっておられるのか、これについてお伺いしたい。また、その安全基準に基づいてやっておられることによって、今現在、研究機関でいろいろ取組なさっているという報告がありましたが、それらが周辺地域の人たち、研究機関の周辺地域の人たちとトラブルになるような事例があったのかどうか、その辺についても併せお尋ねしたいと思います。
○政府参考人(永山勝行君) お答えいたします。
 現在、我が国に遺伝子組換え農作物を輸入しようとする場合におきまして、農林水産分野等における組換え体の利用のための指針、これに基づきまして、あらかじめ我が国の環境に対して悪影響がないこと、これは雑草化ですとかあるいはいろいろなほかの生物に悪い影響を及ぼすものかどうかといったことを調べまして、農林水産大臣の確認を受ける必要があることになっております。
 この指針に基づきまして、栽培又は加工利用目的での環境安全性について農林水産大臣による確認が行われておりまして、栽培及び加工利用目的の確認については三十七件、それから加工利用目的のみでの確認は三十件となっております。これらの環境安全性を確認済みの遺伝子組換え農作物のうち、現在国内で商業栽培されているものはございません。
 しかしながら、これらの農作物を栽培する場合には、万が一にでも、周辺の非遺伝子組換え農作物との交雑や収穫物の混入が生じるおそれがあることから、周辺の農業者等の理解を得てこれらの栽培に伴う混乱を防ぐことが重要と考えております。このため、一般圃場で試験的栽培をしようとする場合には、周辺の農業者等の理解を得るとともに、関係地方公共団体に情報提供を行うようにしているところであります。このような措置によりまして、遺伝子組換え農作物の一般圃場における試験的栽培に当たりまして混乱を生じることのないようにしてまいりたいと考えております。
○段本幸男君 まだ商業作物ないというふうなお話でしたが、そのことは取りも直さず、国民の間にまだまだやっぱり遺伝子組換え技術に対する信頼性なのか、あるいは食品に対する拒否感というものが非常に強いんじゃないかというふうなことを感じるんですが、その辺は政府はどういう認識をされているのか。また、今後、そういう国民の意識に対して、片っ方で非常に重要な科学技術であることは間違いないですから、どういうふうに、誘導と言ったら変ですが、国民の気持ちを持っていこうとされているのか、その辺についてお尋ねしたいと思います。
○政府参考人(永山勝行君) 農林水産省におきましては、平成十三年度から一般消費者を対象にいたしましたアンケート調査を実施しております。
 平成十四年度に実施いたしました遺伝子組換え技術農作物・食品についてのアンケート調査によりますれば、遺伝子組換え技術が農業・食品分野において役立つあるいはやや役立つとする人が七一%でございました。一方で、遺伝子組換え農作物を栽培することによる環境への影響を懸念する人が七六%、それから遺伝子組換え食品を食べることに対する不安を感じるとする人が七九%となっておりまして、遺伝子組換え技術に対する期待はあるものの、環境への悪影響等を心配する声は根強いと認識しております。
 また、農林水産省が遺伝子組換え農作物を栽培した場合の環境への安全性を確認していることを知らなかったという人が六一%ございました。また、環境への影響に関する情報を求める人も六七%ございました。
 以上のことを踏まえまして、農林水産省といたしましても、国民の関心に的確に対応した情報提供とそれに基づく幅広いコミュニケーションを行い、国民の理解を得ていくことが遺伝子組換え農作物の開発を進める上で極めて重要であると認識いたしております。このため、遺伝子組換え技術の体験研修ですとかシンポジウムの開催、パンフレットの配付などを通じまして国民の理解増進を図るとともに、遺伝子組換え農作物を考える市民会議などを開いておりまして、これによりまして国民とのコミュニケーションの充実強化を図ってきたところであります。
 今後とも、環境への悪影響に関する科学的な知見や評価に係る情報など、国民の関心を的確にとらえた情報提供や国民相互のコミュニケーションを推進してまいりたいと考えております。
○段本幸男君 是非、そこのところは重要で、やっていただきたいと思うんですが、しかし現実に今輸入農産物について、この間の参考人質疑のときにも少し出ておりましたけれども、遺伝子組換え食品について、例えば大豆について見たときに、我が国の輸入量の七五%以上がアメリカから輸入されている。その七五%を輸入している、アメリカでは、更に生産の七五%は遺伝子組換え商品で既に作られている。こんなふうな状況ですから、五〇%以上が、日本に輸入されている大豆の統計的に見れば五〇%以上が遺伝子組換えの大豆だということなんだろうと思うんですが、実際には国民は十分にそのことを知らされていない、あるいは知っていない、そういうふうな状況にあるんではないかと思うんですね。
 このことは、農林省は、確かにこれからはやっぱり遺伝子組換えだということを十分国民に知らせていかないかぬとおっしゃっていますが、やはりどこか問題がある。
 例えば、表示制度において、今現在、原産地が、この間も私、参考人質疑終わってから家へ帰って食用油を見てみました。アメリカと書いてあるんですね、原産地米国産。しかし、産地書いてあるだけで、それが遺伝子組換え商品かどうかという表示までは至っていない。現在の表示制度ではそうなっているんだと思うんですが、やはり表示制度にむしろこれから、今農林省がおっしゃったような方針を持つのなら、改善を加えていくような総合的な対策を立てていかないと必ずしも、知らしめると言ったって実効性が上がらないんじゃないかというふうに思うんですが、その辺についてのお考えをお聞かせ願いたいと思います。
○政府参考人(山本晶三君) ただいまJAS制度のこと、品質表示基準のことのお尋ねがございました。
 JAS法に基づきます品質表示基準につきましては、平成十四年四月から、我が国で流通する可能性のある遺伝子組換え農産物、ただいま御指摘のございました大豆とかトウモロコシ含めまして、これにつきましてはすべて義務表示の対象としております。また、これらの遺伝子組換え農産物を原料といたしました加工食品につきましても、組換えられたDNAやこれによって生じましたたんぱく質が検出可能なものにつきましては義務表示の対象としております。
 しかしながら、一方、しょうゆやただいま御指摘のございました食用油につきましては、最近の分析技術によっても組換えられましたDNAやこれによって生じましたたんぱく質が検出できないと承知しております。したがいまして、こういうことで踏まえますと、現時点ではこの表示が正しいかどうか科学的に検証できないことから、義務表示とすることは適当でないと考えております。
 しかしながら、表示対象品目につきましては私ども毎年見直しを行っておりまして、新しい遺伝子組換え農産物が開発されました場合や分析技術の精度が向上いたしまして組換えられましたDNA等の検出が可能となった場合には追加することといたしております。
 そういう意味では、表示制度というものをしっかり運用してまいりたいと考えております。
○段本幸男君 いろいろ意見のあるところで、農林省は農林省で運用されているんだと思いますが、是非、疑わしきは混乱のために情報を与えずではなくて、むしろ疑わしきはやはり与えていくような方向が望ましいんではないかと思いますが、これは意見として少し述べておきたいと思います。
 さらに、遺伝子組換え技術について私は特に個人的に思っているんですけれども、今冒頭にも言いましたように、遺伝子組換え技術というのは二十一世紀の世界の重要な科学技術の柱、しかも我が国は科学技術立国というのを標榜しているわけですから、これについて遅れることなく、やはり重要ないろんなパテントとか、いろんな問題を考えたときに、もうただ単にアメリカに全部追随するだけでは駄目で、やはりいろんな形できちっと確立しなきゃいけない、こういう面が片っ方であることはもう重々分かっています。
 しかし、さっきから言っているように、片っ方で国民にこれだけ拒否感がある、特に遺伝子組換え食品に対して。また一方で、農業生産という意味で見たら、ただ単に遺伝子組換え食品を作って、例えば除草剤耐性の大豆なりトウモロコシを作って効率のいい農業を一生懸命やろう、これをやっている限りは結局アメリカ農業に決して勝つことはないというふうな感じがするんですね。
 むしろ、この機会にどうやって差別化するか、日本農業をどうやって生かしていくのか。むしろ我が国は遺伝子組換え農産物を作らない、そして国民に情報を与えて安全なものを食べてもらうようにするんだと。こんなふうな独自の道を作り出す非常に今チャンスに来ているんではないか、これを生かすべきではないか。
 こんな気もするんですが、こういう相反、片っ方できちっと技術はやらにゃいかぬ、しかし片っ方ではむしろ日本農業をどういう形で育てていくか。この相反する二つをやるためには、やはりそろそろ国として基本方針をきちっと定めておく必要があると思うんですが、その辺についての農水省のお考え方をお伺いしたいと思います。
○政府参考人(永山勝行君) まず、我が国の食料の安定供給のためには、生産者、食品産業の従事者、それから消費者などの関係者が一体となってそれぞれの課題に取り組んでいくことが不可欠であると考えております。
 具体的には、食料消費の面では栄養バランスの改善や、食べ残し、廃棄の減少など、食生活の見直しを強力に推進するとともに、生産面では品質の向上や低コスト化を推進し、麦、大豆、飼料作物を始めとする国内生産の増大を図っていく必要があると考えております。
 遺伝子組換え技術は、御指摘のとおり差別化にとっても非常に役に立つものだと我々は思っております。この技術は、これまでの品種の改良、それから先ほども申し上げましたが、これまでの品種の改良ですとか栽培技術の改良といった取組では限界があった高品質、高機能、あるいは低コストでの食料の生産を可能にするということによりまして、豊かな国民生活の実現などに大きく寄与する可能性を有しております。こういったことから、我が国においても遺伝子組換え技術の開発を推進していくことは必要であると考えております。
 しかしながら、先ほども申し上げましたように、遺伝子組換え技術は新しい技術でございますので、その推進に当たっては国民に十分説明するとともに、その理解を得ながら進めることが重要であると考えております。
○段本幸男君 この点に関しては、恐らく学者さんでもいろいろ意見あるし、当然我々の仲間でもいろいろ意見あるし、十分これから議論をしていかなきゃ、今日は質問時間の関係でこれでこの問題についてはやめておきますが、是非、これからもいろんな機会を見て議論をしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
 次に、法律の中身について少し環境省の方にお伺いしたいと思います。
 今回の法律、運用面の課題は、一つには実験レベルというんですかね、二種使用のものをどういう段階でフィールドレベル、いわゆる一種使用に踏み切るかということが非常に重要なところに当たるんではないかと思うんですね。先ごろの参考人質疑でも加藤参考人から、安全確認、いわゆる慎重の部分と、しかし、慎重で、もう安全確認、絶対一〇〇%できなきゃやらないんだといったらいつまでたっても進歩しないから、ある部分ではやはりこれは先端技術ですから果断に攻めなきゃいけない、そういう部分も出てくるんじゃないかと思うんですが。
 この辺については、法四条の主務大臣の承認基準というのが恐らく掛かってくるんじゃないかと思うんですが、その運用基準についてどのようにお考えになっているのか、環境省のお考えをお伺いしたいと思います。
○政府参考人(岩尾總一郎君) 施設等の内部において第二種使用を行っていた遺伝子組換え生物であっても、環境中で第一種使用にするというときには主務大臣の承認が必要でございます。
 主務大臣は、第一種使用等の承認を行うに当たっては、学識経験者の意見を聴きつつ、遺伝子が導入される生物の性質、導入される遺伝子により生物に付与される新たな性質、当該遺伝子組換え生物が使用される環境の特徴などを総合的に勘案して、生物多様性に影響を与えるおそれがないかどうかを評価し、その結果影響がないと認める場合に承認を行うという手続でございます。
 その際、ある組換え生物を我が国の環境中で初めて使用するとき、我が国の環境における生物多様性についての科学的知見が必ずしも十分に得られていないという場合がありますが、そのような場合には、まずは生物多様性影響が生ずることのないように、管理された圃場等において試験的な使用を行い、情報を収集した上で使用を拡大することになるというように考えております。
○段本幸男君 私は、その承認基準に関しては重要なことは二つあるというふうに思っております。それについて少し環境省のお考えを聞きたいと思うんですが、一つは、先ごろの参考人質疑でも岩槻参考人だったと思いますが、言われていたのは、承認基準は最初はきちっと厳しくやっておく、しかし技術レベルが非常に上がってくるその向上の度合いに応じて利用範囲を拡大していくという、そういうことをやっていかなきゃいけない、先端技術ですから、日進月歩、それに対応できる弾力性というか応用性を持たなきゃいけない、こういうことをおっしゃったと思うんですが、全くそういう感じがするんですね。その辺についての運用方針についてお伺いしたいと思います。
○政府参考人(岩尾總一郎君) 先生御指摘のように、第一種使用においては、その時点における最新の科学的知見に基づいて、私ども生物多様性影響が生じるおそれがないと認めるときに、かかる承認を行うわけでございますが、承認時には予想できなかった環境の変化あるいは科学的知見がその後充実するということで、生物多様性への影響が生ずるおそれがあると認められるに至る場合もあり得るというふうに理解しております。
 したがいまして、科学的知見が必ずしも十分に得られない場合には、先ほど申し上げましたように、最初から環境中に幅広く利用するということではなくて、まずは管理された圃場等において試験的な使用を行って情報収集し、そして使用を拡大していくというような運用が必要だろうと考えております。この運用の仕方については基本的事項に盛り込むことが適切であるというように考えております。
○段本幸男君 もう一つの重要な点は、やはり情報開示ではないかというふうに思うんですね。確かに、一種使用の場合に学識経験者の意見を聴くようになっておりまして、当然、委員会の状況なんかは公表されるんだろうと思いますけれども、単に委員会の状況だけではなくて承認過程そのものを、ただ単に環境省の行政の中にやるだけではなくて、やはりこれは遺伝子組換え技術という大変国民に関心の深い、心配もしている、この問題について何としても国民に見えるような格好できちんと説明していく必要があると考えるんですが、どのようにお考えでしょうか。
○政府参考人(岩尾總一郎君) 遺伝子組換え生物等は、企業などが創意工夫の結果、生み出されたものでございます。個別具体的な審査情報というものの中には知的財産権に深くかかわるものも想定されます。したがいまして、承認の過程そのものをすべて公開するということは困難ではないかと考えております。
 ただし、個別申請者ごとに作成される第一種使用等の具体的な方法を定めた第一種使用規程自体については、法に基づいて公表いたします。また、第一種使用規程の承認に際して、その内容に応じてパブリックコメントを求めるなどの措置を講ずる方針でございます。
 こういうような機会を通じまして、知的財産権を侵害しないように配慮しつつ、国民に対する情報の提供には最大限努めてまいりたいと考えております。
○段本幸男君 確かに、知的財産権の問題があって大変難しい問題だと思うんですが、しかし一方では、国民に対してこの問題をオープンにしていく。今がスタートラインですから、特に生物多様性に対する影響なんかをどう判断するかというのは大変重要な問題だと思うので、是非その辺について更なる御検討もお願いしたいと思います。
 情報公開という意味では、私は、共産党の、後で、どうも修正案にも少し入っているようですが、むしろ二種使用についても、施設の中であっても、周辺住民との間、やはり全然何も知らされていない、何も分かっていないというんでは非常に不安ではないかと思うんですね。
 その辺について、情報開示を一種と同様に図るようなことが必要ではないかと思うんですが、環境省の御意見をお伺いしたいと思います。
○政府参考人(岩尾總一郎君) 第二種使用、封じ込めて利用するということですから、環境中には漏れないという理解でございます。研究室、構造物の内部で使用することでございますので、環境中への拡散は防止できる措置、すなわち生物多様性の影響を防止できる使用形態であるのが二種使用であります。
 この拡散防止措置については、これまで既に数十年にわたりましてガイドラインその他で実施されてきました知見や経験の蓄積がございます。また、それによって類型化されております。したがいまして、本法律案においても、使用者が取るべき措置についての基準を法律の第十二条に基づく省令であらかじめ明らかにするようにしております。当該基準を定める場合には、もちろんパブリックコメントを実施するなどによって遺伝子組換え生物に関しての知見などを有する者の意見を生かしていきたいと考えておりますし、このような措置を通じて国民には情報を提供したいと思っております。
 個別の確認についての情報公開でございますが、新たな遺伝子組換え生物を使用する場合など十三条に基づく確認を行う場合には、基準に示された拡散防止措置のいずれかを使用者が選択して、その妥当性を主務大臣が確認するという機械的なものでありますので、必ずしもパブリックコメントを求める等の措置までは必要ないというふうに考えております。
○段本幸男君 安全、もう飛散しないようにしているんだからというだけで、なかなか国民が今までのケースから見て納得しないケースなんかも現実には多かったんではないかと思うんですね。是非その辺もまた、いろんな形で実態運用で御検討願いたいというふうに思います。
 さらに、一種使用のために先ほど出ていた学識経験者から意見を聴くという話なんですけれども、これは事柄上、この前の参考人質疑でも出ていましたけれども、やはり幅広い分野から選ばなきゃいけない、あるいは専門性をずっと持った人を選ばないと、生物多様性なんというのは新しい分野ですから、なかなかそういうことが議論されないんじゃないかと思うんですが、どのような運用方針を持っておられるか、お尋ねしたいと思います。
○政府参考人(岩尾總一郎君) 学識経験者の選任でございますが、生態学の分野の知見がある方を始めといたしまして、生物工学、動植物学、農学など様々な分野で現実に遺伝子組換え生物などについて科学的な知見を有している者を想定して、学識経験者に、そのような学識経験者の中から人選したいと考えております。生物多様性影響評価が適切に実施できるよう選任してまいりたいというふうに考えております。
○段本幸男君 何か抽象的なだけではなくて、私は今回、遺伝子組換えの技術やっている技術者もたくさんおられる、片っ方で生物多様性をずっとやってこられた人たちもおられる。実際は、それをどう結び付けていくかという非常に重要な新しい分野に踏み込もうとしている。
 すると、環境省はむしろ、そういう学会を作るんだとか、そういう結び付けるために何々をするんだ、人を育てるんだ、体制を作るんだと、こういうむしろもっと積極的な役割を行政として果たすべきだと思うんですが、この辺についてどのようにお考えでしょうか。
○大臣政務官(望月義夫君) 研究面につきましては、国立環境研究所において遺伝子組換え生物の生態系への影響を評価するための研究が進められております。一定の研究体制を整備しているところでございますが、まだまだ高めてまいりたいと、このように思っております。
 また、自然環境基礎調査、レッドデータブックスの作成等を通じまして生物の多様性に関する情報を収集するとともに、生物多様性センターを設置し、情報の蓄積及び人員の充実を図っているところでございます。行政面においても、遺伝子組換え生物の生物多様性への影響を評価するための一定の体制は構築されつつあるものと認識しております。
 しかしながら、生物多様性については現状の把握や影響の評価に関する知見の充実が不可欠であることから、今後とも専門家の一層の強化や新法に基づく事務の実施体制の強化に努めてまいりたいと、このように思っております。
○段本幸男君 センター作っていただいて是非そういうことをやってほしいんですが、ただセンター作って器作ったからでき上がったというものではなくて、実質大事なのはその中身をどれだけ作るかということで、予算付ければそれでいいということでは私はないと思うんで、是非、これからむしろ環境省の中身が問われていると思うんで、是非よろしくお願いしたいと思います。
 加えて言うならば、遺伝子組換えという、これはもう新しい今までないものを作る。この意味では、何といっても、これからそれが環境にどんな影響を与えるのか追跡というんですか、その後どうなっていくかというのが、もちろん万全を期してやっているつもりでも、後のフォローというものが非常に重要になってくるんじゃないかと思うんですね。
 そのために法七条の恐らく規定が設けられたんだと思うんですが、その法七条の規定を実効性上げるためには、ただ単に書いてあるだけではこれは空念仏ですから、モニタリングをやるとか具体的なその手法がきちっと確立されていないと、もう幾らあんな規定があったって仕方ないというふうに思うんですが、その辺の具体策について環境省はどんなことを考えておられるのか、お尋ねしたいと思います。
○大臣政務官(望月義夫君) 生物多様性に対する環境評価は、その時点における最新の科学的知見に基づいてもちろん行われるものでございます。しかしながら、評価時には予測できなかったような環境の変化、それからまた科学的知見の充実によって、新しく認証を行った遺伝子組換え生物においても生物多様性への影響が生ずるおそれがあると認められるに至る場合があり得るということでございますので、承認後においても、必要に応じてその使用による影響に関するデータの収集を行うようにしております。これが大変重要だと思っております。
 このため、法第六条第二項において、必要に応じて承認を取得した者に対し情報の提供を求めることができるように措置しているところでございます。また、この規定を活用して、承認を得た者に対し、自らの開発した遺伝子組換え生物等の使用状況についてのデータなど、必要な情報の収集及び提供を求めてまいりたい、このように思っております。
○段本幸男君 万全を期してやられるというふうなことだと思うんですが、ただ、このことに関して、僕、ちょっといろいろ市民団体でそういうことをやっておられる方にも意見、インターネットで聞いてみたんです。
 基本的に違うところは、環境省、今回の制度が、性善説というか、やっている人は正しいことをやっているだろうという性善説に、行政はある程度そうせざるを得ないと思うんですけれども、しかし、市民団体の人なんかは、あっちゃならないこと、しかしあっちゃならないことが今まで原子力の問題でもたくさんあった。だから、やはり性悪説、どうもうそつくかもしれぬと、こういう前提で全部この制度を見るといろんな問題があると指摘受けました。
 いろいろそういう国民の心配もあるということをきちっと受け止めながら、万全を期してもらいたいというふうに思います。是非よろしくお願いしたいと思います。
 それで、この法律の問題を議論するときにどうしても言っておかなきゃいけないのがアメリカの、この生物多様性条約にも参加していないし、カルタヘナ議定書にも未加入だというふうな状況。
 こういう状況に対して、日本、今、もちろんカルタヘナ条約にも調印し、この法律も作るという日本の姿勢をやはりきちんとアメリカ、アメリカを今回、小泉総理は真の盟友だと、こうおっしゃった。真の盟友ならば、単にイラク戦争に支持を与えるというだけではなくて、アメリカが京都議定書も含めてきちっと対応して、そして、世界環境に貢献する本物の盟主なんだということを、あんたやりなはいとブッシュ大統領に言うぐらいのことが必要なんではないか。そういう外交をきちんとやっていかなきゃいけないんではないかと思うんですが。
 是非、外務省、今日お願いしているから来られていると思うんですが、外務省はそういうことを小泉総理にきちんと上げていく必要があると思うんですが、外務省の取組方針をお尋ねしたいと思います。
○政府参考人(石川薫君) 委員御指摘のとおり、米国は、生物多様性条約に署名はしておりますけれども、締結には至っておりません。また、カルタヘナ議定書には署名もしておりません。
 生物多様性条約は、生物の多様性の保全とその持続可能な利用について、各国が取るべき措置を包括的に規定する枠組み条約であると認識しておりまして、国際社会における生物多様性の保全の上で重要な役割を果たしております。
 また、カルタヘナ議定書は、遺伝子組換え生物の生物多様性への悪影響を防止し、その安全な利用を確保するための輸出入の手続等を定めており、自由貿易の確保と生物多様性の保護の双方の価値を実現するものと認識しております。
 御指摘いただきましたように、このような意義を持つ条約と議定書が十分実効性を発揮するためには米国の参加が重要でございます。これまでも機会をとらえ米国への働き掛けを行ってまいりましたが、御指摘も踏まえ、外務省といたしましても、米国が早期に、京都議定書のみならず、生物多様性条約及びカルタヘナ議定書を締結するよう一層働き掛けていきたいと考えております。
○段本幸男君 是非、外務省からももっと力強く、大臣通じて、やっぱり総理に対して、環境委員会の委員の先生みんなもう強く思っておられると思うんですね、是非お願いしたい。ただ、加えて、今どうも外務省弱いようですから、環境大臣にも最後にお尋ねしたいんですけれども。
 先ごろの参考人質疑で鷲谷参考人が言っておられたことが私は非常に印象に残っておるんですけれども、鷲谷さんはこういうふうにおっしゃっていました。二十世紀というのは進歩、開発の世紀であって、世界じゅうがその社会システムのバロメーターとして自由経済というものにおいてずっといろんなことが進められてきた。しかし、二十一世紀に入って、世の中が熟成社会に入る、いろんな形で変わってきて、今、環境調和の世紀、あるいは共生社会の世紀、こういう世紀に入ってきたんではないか。そのときに、基準が、自由経済ではなくて、今一番大切なことは、あらゆる社会政策やる基準を生物多様性に置くべきではないか、こういうことを鷲谷参考人はおっしゃっていました。
 私も全く同感で、やはりこれから真の豊かさとかいろんな形のものが言われている、あるいは環境大臣も大臣所信でそういうことをおっしゃっていました。やはり、そういうことを考えるならば、是非ともこのことをきちっと世界に訴えていく、あるいは総理にも、むしろ強い調子でこういうことを政治的にやはり働き掛けていくようなことが必要ではないかと思うんですけれども、環境大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
○国務大臣(鈴木俊一君) 段本先生からこの法律案につきましていろいろな点につきまして御指摘をいただき、いずれも大変貴重な御指摘だったと思っております。今後、この法律を運用するに当たって、御指摘の点もしっかりと、それをしていかなければいけないと、そういう思いでございます。
 そういう中でBT、いわゆる遺伝子組換え、こういう技術、これは今後の日本にとりましてもこれは重要な技術であると思っております。しかし、その一方におきまして国民の皆様方が、例えば遺伝子組換えの食品のみならず、この生物多様性に与える影響というものに対して大変不安を感じておられると。こうした遺伝子組換え生物が、生物多様性に悪影響を与えないようにしっかりやっていくということが極めて大切なことであるというふうに私も強く認識をいたしております。
 その中で、二十一世紀は生物多様性ということを一つのいろいろな社会規範の基準に据えていくべきであると、こういうような御指摘でございましたが、その点につきましては私も全く同感でございます。そして既に、この考え方につきましては、環境基本計画、あるいは昨年改定をいたしました生物多様性国家戦略、その中でも既に触れられていることでございます。
 環境省といたしましても、今後、こうした考え方、環境基本計画や生物多様性国家戦略に触れられておりますこの生物多様性が大切だという考え方、こうした考え方を基本に本法律の運用にも当たってまいりたいと思っておりますし、この他の様々な施策にもそうした考え方を生かしてまいりたいと、そのように考えております。
○段本幸男君 ありがとうございました。
 この問題は、遺伝子組換えという最先端の、我が国も大変力入れて取り組んでいかなきゃいけない問題と、しかし片っ方で生物多様性という新しい分野、新しい環境政策の在り方を正に変換して問う法律ではないかというふうに思っています。
 是非、そういうことを意識しながら、新しい環境行政の役割を作り出すんだ、そういう自負を持って当たっていただきたいことを要望しまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
○ツルネンマルテイ君 民主党のツルネンマルテイと申します。
 私は、今日のためにはたくさんの質問を用意しました。あらかじめ提出した質問の数は何と十七個あります。恐らく全部は七十分の間で聞くことができないと思いますが、もちろんそれは答弁の長さとか内容によっても違ってくると思います。しかし、残った場合は、私は、終わりの方では、少なくともこういう問題も提起したかったというふうにその質問も読むような形に残った分はなるかと思いますけれども。たくさん用意したという理由は、もう既に今も段本議員の話でも分かるように、この法律は大切であると同時にまだまだ問題が、あいまいなところがたくさんあります。そういう意味でもたくさん質問を指摘したいと思います。
 そこで、先ほどの段本議員の質問を聞いていてうれしくなりました。まるっきり野党の立場のような形でいろんな問題を指摘しました。私は、同じようなことをここでほかの与党の議員の質問からも感じているんですよ。やはり環境問題になると、私たちはやっぱり野党と与党という枠を超えて何が本当に環境保護のために大切かということを一緒に考えなければならない。そういう意味で、今日は一日だけですけれども、この法律案に対して私たちはいろんな問題が残っていることを指摘して、できればそういう問題はこれからの附帯決議の中ではやはり残したい、私たちの審議の結果として残したいと思っています。
 では最初には、このカルタヘナ議定書に対して環境大臣に二つ、三つほど質問します。
 今、断っておきますけれども、私の質問の中でもダブルするところもかなりありますけれども、やはりこの重要な問題ですから、何回も環境相の見解を明らかにする必要もあるかと思いますからダブルすることもあるかと思いますけれども、そういうことも承知の上で質問を先に進めたいと思います。
 御存じのように、このカルタヘナ議定書がおよそ三年前には採決されました。そのときの主な目的は、バイオテクノロジーによる改変された生物による生物多様性への影響の防止を主な目的にしているわけですね。そして、既に四十何か国がこれを締結しているんですね。私たちもうれしいことに、先月の参議院の本会議でそれを承認されたわけです。恐らく来週辺りでは衆議院でも承認されるでしょう。で、その決まりによりますと、五十を超える国がこれを締結すればこれは発効、その後九十日たってから発効されることになりますね。見通しでは恐らく今年ではもう発効されるんじゃないかなと思います。
 最初の質問は、これはちょっと繰り返しになりますけれども、この議定書が参議院の本会議で承認されたことの意義について大臣のコメントをお願いしたいと思います。
○国務大臣(鈴木俊一君) 遺伝子組換え生物、これが生物多様性に与える悪影響、これを防止するためには、カルタヘナ議定書を早期に発効させるということが極めて大切であると、その重要性を強く認識をいたしております。
 我が国政府といたしましても、昨年の夏に地球環境サミットに向けて小泉総理が発表いたしました小泉構想、ここにおきまして早期締結に努力をすることを表明をいたしておるところでありまして、今般、カルタヘナ議定書の締結に向けまして、十八日でございますが、参議院におきまして承認をされたということはこれはもう大変に重要な前進であったと、そのように認識をいたしております。一日も早く衆議院におきましても御承認をいただいて我が国が早期に議定書を締結できるように、政府といたしましてもそのことを期待しながら努力をしてまいりたいと思っております。
○ツルネンマルテイ君 ありがとうございます。
 さっきの段本議員の質問にもありましたように、残念ながらアメリカの方がこれに参加していない、批准もしていない。そして、さっきは外務省を通じて私たちはどういうふうにアメリカに対して呼び掛けることができるかという質問がありました。
 ここで私は、環境大臣に対して二つこれに関して質問は、なぜアメリカはこんなに消極的と思うのでしょうか。そして、環境大臣の方から、環境省の方からどのような形でこれからはアメリカに働き掛けるつもりですか。この二つのことについてお願いします。
○国務大臣(鈴木俊一君) 米国がカルタヘナ議定書に基づいております生物多様性条約にも締結をしていないわけでございますが、これは条約締結に向けてアメリカ国内での様々な議論の結果であると思っておりますが、私が考えますに、生物多様性条約では、その原産国が生物資源に対して主権的な権利を有するということとされておりますので、遺伝資源から生ずる利益の公正で公平な配分が条約の目的に位置付けられておるということで、国内における、アメリカ国内におけるバイオテクノロジー産業に影響を及ぼすのではないかというようなことがアメリカが締結をしていない理由ではないかと、そのように考えているところであります。
 しかし、やはりこれは多くの国がこれを締結することが大切であると、そのように思っておりますし、それからカルタヘナ議定書におきましても締約国、今度日本が締約をすれば締約国になるわけでありますが、締約国が非締約国に対してこれに参加するよう働き掛けるという旨も規定されているというふうに承知をしておりますので、米国に対しましても、例えば日米環境合同企画調整委員会というような会議の場もございますので、そういったような機会もとらまえて、米国に対してカルタヘナ議定書に加盟をするような方向に向けての働き掛け、意見交換、そういうものをしてまいりたいと考えております。
○ツルネンマルテイ君 今言われたように、是非その機会をつかまえて、アメリカにはもっともっと積極的に参加するようにという働き掛けはどうしても必要と思っています。もちろん私たちはよく知っていることは、このカルタヘナ議定書だけではなくて、例えば京都議定書に対してもアメリカは非常に消極的である。それは、アメリカのああいうビジネス界に非常に理由があるということは非常に残念なことですけれども、私たちはやはり、日本の方が積極的に動けば、ひょっとしたら幾らかそこでアメリカにも見本を示すことができると思います。
 そこから今日の、私たちは、いわゆるこのカルタヘナ議定書に対する国内担保法、つまり遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関するこの法律案について、これから幾つかの問題点を提起したいと思っています。
 これは極めて難しい課題であります。さっきからもそれは分かりましたし、恐らく今日の質疑の中でいろんな問題が出てきますね。と同時に、これは非常に重要な課題でもあります。残念ながら、マスコミの影響もあって、国会の現在の活動の主な関心というのはこういう環境問題ではなくて、例えば緊急事態法制とか個人情報保護法の方にもう集中していますけれども、環境保護とか食の安全から考えると、今私たちが審議しているこの法案も同じくらい私たちの国民にとっては必要と、私も思っています。
 そして、この質問の中ではなぜこれは難しい問題かということを私はこれから指摘したいと思います。一言で言えば、一番難しいことは、これもさっきからも出ましたように、この遺伝子組換えの生物の環境に及ぼす影響がほとんどまだ明らかになっていない。つまり、まだまだ未知の世界であるということですね。幾らか分かっていても、まだ分からないということですね。そして十六日の、先週の水曜日の参考人質疑のときも、こういうことは明らかになったわけです。そのとき、残念ながら私は、ちょうど同じときは、私たち民主党の菅代表と中国の政府関係者の会談のために北京にいましたので参加できなかった。しかし、帰国の後はちゃんとビデオで、その質問も、話も、あるいは議員たちの質問も全部聞きましたから、内容は私も分かっていますし、非常に参考になりました。
 その中で、参考人のこの法律案に対する評価も、あるいは問題点も本当にたくさん出ましたことは非常に参考になったと思います。ここで私は感じていることは、もし、この参考人のそのときの話は、例えば一般に、例えばテレビなどを通して国民に知らせることができたならば、恐らく国民の中で驚いた人がたくさんいたと思いますね。
 一つは、そのときはっきり分かったことは、どのくらい私たちの、日本人の食卓に遺伝子組換えによる食べ物が入っているか、なかなかみんな意識していないということですね。それで、知っているとすれば、大体、例えばその栽培技術についてはなぜ遺伝子組換えを行われているかということは、例えば害虫やウイルスに強い農作物が作れるということ、あるいは大豆の栽培のときは、除草剤に耐性を持つような大豆を作っていって、つまり除草剤を配布していっても、雑草が死ぬんですけれども大豆が死なない、生き残るというか、生育できるという理由であったわけですね。
 でも、一般に考えると、雑草が死ぬんなら、土の中の微生物も当然その除草剤によっては死ぬと思うんですね。私は、本当のことを言えば、そういう大豆を余り食べたくないんですけれども、まあ、やむを得ないということも私たちの中にはあるんですね。
 しかし、最近、非常に驚いたニュースもこれについてあるんですね。その大豆栽培によっても、今までの除草剤が雑草に効くことがあったけれども、最近効かなくなったということはアメリカでも大きく報道されているということもありますね。だから、これもやはりこれからまだまだ問題があります。
 そして、さっきも、一つの国民の遺伝子組換えに対する、どういうふうに思っているかというアンケートがさっきは紹介されましたけれども、もう一つは、新聞には、これは日本農業新聞の四月の二日に発表されたアンケートによりますと、日本人の八割が遺伝子組換えに不安を持っているということ。その理由は、その記事によると、遺伝子組換え農作物を加工した豆腐や食品、油を食べることに対して不安を感じる、あるいはやや不安を感じる国民が合わせて七九%もある。あるいは、その理由としては、安全性の確認が不十分だから、八一%、あるいは予期せぬ影響が必ず起きるというふうに考えておる人も五九%もあるということですね。
 さっきから言ったように、不十分という一つの理由は、今はその影響が分からない、ひょっとしたら、これも参考人の人たちも指摘しましたので、何十年かたってから、場合によっては百年たってからやっとその結果が分かるということですね。だから、やはり不安を持っているということですね。
 でも、それでも二十一世紀で、今も答弁の中にもあったように、やはりこの遺伝子組換え食品が私たちの生活の中に入っているんですね。そういうリスクを、不安を感じながらも、やはりそれをやむを得ず認めているということになっています。
 そこで、個人としては、大臣に一つの質問を、こういう遺伝子組換えの使用について、個人として、大臣の立場じゃなくてもいいんですから、一人の人間として不安を感じませんかということにちょっとお答えいただきたい。
○国務大臣(鈴木俊一君) 確かに、遺伝子組換え食品ということについて言えば、まだ十分に情報が分かっていないという面はあろうかと思います。
 私も、先生が御指摘になられたそのアンケートをちょっと、ちらっとですが読ませていただきましたけれども、大変に、特に遺伝子組換え食品に対する食の不安でありますとか、あるいは遺伝子組換え生物が周辺の生態系に与える不安とか、そういうのが八割ぐらいの方が不安を持っているということでございました。
 しかし、また一方において、そうした遺伝子組換えの技術というものが、これが有用な技術であるという評価もされておられるというようなアンケートから見た印象であります。
 私も、率直に、個人ということでいえば、そういうアンケートに答えた多くの方と似たような気がしておりますが、やはりこの遺伝子組換え技術というものについては、これは今後日本が新しい産業構造に変えていくといいますと、よく成長可能な分野といいますと、ITとかあるいはバイオテクノロジー、BT、それから環境ビジネスもそうでありますけれども、そこの一つにやはり数えられる私は有用な技術であると思いまして、これはこれで技術というものを進めていく努力が必要であると思います。
 しかし、一方におきまして、これが特に周辺の環境、生態系に、生物多様性に与える悪影響があってはいけないという、そういうことはもう本当に重要なことであると思います。今の段階では、私の印象でありますけれども、こうした遺伝子組換えの技術というのは、どちらかというと農業者でありますとかそういう生産者の利便性、例えば、今、先生が、除草剤に強い大豆でしょうか、のような御紹介がございましたけれども、そういう生産者のメリットにつながるような遺伝子組換え生物が作られていて、それが消費者のメリットにつながるようなものがまだ出ていない。そういうようなこともこうしたアンケートの答えに反映されてきているのではないかと、そういうふうに思っております。
 いずれにいたしましても、この遺伝子組換え生物、これを作る技術というのは、これは一つの大切な技術だと思いますので、これを進めるということであるならば、それだけにこうした生物の多様性に悪影響を与えないような対策が必要でありまして、本法を成立させていただいたら、これを適切に運用して、そういうような悪影響が出ないように万全を期すことが大切であると、そういうような気持ちでおります。
○ツルネンマルテイ君 もちろん、私も個人としては自分の食卓にはなるべくもう有機栽培の食べ物を入れているし、自分の湯河原の家でもほとんどそういうのを作っていますから。でも、どうしてもやっぱりそれも足りないときは、自分もこういうリスクがあるということは分かりながらやっていますし、そして今は、大臣が指摘したように、少なくとも研究の段階ではどんどん私たちはやっぱりこの技術を、バイオテクノロジーを進めなければなりませんけれども、やはり後で問題になりますけれども、はっきり分からないときはまだやっぱり使うのを抑えるべきということは、これから私たちの審議の中でも、そういう方向を日本でも期待しているということは私たちの共通の意見であると思います。
 ここから、具体的にはこの担保法の幾つかの問題を指摘したいと思います。これからは自然環境局長の方に質問をさせていただきます。
 この野外試験栽培が日本でも今既に行われている。試験栽培というのは、特に北海道では大豆の野外試験栽培を行っていますね。これは、今までは恐らく農水省のガイドラインというか、その強化によって行われてきたと思うんですけれども、今後はこういう野外試験栽培もこの法律の下で行われるようになるかと思うんですけれども、確認のためにそのことについてお願いします。
○政府参考人(岩尾總一郎君) 御指摘の件は、米国で開発された除草剤耐性の遺伝子組換え大豆を北海道等において栽培したものであり、収穫はせず、開花前に圃場にすき込むなど、試験的な栽培であったと聞いております。
 この事例の遺伝子組換え大豆は、農水省のガイドラインの審査を受けて承認されたものです。このような栽培についても、今後は本法案に基づく規制の対象となります。
○ツルネンマルテイ君 今には、収穫はしないでということがありましたけれども、私の手元に入っている資料では、やはりその収穫までも行われているという情報もあるんですけれども、これはちょっと私は今はそこは確認できませんけれども、いずれこれは、今は私も思ったとおり、この法律の下で行われるようになるんですけれども、そのときの一つの問題は、その試験栽培の使用形態は第二種使用、いわゆる封じ込めの方に入るのか、それとも第一種使用、影響を防止しない普通の畑と同じような、そのどっちの方にこういう試験栽培はなるんでしょうか。
○政府参考人(岩尾總一郎君) 試験的な栽培であっても、拡散防止措置を講ずることなく環境中で栽培するのであれば、第一種使用等に該当するものでございます。
○ツルネンマルテイ君 じゃ、それは分かりました。
 さっきは段本議員の方でもこの学識経験者を選定というか、どのような人にこれからお願いするかということはありましたけれども、確認の上ではもう一回私も、この第四条の四のところにはそれについて次のような項目が書いてありますね。「生物多様性影響に関し専門の学識経験を有する者の意見を聴かなければならない。」とありますね。
 そうすると、この学識経験者は、もう一回聞きますけれども、どのような人を、例えば大学の先生とか、自分の仕事の傍らこういうことをやるとか、そういう人たちを想定しているのか、あるいはその選定の基準は、さっきはある程度大まかなことはありましたけれども、それはすべて一般に公表することに、選定の基準ですね、になるんでしょうか。このことについて答弁をお願いします。
○政府参考人(岩尾總一郎君) 学識経験者としては、生態学の分野の知見のある者を始め、生物工学、動物・植物学、農学などの分野において遺伝子組換え生物等に係る知見を有する者を想定しております。
 人選でございますが、対象の遺伝子組換え生物等の種類などによりまして審査に必要とされる知見が異なることも想定されます。したがいまして、統一的な選定基準を定めることは困難ではありますが、適切に生物多様性影響評価を実施できるよう柔軟に運用してまいりたいと考えております。
○ツルネンマルテイ君 それに関連してもう一回ちょっと確かめたいんですけれども、その学識経験者がこの仕事には十分時間が取れるように、忙しい中でぱっとこうやったら恐らく十分にできないんですから、例えばフルタイムで雇うとかそういう専任とか、そういう考えですか、それともそういう自分の仕事を兼ねてということになるんでしょうか。
○政府参考人(岩尾總一郎君) 通常ですと、その専門の研究をなさっている方ということでありますと大学、研究所等におられると思いますので、そういう方を専門で雇うということになりますと、研究その他がこの審査に掛かり切りになって進まないということもあるかと思います。今のところ、研究者に最新の知見を基に判断していただくということでございますので、審査会あるいは直接お聞きする、どのような形になるか今後によりますけれども、私どもがフルタイムで雇うという形にはならないというふうに考えております。
○ツルネンマルテイ君 もちろん、一般的に考えますと、これからどの程度、人数によっても、あるいはその人たちの仕事が必要になるかということはもちろんまだ分からないですから、これからの課題になると思います。
 次に、私は、さっきは全くまだ触れられていなかった、私から見れば、情報公開から考えると大きく疑問に感じているところは、日本の担保法の中にあります。これは一つの言葉で、秘密という言葉が二か所にも出ているんです。一つは第四条の六で、やはり学識経験者がその仕事をやっている、つまり生物多様性影響評価に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはならないという項目があります。カルタヘナ議定書の中ではこういう項目は私は見付けていないんですね。そういう秘密を漏らしていけない。そして、これはもう一つは、先の第二十条のところでも、登録検査機関の任務についてやはり同じように、その仕事をしているときは、その知り得た役職員ですね、知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはならない。
 ここで私はお聞きしたいのは、具体的にはこういうところではこういう秘密というのはどういうことを想定しているかということを、是非答弁お願いします。
○政府参考人(岩尾總一郎君) 遺伝子組換え生物等は企業等の創意工夫の結果生み出されるものでありまして、個別の審査情報の中には知的財産権に深くかかわるものも想定されます。こうした情報は、法律に基づく審査を行う目的で事業者に提出を求めるものでございます。目的を超えて流出させるべきではないと考えております。そのため、法律において保護する旨の規定を置いております。
 何が秘密情報に当たるのかということについては、個別の具体的な事例によって様々であって一概には申し上げられないんですが、例えば新たな遺伝子組換え生物等に係る当該事業者がどのような分野で開発をしているかとか、事業者独自のノウハウによって遺伝子の導入方法に関する情報などが該当するのではないかというように考えております。
○ツルネンマルテイ君 そういう答弁が出るだろうと思いましたけれども、なぜ私はこれを心配しているかというと、恐らく今度その情報を、学識経験者が調べたこととか、それをやっぱり国民もどういう結果が出たかということを情報開示を求めると思うんですね。そういうときは、もうはっきりこういう項目があるんだから、そうするとそれに逃げる。情報公開はできない理由としては、いやこれは秘密だから、これはできないということは、日本ではこれだけではなくていろんな情報公開、情報開示の求めるときはこういうのが問題になるんですけれども、実際にはまだこれは機能していないんですからどういうふうにこれ問題になるかだけれども、問題になりそうなことと私は思っています。
 そこで、これと関係ある、恐らくこれからほかの委員たちの方からもいろんな形で質問が出ると思うんですけれども、国民の意見をどの程度これに反映されるか。さっきもそれも質問されましたけれども、この遺伝子組換え生物対策の中心を環境放出利用を行おうとする者によるリスク評価に置いてあると思うんですね。評価及び決定に関する基準の策定やリスク管理措置の策定が非常に重要になってくる。その策定の際には、さっき問題にした情報公開あるいは市民参加を積極的に進めなければならないということですね。このときこそ環境省の、あるいは環境大臣のリーダーシップが非常に必要になると思います。
 法律の中ではこの国民の参加というのは非常に明確に、うれしいことには、一応大まかなことは書いてあります。この第三十五条が非常に重要なものでありますから、国民の意見の聴取に対してのところがありますから、これをちょっと読ませていただきます。「国は、この法律に基づく施策に国民の意見を反映し、関係者相互間の情報及び意見の交換の促進を図るため、生物多様性影響の評価に係る情報、前条の規定により収集し、整理し及び分析した情報その他の情報を公表し、広く国民の意見を求めるものとする。」。そのものにはもちろんこれは大賛成です。
 問題は、これを本当に具体的にはどういう形で広く国民の意見を求めることになるか、恐らくこれは後で省令などで定めることになると思いますけれども、やはりこういうことが書いてあるんだから、その方向性も、計画は既に環境省の方にもあると思います。例えばここで、NGOが自分たちの意見を言える場を、場所をどのように確保される予定ですか。まず、これについて是非答弁をお願いします。
○政府参考人(岩尾總一郎君) 遺伝子組換え生物等については、その環境への安全性について国民各層に高い関心があり、特に地域の環境情報というのは地元のNGOなどが蓄積していることもあるというふうに理解しております。したがいまして、本法律の実施に当たっては、国民各層の意見を取り入れ、また御理解をいただけるよう努めることが重要であると考えております。
 具体的には、本法律の実施の指針となります基本的事項等の省令、告示の策定に当たりましてパブリックコメントを求めるほか、個別の承認についても、環境への影響をチェックするものであることから、内容に応じてパブリックコメントを求めることとし、様々な方々の知見を生かしたいというように考えております。
○ツルネンマルテイ君 もちろん、これも後で実際にはそのような方向で行われるかどうかは恐らくいろんな問題があります。例えば、今はパブリックコメントという言葉が出ましたが、これからこの法律の運用に対して、さっき言ったようなところ、広く国民の意見を求めるものとする、その一つの方法はパブリックコメント、これからもあると思いますけれども、この前確かに、参考人の質疑のときにも、だれかが、参考人がパブリックコメントに対してNGOのあるいは国民の不満がそれに対してかなり、この法律だけではなくて全体としてもあります。
 私も湯河原の町議のときはそういうことを非常に感じていました。パブリックコメントを求めているその集会のところで、例えばいかにすばらしい訂正案とかあっても、大体そのときの答えは、もう既にこれは決まっていますからこれはもうどうにもならないとか、私はよく湯河原ではびっくりしたのは、県の方針をそういうパブリックコメントではなくて集会で町民の意見を聞くときは、大体の答えは、これはもう県で決まっていますからこれはもう仕方がない。
 だから、パブリックコメントも本当に反映されることできるかどうか、そのことについてもう一回、パブリックコメントでかなり本当にいいアイデアが出た場合は、それを反映する具体的な方法はどういうふうに考えられているんでしょうか。
○政府参考人(岩尾總一郎君) パブリックコメントは、最終決定を行う前に行政庁としての考え方をまとめて広く一般の方々に御意見を伺う制度と承知しております。
 遺伝子組換え生物等については国民の関心も高く、様々な立場からの御意見をいただくことが想定されます。行政庁としては、これらいただいた御意見を取りまとめて最終決定を行う際の検討に生かしてまいりたいと考えております。私どもがこの法律を作るに至る審議会に際しましてもパブリックコメントをかなりいただきました。それを基にいたしまして、最終報告書は審議会の先生方がまとめたものとはかなり、かなりといいますか、結構異なっております。
 そういう意味では、いただいた御意見に対しては、この法律についても最終決定への反映をさせたいと思いますが、その場合にも、反映の可否と、反映できなければその理由というものはきちんとホームページなどでお答えして、行政の説明責任というものを果たしてまいりたいというように考えております。
○ツルネンマルテイ君 これももちろん期待するというか、要望することしかできませんけれども、本当に今言われたように、最終決定の前には、そういう案があればそれはもちろんこの法律の全体の中で国民の意見を広く求める、そしてそれを反映することに是非なってほしいんですね。
 これはいろんな資料を読みますと、特にEUの方では、ヨーロッパの方では非常に徹底的になっているんですね、この国民の意見に対して。一つの資料では、私の読んだところでは、遺伝子組換え種子、種の計画的リリース要項がEUでは作られていますね。それによって、市民の了解を得なければ種子、種の販売、栽培も認められていないということまではっきりしていますね。今、最近はヨーロッパでもアメリカでも日本でもいろんな汚染の事件が起きていることもきっかけになったと思いますけれども、さらに、EUの資料では、加盟各国がそれぞれが種子の検査をすることが義務付けられているということまでね。これは日本の法律ではそこまではっきりしていないんですから、だからやはり私たちは、この法律の運用に対してもこういうEUの、あるいはカナダもそうだと思いますが、そういう厳しい規定、規制を参考にする必要があると思います。
 そこで、ちょっと話題を変えますけれども、このカルタヘナ議定書の中では、詳しく言えば第二十条のところには、各国間の情報交換についての項目があります。こういう言葉が書いてあります。情報の共有及びバイオセーフティーに関する情報交換センターを設置するという言葉が二十条に書いてあるんですね。
 私の解釈では、これは恐らくどこかに一つの、世界の一か所の情報交換センターがもう今設置されているでしょうか。あるいは設置されている、予定はどこにあるかということをまずお聞きしたいし、あるいは今度は、その情報交換のために、それに対する日本の受皿というか、その交換を行う日本の組織というか、機関はどういうものになるかということは、もし分かったら是非答弁をお願いします。
○政府参考人(岩尾總一郎君) 本議定書の親条約であります生物多様性条約に基づく情報交換の仕組みの事務局は、現在、モントリオールに設置されております。したがいまして、確定ではございませんが、このカルタヘナ議定書が批准され、発効した時点での事務局というのも、その親条約の事務局のところが運営するということは想定されます。
 その後ですが、各締約国は国内に中央連絡先を指定することとされております。この中央連絡先を通じて情報交換センターに情報提供を行うということが想定されております。
 我が国においても、今後、議定書を締結するまでにはこの締約国としての連絡体制を含め関係省が一致して実施できるような国内体制は作らなければならないというように思っております。
○ツルネンマルテイ君 これもそういう計画までありますから、本当にこれから期待されているのは、そういう世界のいろんな国で情報が、新しい情報も入っているのを、日本の方でもそういう情報交換に積極的に参加することは当然といえば当然なことです。
 次に質問したいことは、開放環境に間違って紛れ込んだりする、遺伝子組換えのものが紛れ込んだりする場合に対する措置について。これも、カルタヘナ議定書のいろんな説明の中で懸念されている一つのことは、例えばこういうふうに書いてありますね。食品、飼料又は加工用に輸入されたはずの穀物が、栽培用に用いられたりあるいは飼料として用いられる過程で開放環境に紛れ込んだりするおそれがある。そういうことにならないようにチェックとか防止するような各国の国内措置が求められているということは、議定書のこういう各国に求められている項目の中に書いてあるんですね。
 もちろん、これは分かった段階では、終わりの方ではいろんな罰則とかというのは違法に対してありますけれども、分かるまでの問題は、つまりこういうことが起こらないためのチェックとか防止が今の段階では何か考えているでしょうか。
○政府参考人(岩尾總一郎君) 一般的には、食料、飼料用や加工用に輸入される穀物は、種子として流通するものに比べてその品質にばらつきが大きいことから、通常、商品作物として栽培用に用いられることはほとんどないという認識をしております。こぼれ落ちなどによって環境中に放出される場合があるということですが、その場合には、生物多様性への影響評価を行い、その結果を踏まえて、国内での利用、流通その他の可否を判断するということにいたしました。
 本法律案においては、この遺伝子組換え生物等を使用している者のみならず、この遺伝子組換え生物であることの疑いがあるものを使用している者に対しても報告徴収、立入検査を行い得るような仕組みを設けております。これらの措置を組み合わせて実施することによって、委員御懸念の事態の防止には努めてまいりたいというように考えております。
○ツルネンマルテイ君 実際には、私たちは、今の世の中では、貿易の自由の中では、いろんな規制があっても、個人としてもいろんなものはもう簡単に外国から輸入することができるんですね。その中では、仮に、最初は届けとしては、それを例えば食品とか飼料のために穀物を輸入していても、実際には本人がそれを別な理由で栽培に使うということは、私も、あるいはいろんな問題で指摘されているんですね。
 ですから、本当にこれを見付けることは、見付けたらこういう措置ができるんですけれども、見付けることは本当に一つの至難の業じゃないかなと思いますね。恐らくこういうのも後で問題になる、でもこれは、もちろん法律の段階ではどうにもならない、これからの問題だと思います。
 次に、非常に大きな問題について指摘したい。ひょっとしたら、これも後でほかの議員たちの質問の中でも出てくるかと思います。
 これは、一言で言えば、いわゆる予防原則について、これはカルタヘナ議定書の精神というか、その中で、いろんなところで、例えば十条の六とか十一の八項などで、これはほかのところにもありますけれども、これについて触れています。
 一つの文章を読みますと、輸入国は、科学的不確認又は科学的知見が不十分であっても潜在的な危険を避け又は軽減するために決定を行うことができる。科学的な根拠はまだ分かっていなくても、場合によって輸入を拒否することということはできるんですね。これをいわゆる予防的アプローチとか予防原則と呼んでいますね。これも参考人の質疑のところでも問題になりました。カナダとかEUでは、これは予防原則が認められているんですね。
 ここで、考え方として、見解としては、環境大臣に是非このことについてお聞きしたいのは、日本ではこの予防原則に基づいて輸入の拒否の決定が可能になるかどうかということについて見解をお願いします。
○国務大臣(鈴木俊一君) 先生御指摘の予防的な取組方法あるいは予防原則ということで、言葉の定義が重要なところだと思うのでありますが、いずれにいたしましても、そういう予防的な取組というものについて、御指摘のように、EUでありますとかカナダがそういう考えに基づいてのガイドラインを作っているということは聞いているところでございます。
 そして、この生物多様性条約、カルタヘナ議定書では、その目的におきまして、リオ宣言の原則十五に規定する予防的な取組方法に従うということが明記をされておりまして、カルタヘナ議定書に基づく国内法であります本法におきましても、その考え方を踏まえたものといたしております。
 具体的には、本法では、生物多様性への影響が生じるおそれのある環境中での使用を目的とする遺伝子組換え生物等につきまして、その使用に先立って生物多様性への影響評価というものを行って、その承認を得ることに、これが義務付けられていること。それから、必要に応じまして、使用開始後の状況を把握をいたしまして、承認時には予想できなかった環境の変化や科学的知見の充実によりまして、生物多様性への影響が生じるおそれがあると判断された場合には使用の変更でありますとか廃止をすることといった措置を取ることによりまして、生物多様性への影響の未然防止を図ることとしているところであります。
 そして、今お話のございました輸入に関するものでございますけれども、輸入して使用される遺伝子組換え生物等に関しましても、こうした枠組みの下で生物多様性影響が生じるおそれの有無というものを判断をすると。そして、それによって使用の可否が、認められるか否定されるかが判断されるということとなります。その結果、使用が承認されない場合は国内での使用ができないこととなりますので、事実上、輸入はなされないというのが私どもの見解でございます。
○ツルネンマルテイ君 そうすると、基本としては、日本でも今、輸入の場合でも今の段階では科学的な知見が十分でなくてもそのおそれがあるということは輸入の否定もあり得るということになるんですね。ちょっとこれをもう一回、私は、さっきのちょっとあいまいな点がありまして、もう一回ちょっと確認したいと思います。
○政府参考人(岩尾總一郎君) 先生御指摘のように、生物多様性への影響へのおそれがあるということであれば、これは承認されません。したがいまして、輸入はできないということでございます。
○ツルネンマルテイ君 じゃ、これも是非日本でも、カナダとEUのように、こういう場合も認められるようになることだったら非常に問題がないと思います。
 次に、不法な輸出あるいは輸入について、さっきも少し触れましたけれども、これも恐らくこれからは大きな問題になっていますね。
 カルタヘナ議定書で求められている措置の一つは、これも一つの環境省の資料の中で書いてあることは、議定書で求められている措置に違反した不法な輸出、輸入を防止するための措置が必要。さっきも言いましたけれども、これは明らかになったときは罰則とか規定がもう生かすことできるんですけれども、実際には、違法輸出あるいは輸入の防止を、例えばヨーロッパの方では、その種に、種子に対してかなり検査が必要ですけれども、これは違法に輸入しているとその検査もできないんだから、これを、この防止の具体的な措置を今の段階ではどういうふうに考えていますか。
○政府参考人(岩尾總一郎君) 本法律では、違法な輸出の結果、生物多様性影響が生ずるおそれがあるといった場合には、この違法輸出を行った者に対し、回収を図ることなど、必要な命令を命じることができます。輸入に関しましては、環境中での使用に際し、使用規程の承認を受けなければ国内では使用できないとしております。また、遺伝子組換え生物等であることが明らかなものに限らず、その疑いのある生物を使用している場合についても報告徴収、立入検査などを求めることができるとしておりますので、これらの規定を活用して違法な使用などの防止には努めてまいりたいと考えております。
 さらに、承認を受けていない遺伝子組換え生物が混入して輸出されるおそれのある場合などについては必要な検査を行うことができるという規定を置いております。
 これらの規定によりまして、的確に生物多様性影響の防止をしてまいりたいと考えております。
○ツルネンマルテイ君 私は、こういう輸入の、いろんなものを輸入するときの手続の面では、はっきり言って詳しくないんですけれども、一般的に考えると、私は、どこかの国からこういう遺伝子組換えが行われた、例えば穀物を輸入しようとするんですね。何にもこれを届けしないということですね。そうすると輸入したときのすべての荷物というのは調べられるということはないんですね。だから、今のは分かったときだけれども、その網に掛かる輸入の段階では、そういう違法のものはどうやってそういう網に掛かることがあり得るか、別な法律はこれをカバーするかということ、もうちょっとそれを具体的に説明できたら有り難いんですけれども。
○政府参考人(岩尾總一郎君) 現実には、輸出輸入の問題ということで、この法律の中で、先ほど申しましたような輸出に関する、違法な輸出については回収を図るなどの命令が掛けられるということ。それから、先ほどちょっと言い間違いましたが、承認を受けていない遺伝子組換え生物が混入して日本に入ってくる場合についても必要な検査ができるということにしておりますので、一応今回の法律でこの新しい遺伝子組換え生物については水際ではチェックできるというふうには考えております。
○ツルネンマルテイ君 私は、これ以上それを、ちょっと分からないんですけれども、何か疑問が残っているので、その網に掛からないこともあり得るような気がしますけれども、そこから次の質問に入らせていただきます。
 この法律の中では、申請書を出しますね。それに対して環境大臣が、それは必要に応じて承認するあるいは承認しないということはありますけれども、この関係者が申請書を出す、その申請書そのものは公表するというようなことは少なくともこの法律には何にも入っていないんだから、つまり公表するような制度にはなっていないと見ているんですけれども、もしなっていないんなら、どうしてなっていないんでしょうか。
○政府参考人(岩尾總一郎君) 申請書をそのまま公表するということは、事業者の知的財産権あるいは個人情報に関する問題から適切ではないと考えております。また、申請書が提出された段階では遺伝子組換え生物の評価を行うための情報が必ずしも十分とは言えないということがございます。主務大臣が評価する過程で必要な情報を補う場合もあると考えております。
 したがいまして、申請書をそのまま公表するのではなくて、主務大臣が必要な情報を整理し、また追加的に収集したものを加えた上で内容に応じましてパブリックコメントを求める際に示すことが適切であるというように考えております。したがいまして、むしろ、申請の段階ではなくて承認の前にこうした情報を提供する制度としたということでございます。
○ツルネンマルテイ君 私も、こういうことを質問したのは、どっちかというと、いろんな環境団体の意見とか意見書とかも聞いている段階で、やはり彼らの方でも、こういうことはやはりもっとオープンに情報公開ができたら、問題、参加することができるということですから、これも実際には、今度はどの程度問題になるか、さっき、実際には後で分かるようになる。
 同じように、よく環境団体の方から疑問に思っているというのは、この学識経験者から取得した意見、その中の秘密の部分は別として、それはやむを得ないとしても、その意見の内容をやはり一般にも公表することが求められているんですけれども、やはりこれも同じような考えで公表しないということになっているんでしょうか。
○政府参考人(岩尾總一郎君) 先ほど申しました、遺伝子組換え生物等は企業等の創意工夫の結果生み出されるものでありますので、具体的な審査情報の中には知的所有権に深くかかわるものも想定される、そういうことで、そのようなものを学識経験者が検討している過程で公開するということは困難であると考えておりますが、申請書の内容、それから評価書の概要などについて、承認に際しまして、その内容に応じて知的所有権を侵害しない範囲で情報開示していくということは考えております。
○ツルネンマルテイ君 国民の代弁者としても、私もやはりできる範囲で、これは最初から国民の参加が非常に求められているし、約束されているんだから、そういうこともできる範囲でやはり公表することは望ましいんじゃないかなと思っています。
 次に、やはりこれにも答えがあいまいになるおそれがあると思うんですけれども、どうしてもやっぱりお聞きしたいと思うんですね。これも、この申請書の承認あるいは拒否の条件について、この法律の中で二つの私から見れば非常にあいまいなところが書いてあるんですね。
 第四条には、五項のところには、生物多様性影響が生ずるおそれがないと認めるとき云々で承認するということになるんですね、そのおそれがない。逆に、今度は第五条の一項には、逆の場合は、生物多様性影響が生ずるおそれがあると認めるときは条件付になるかあるいは承認できないという結果になるんですけれども、この二つでも、おそれがないときとおそれがあるときの基準は、判断基準はどういうことになっているか、それもある意味ではっきり公表されているか。それをちょっと説明していただければ有り難いと思いますが。
○政府参考人(岩尾總一郎君) 委員御指摘の点が、おそれがあるということでリスク評価の判断基準ということであるならば、生物多様性への影響リスクをどのように評価するかということでございますので、一つは、遺伝子組換え生物が生態系に侵入して、その繁殖力が強いということで在来の野生生物を駆逐してしまうというようなことを見るというのが一つ。それから、近隣の野生生物と交雑して新しい交雑種に置き換わってしまうというようなリスク。それから、その遺伝子組換え生物が生み出す有害物質について周辺の野生生物が減少してしまうというようなリスク、そのようなものを、というような観点からそのリスク評価をしていくだろうということでございます。
○ツルネンマルテイ君 そうすると具体的には、例えば承認しないで拒否したときはその関係者にこういう理由も加えてその返事をするんですか。それとも、ただこれは承認できなかった、そのときもこういう今のような理由も加えられるでしょうか。これはちょっと提出していない質問ですが、関連ですからお願いします。
○政府参考人(岩尾總一郎君) 個々の事例に即して個別に生物多様性の影響評価を判断するということでございますので、申請ごとにその専門の学識経験者の意見を聴いて、今言ったような影響のおそれがあるかないかということが出るわけですから、その結果については申請者には報告する、戻すということになるかと思います。
○ツルネンマルテイ君 十七番目の質問になります。これが終わったら、ひょっとしたらちょっと早めに終わりますから、あとの残り時間が思ったよりも早く、答えが簡潔であったわけですから、でも、この十七番目の質問も非常に重要なものであります。
 第十五条の二項には、第二種使用等に関する事故時の措置について書いてあるんですね。何らかの形でその防止、その環境に及ぼす影響、その防止の措置が事故で壊れたか機能していないか、あるいは場合によって意図的に外した、検査が通った後ですね、そのときの対応に対してここにはこういうふうに書いているんですね。応急の措置を取っていないと認めるときは云々として、措置を取るべきことを命ずるとあるんですね。
 ここで私は、例えばこれは、ああいう例えばさっき言いましたように北海道でもう既に試験的には栽培が行われているところで、住民の、その近くの人たちが、いやこの措置がちゃんと機能していないということに気が付いてこれを環境省の方に申し出るとしますね。環境省の方から気が付かないで住民の方からそういう苦情というか申出があったときは、それに対して環境省あるいは大臣が適切な調べというかチェックをすることになるんですか。
○政府参考人(岩尾總一郎君) 先ほどの北海道のような事例ですと、少なくともその環境で既に使用されているということであれば、その安全性が、安全性といいますか、生物多様性の影響がないということで栽培されているものが出されるわけですから、それによる事故というものは考えられないのではないかと思っています。
 むしろ、封じ込めの施設で使うような、第二種使用で使っているときに例えば施設が破損するとか何かで、あってはならないことですが、そのような場合にはどのようにするかということで考えれば、もちろんその二種使用を行っている者は応急の措置を取るとともに、その者の届出を受けて主務大臣がその他の応急措置を取るべきことを命ずることができるというふうになっております。
 そして、今、委員御指摘の施設周辺の住民から、定められた拡散防止措置に違反しているというような情報が得られた場合には、私ども必要に応じて第三十条の報告徴収、第三十一条の立入検査などを行った上で、違反といいますか異常があるというときには、十四条の一項、十五条二項の措置命令の規定によりましてその是正を図ることが可能であるということで、実際にはそのような手続になるものと承知しております。
○ツルネンマルテイ君 いや、私は北海道のことを例に出したのはちょっと私の誤りであったんですから、私は、あくまでもこの二種使用の場合は、設備が適切でないときの一般の住民の方からのそういう申出があるとき、でもその返事が答弁の中でそれは明らかになりましたので、これも一つうれしいことで、やはり積極的に国民の意見も、あるいは参加が少なくとも法律の中ではかなりうたってありますから、問題は、それは後で本当に、実際には実現できるかどうかはこれからの課題になります。
 私は、ここまでこんなに十七個の質問をしましたから、ここで私の質問を終わりにして、そして福山議員の方にはバトンタッチします。ありがとうございました。
○福山哲郎君 おはようございます。民主党・新緑風会の福山でございます。よろしくお願い申し上げます。
 段本委員、それからツルネン委員、それぞれの質問はなかなか厳しくて、そして共通していると。要は、リスクに関して非常にまだあいまいではないかという話がありまして、ひとえにこれは、前回の参考人質疑で、委員長並びに与野党の理事の皆さんの御努力であの参考人質疑が行われたことは大変貢献をしていると思っておりまして、僕は、今回のこの法案の審議に当たってもやっぱり参考人質疑の重要性というのは実は大変感じておりまして、今後もこの委員会は参考人の先生方の意見を聞きながら審議を進めていくような習慣が付けばいいなというふうに、最初は感想として申し上げておきます。
 一つ目、私も重複することがあると思いますが、段本委員やツルネン委員のように私は人が良くありませんので、もっと嫌なことを言うかもしれませんが、お許しをいただきたいと思います。
 まずは、このカルタヘナ議定書を批准をすることに際して担保法としてこの法律が出てきたと。これに関しては私も評価をしているんですが、現実には、遺伝子組換え生物が輸入されてきたのは九六年の終わりか九七年ぐらいから入ってきているわけですね。これ、議定書に伴って法律が整備をされているという形ではなくて、本来これほどリスク管理が分からないというか、まだ科学的知見があいまいな状況のままの、ままということは、実は主体的に我が国としてもう少し前からきちっとこういった形の法律の議論はされるべきではなかったのかというふうに私は思っておりまして、そこについては環境大臣、どのように思っておられますか。
○国務大臣(鈴木俊一君) 確かに先生が御指摘のとおりに、遺伝子組換え生物、そういうものが以前より行われていた、また入ってきていたということでございますから、もう少し早い取組があってしかるべきであったという御指摘は、それはそのまましっかりと御指摘を受け止めたいと思っております。
 ただ今までも、遺伝子組換え生物につきましてはそれぞれ各省庁でガイドラインというものを作って、そのガイドラインで一定のしっかりした対応はなされてきたと、そういうふうには認識をいたしております。ここにまいりまして、そうしたガイドラインでやってまいりました規制というものを通じて様々な知見も蓄積をされたことでございますし、今、福山先生が御指摘になりましたカルタヘナ議定書もいよいよ世界で四十五か国が批准をして、間もなく五十か国というその発効への要件が整いつつあるという、そういう一つのきっかけも確かにございますが、そういう中で、今回こうしたそれに対応する国内法をお願いしているということでございます。
○福山哲郎君 もうこれ以上この話はしませんが、やはりもうこの委員会で度々出ています予防原則の議論をやはり二十一世紀我が国の行政の中で定着をさせていくためにも、こういった例はなるべく早く対応していただくように環境省さんには御努力をいただきたいというふうに思いますし、農水省並びに厚労省も、私、今日来ていただいているわけですが、同様にお願いをしたいと思います。
 具体的中身に入っていきます、時間がありませんので。
 この法案では、遺伝子組換え生物を使用したい者が自らリスク評価を行って主務大臣に申請することになっています。要は、当該遺伝子組換え生物を使用したいと思っている人間がリスク評価をするわけです。その申請が、余りいい例ではないんですが、最近の例の牛乳の偽装表示やBSEの偽装工作など、企業側のモラルが大変低下をしていて、食品に対する信頼性が落ちていることは、行政に対する信頼性も落ちているのかもしれませんが、やっぱりこの食品を扱う企業のモラルの信頼性の低下というのが国民にとっては大変不安の僕は元凶になっているというふうに思っておりまして、このような状況において事業者が申請をするということに対して、そのリスク評価の透明性だとか、そのリスク評価の正当性だとか信頼性をどのように担保するおつもりなのか、この法案の中にあります評価項目や、更に言うとその試験内容、その事業者が行う試験内容についてどのような形で行われるおつもりなのか、お答えをいただけますでしょうか。
○政府参考人(岩尾總一郎君) 先生御指摘のように、今まで各省ガイドラインに基づいて審査を行ってまいりましたが、本法の規定によりまして、今後は法律上の義務として生物多様性影響評価書を提出し承認を受ける。虚偽の申請をすれば承認を受けた場合の罰則も規定されております。主務大臣の承認を受けるに際して、主務大臣が定める評価項目ごとに後々、後々といいますか、主務大臣が定める評価項目というものを作るわけでございますが、必要なデータを収集し、それらのデータを基に生物多様性影響評価を行うことになります。こういう具体的な方法は、学識経験者ほか広く意見を聴くということで学問上も担保したいということを考えております。
 さらに、承認に当たっての個別審査では、これら学識経験者の意見を聴きながら生物多様性の影響を評価し、データの整合性に疑義が生じた場合、必要に応じて追加情報を求めるということにしております。
 こういうような仕組みを通じて遺伝子組換え生物等の開発企業から信頼性の高いデータを確保することが可能になると考えておりますので、適切な評価ができるというように考えております。
○福山哲郎君 済みません。私はさっき申し上げましたように嫌らしいので少しお伺いしますが、虚偽の申請かどうかは一体だれがチェックするんですか。どこの時点で分かるんですか。
○政府参考人(岩尾總一郎君) 申請自体はその書類に基づいて行われますので、それが少なくとも学問上の知見と合っていないということであればリスク評価を行う、つまり専門家の意見によってそれが虚偽であるということが分かるだろうというふうに考えております。
○福山哲郎君 評価の項目はどのような項目を今想定されているんでしょうか。
○政府参考人(岩尾總一郎君) 先ほど申し上げました、ツルネン委員に申し上げましたが、一つは、その生物が侵入することによって既存の生物を駆逐するということ、侵襲性ということですね。それから二つ目は、既存の生物と交配して新しいといいますか雑種ができてしまうという交雑性の有無。それから三つ目としては、その新しく持ち込まれる生物の毒素とかいうようなものによって既存の生物が駆逐されるというようなもの。そのようなものと、あと、これはあと専門家の意見を聴くということになるかと思いますが、参考人の方からもいろいろな意見をいただいておりますので、そういうものに加えて幾つかの項目でリスク評価をしていくということになるかと思います。
○福山哲郎君 実は、そのリスク評価の中身が分からない状況で実はこの法案の賛否を議論するのも非常に実は危険だと思っているんですね。後で項目が出てきてそれが本当にリスク評価できるかどうか、僕らの手にはもう分からなくなるわけですから。ただ、それはもう言っても仕方のないことなので、よりこのリスク評価の項目についてはしっかりと慎重に御検討いただいて、より正当性、信頼性の高まるものにしていただきたいというのは一つの希望です。
 じゃ、その次に、これも先ほどから話が出ていますが、主務大臣が判断するときに学識経験者の意見を聴いて判断するということになっています。しかしこれ、学識経験者の意見を聴くという状況しか法案には書いていません。これは先ほど段本委員が聞かれましたので重なりますが、学識経験者とはどのような専門家でどのような基準によって選任するのか。また、意見を聴く場はどういう仕組みの場で聴いていかれるのか。例えば審議会みたいなのがあるのか諮問委員会みたいなものがあるのか、個別に、その事業者の申請した中身によって個別にその学識経験者に直接聴きにいくのか、そういう、何というか、仕組みの部分が実はこの法案ではまだ何にも分かりません。今どのような形で想定をされておられるのかお答えいただけますでしょうか。
○政府参考人(岩尾總一郎君) 先ほど申し上げました学識経験者としては、生態学の分野の知見のある方、その他生物工学、動物・植物学、農学などの分野においてこの組換え生物に関する知見を有する者を想定しているということでございます。
 人選についても先ほど申し上げました。その審査に必要とされる知見が異なるということが大変多いと思われます。そして、今まで各省がガイドラインを運用するに当たって意見を求めてきた専門家という方々もおられるかと思います。そういうような方々によりまして適切な生物多様性の影響評価は実施できるよう運用していきたいと考えています。
 それから、なかなか専門家の数、数というか質の問題も言われるかと思いますので、活動、日本生態学会などの活動が強化するということも聞いておりますので、そういう方々、新しい研究者などの発掘も努めてまいりたいと考えております。
 それから、進め方、審査の進め方ですが、先ほど言いました第一種使用規程の審査などの方法は、今までのガイドラインの、各省のガイドラインによる組換え生物の審査による経験も活用したいということと、関係各省の連携を図るということで、先生御指摘の審議会というのが通常考えられるわけですが、今回の法律、六省庁で出しております。それぞれでやっていくということは非常に非効率だというふうに想定しておりますので、正に今後検討したいところでございますけれども、十分関係省庁の連携を図れるような主務大臣が委嘱した学識経験者による審査のための会合というものを作って、できる限り的確、効率的に運用していきたいというように考えております。
○福山哲郎君 今の範囲ではできるだけ答えていただいたんだということは評価をいたしますが、主務大臣の委嘱した学識経験者の会合みたいなものという形は一体どういう場なのか。任意の場なのか。例えば、じゃ、申請が上がってきたら、一回一回、一件一件それをその会合に持っていくのか。それから恐らく、さっき言われましたように、それぞれのガイドラインに沿って、農水省関係なのか厚労省関係なのか、それぞれの関係によって多分申請の中身も変わってくると思いますが、その辺はどういうふうにされるおつもりなのでしょうか。
○政府参考人(岩尾總一郎君) 正に先生御指摘のとおり、私ども、法律ができた暁にどのような数の審査申請書が出てくるかまだつかみ切れておりません。各省庁ガイドラインに基づいて現在やっているところはおおむね承知しておりますが、新しいこの法律ができた暁に、制度を運用していくに当たって、例えば年間あるいは半年で一つとか二つであれば、どのような形、委員会を開くのがいいのか、先生方に一つ二つであればあるときに集まっていただくというようなこともできるかもしれませんし、月に十も二十あるいは百も出てくるようなときにはとても処理できないということもございます。
 したがいまして、あらゆる可能性といいますか、考えられる程度の状況の中で、今申し上げましたきちんとした形の諮問、答申を受けるような組織の方がいいのか、それともある程度数をこなして危なそうなもの、危なそうなものについてよりきちんとした形で見ていただくようなものにするのがいいのか、それは法律が通った後早急に詰めていきたいというふうに考えております。
○福山哲郎君 正に、今おっしゃられたとおりなんですね。科学的知見の蓄積も不足している、人材も不足していると。
 その仕組みについては、法案が通ってから具体的に申請件数にも応じて考えていただけるというのはより現実的だと思うんですが、この専門家の数や科学的知見の蓄積の不足については、環境省としてはどのように体制を整備して今後そういった体制を充実していくおつもりなのか、何かお考えはございますでしょうか。
○国務大臣(鈴木俊一君) この分野におきます専門家の数が少ないという御指摘、これが先般当委員会で行われた参考人質疑のときにも御指摘があったということを承知をしているところであります。
 それで、まず生物多様性への影響評価に関する分野の研究がまだ十分進んでいないというのが私は一つあるんであると、そういうふうに思います。それは、遺伝子組換え生物が生態系に与える影響のみならず、こうした生物の多様性を維持するシステムがどうなっているのか、あるいはこの生物といいますものが、その種類が絶滅に至るプロセスがどうなっているのか、そういったような幅広いこうした分野への研究というのはいまだ行われて、十分進んでいないというような感じがしております。
 そして、したがいまして今後こういう分野の研究を進めて、また人材も増やしていかなければいけないと、こういうことでございますので、今後関係する分野に研究費を重点的に配分をいたしますとか、あるいは生態学に関係する学会に対しまして生物多様性への影響評価にかかわる研究の促進を働き掛けると、こういったことを通じて研究の促進とまた専門家の育成を図ってまいりたいと思っております。
○福山哲郎君 大変、大臣には今前向きな御答弁をいただきました。是非新しい予算と本当に早急にそういった体制を充実させていただきたいと思います。
 さらに申し上げれば、この法律は主務大臣が財務、文科、厚生労働、農水、経産、環境と六人、六つの共管ということになります。分担関係も不明であるわけですが、生物多様性の影響を評価するということになると、どういう状況の申請が出てきたとしても、私は、そこには必ず環境省が僕はやっぱり関与するべきだと思っているわけですね、生物の多様性の影響評価という重要なこの法律の眼目があるわけですから。
 そのときに、環境省としては文科や農水や厚労など、そういったところに対しての申請が出てきたときに、どのように環境省としては判断にかかわるつもりなのか、また判断にかかわることがこの法律でできるのか、担保されているのか、お答えいただけますか。
○国務大臣(鈴木俊一君) 本法律の実施に当たりましては、生物多様性に対する影響を防止する観点から、これまで各省に蓄積されてまいりました知見を最大限に活用いたしまして、各省の機能とそれから持ち味を生かした役割分担を行うこととしているところであります。
 第一種使用規程の承認につきまして学識経験者の意見を聴く場合にあっては、六大臣すべてが聴取するのではなく、生物多様性影響に関する知見を有する環境大臣と各分野に係る遺伝子組換え生物の正常使用等に関する知見を有する当該生物等の所管大臣が連携共同して実施する体制を検討しているところでございます。したがいまして、環境大臣は常にかかわりを持っていくという体制を検討をいたしているところであります。
 具体的な体制の整備に当たりましては、事務の重複やそごを排除いたしまして、連携して効率的な行政運営が確保されるように留意をして対応してまいりたいと思っております。
○福山哲郎君 これまた前向きな御答弁をいただきましたが、検討している最中でございますから、各省庁に押し切られないように是非環境省、頑張っていただかなきゃいかぬと思います。
 私、済みません、本当に自分で嫌な性格だなと思うんですが、そのときに農水大臣と環境大臣の間で意見が分かれた場合どうするかとか、それから学識経験者の中でも、それぞれのガイドラインに基づいての決定に携わってきた学識経験者がそれぞれ例えば違っていて議論が分かれた場合とか、その判断基準はどういうふうに考えておられるのか。それは現場見ないと分からないとか申請の内容を見なければ分からないというのはよく分かるんですが、そういった点はどのように想定されていますでしょうか。
○国務大臣(鈴木俊一君) 審査に当たりましては、関連する様々な分野の専門家の意見を聞くこととなっております。御指摘のとおり、学識経験者の意見が一致しないということもあり得るわけでありますけれども、必要に応じまして追加的データを求めるなど、議論が尽くされるよう努めてまいる所存でございます。最終的には、科学的に不確実な要素がある場合には行政が総合的に判断することも必要になると、そういうふうに考えております。
 また、遺伝子組換え生物を所管する大臣など関係省庁との間においても、こうした学識経験者の意見を取りまとめていく過程で十分議論を尽くして、最終的には法の目的が十分担保されるか否かの観点に立ちまして協力してまいりたいと思っております。
○福山哲郎君 実は先ほど学識経験者がどういう仕組みの中で決定をするのかとか、申請書をどういうプロセスで決めて許可をしていくのかということは、実は今の話にかかわってくるわけですね。つまり、意見が分かれた場合だとか、どのように決定をしていくのかというのが、その仕組みが分からない限りはやっぱり正当性が見えなくなるので、今の大臣の御答弁のように、是非議論を尽くしていただきたいということと。
 そうすると何が重要になるかというと、先ほどツルネン委員からも言われたみたいに、要は情報公開とその公表、審議の過程の公表と聴取した意見がどんな意見だったのかということと、申請の中身はどういったことだったのかというのが非常に重要になってくるわけです。つまり、科学的な知見が完全に確立していない以上、長期的に見れば国民一人一人に何らかの影響が及ぼす可能性を秘めているということです。だからこそ、先ほど言った仕組み、それからそれに対するどういう申請書類が出て、それに対してだれがどういうことを意見を言って、それによって決定はどのような手順でされて、どういう理由だからそれが承認をされたか、承認をされなかったかというのが私は非常に重要な点だというふうに思っているわけですが、先ほどもお答えいただいたと思いますが、その事業者の申請書類、それから大臣が聴取した学識経験者の意見や審議の過程というのは公表される予定はあるのかどうか、お答えいただけますか。
○政府参考人(岩尾總一郎君) 先ほどもお答えいたしましたが、この遺伝子組換え生物等は企業の創意工夫の結果生み出されるものでございますので、具体的な審査情報の中には知的所有権に深くかかわるものも想定されるので、審査の過程そのものを公開することは困難であると考えております。
 ただし、法で定める第一種使用規程について公表すること、それから環境中で行う使用については、承認に際し、その内容について知的所有権を侵害しない範囲で必要な情報は公開するということにしてまいります。
○福山哲郎君 知的所有権の問題があると思いますから、そこはできるだけ公開をしていただくと、公表していただくということでないとやっぱり国民にとっては不安が募ると思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 それから、これは、この法律は当然カルタヘナ議定書に基づいている担保法だというふうに思っておりますが、このカルタヘナ議定書ではリオ宣言第十五原則を再確認するということが議定書には書かれています。このリオ宣言第十五原則というのは、いわゆる先ほどから議論になっている予防原則です。
 したがって、この法案によってリスク評価を行う場合には当然このカルタヘナ議定書のリオ宣言第十五原則を再確認する、いわゆる予防原則的な判断基準、すなわち安全性が確認されていないものに関しては承認はしないんだという基準を採用するべきだというふうに考えますが、政府の見解はどのようなものでしょうか。
○国務大臣(鈴木俊一君) 福山先生から御指摘のとおり、このカルタヘナ議定書にはいわゆるリオ宣言の原則十五に規定される予防的な取組方法に従うということが明記をされております。したがいまして、その国内担保法であります本法におきましても、その考え方というものが踏まえられたものになっているということであります。
 で、具体的にどのように反映をされるのかということでございますが、本法における承認の過程につきましては、一例でありますけれども、例えば生物多様性影響が生じるおそれのある環境中での使用を目的とする遺伝子組換え生物等について、その使用に先立って生物多様性への影響評価を行い、承認を受けることが義務付けられていること、また生物多様性への影響評価に必要とされる科学的知見が必ずしも十分に得られていない場合にあっては、試験的な使用を行い情報を収集した上で使用を拡大することとしていることなどに予防的な取組の考えというものが示されているわけでありまして、こういうことを通じまして未然防止というものに努めてまいりたいと思っております。
○福山哲郎君 さらには、先ほども少し出ましたが、モニタリングの仕組みでございます。その使用が承認された後何年かたってから例えば悪影響や被害が発見される可能性もこれないとは言えません。前回の参考人質疑でもそういう話も出てまいりました。ですから、使用を承認をした遺伝子組換え生物の利用状況についてやっぱり継続的にモニタリングを行うことが私は必要だというふうに思っているんですが、この法案では残念ながらモニタリングについてはっきりとした明確な状況というか規定はないというふうに思っているんですが、この点について政府はどのようにお考えでしょうか。
○政府参考人(岩尾總一郎君) 生物多様性影響評価を的確に実施していくためには、この遺伝子組換え技術によって作成された生物による影響についての知見のほか、影響を受ける生物、生態系に関する知見を一層今後とも調べていくということが必要です。評価時に、評価する時点では最新の科学的知見に基づいて行われますけれども、評価時に予測できなかった環境の変化、科学的知見の充実によってその後にこの影響が生ずるおそれがあると認められるに至ったというふうな場合は当然あるわけでございますので、この承認を行った遺伝子組換え生物についても必要に応じその使用による影響というものについてデータ収集を行うということは重要だと私たちも考えております。
 法律の第六条第二項において承認取得者に対して情報の提供を求めるように措置をしております。環境省としては、この規定を活用して承認取得者に対して自らの開発した遺伝子組換え生物等の使用状況についてのデータなど必要な情報の収集、その提供を求めることとしております。その情報に基づいて実際の使用者から直接報告を徴収することも可能でございます。必要な場合にはこれらの措置を組み合わせて実施し、正確なデータの確保に努めてまいりたいと考えております。
○福山哲郎君 そこは分かるんですが、一つ気になるのは、そのモニタリングなりデータを収集するのはその承認の取得者からだということです。ということは、承認の取得者というのはその使用をすることによって利益を得ている者でございますから、その利益を求めている者が例えばモニタリングをするときに、例えば悪い影響や被害が出てきたときにそれをちゃんと即座に、例えば環境省なり申請省庁なりに言ってくるというふうには限らなくて、正に今おっしゃられましたように必要に応じて、例えば情報、データをよこせという話は必要に応じたということを、例えば環境省側が認知をしたときというのは、ひょっとしたらもう相当悪影響が起こっている可能性があって、そこの部分に関しては承認を取得した者以外の部分で、場所でとかモニタリングをしていくような仕組みというのは考えられないのか、そこはいかがですか。
○政府参考人(岩尾總一郎君) 先生御指摘の点、もっともでございますが、環境省として環境改変があったかないかということは当然調べなきゃいけないというふうに思っています。私どもの今持っております行政として、客観的なモニタリングをやるべきデータとしては、緑の国勢調査と言われているような自然環境保全基礎調査、それからレッドデータブックなどでございます。生物多様性に関する知見というものも積み重ねてきておりますけれども、今年度予算が新しく付きましたモニタリングサイト一〇〇〇とか、日本全国にわたって一応網の目を掛けているつもりでございますので、こういうのにいつ影響が出ても分かるようなものにはしていきたいというふうには考えております。
○福山哲郎君 いや、だからそこが問題で、我が国の場合には何らかの形の影響や悪影響が、被害が出てから慌てて後手後手に回ってという例がやっぱり最近では非常に多くて、そこは非常に気になっているところです。
 それから、もし承認後影響が判明した場合、原状復帰に対して責任がどこにあるのかと。例えば、そこに、その承認を取った事業者が違反行為がない場合です。承認をしたと、でもそれは承認をしたのは、その事業者も全く違反行為をしていない。それでただ、たまたまその科学的知見が足りなくて、何か被害や違反、被害や悪影響が起きたとき、一体その被害の原状復帰責任とか、その遺伝子組換え生物の回収や、そういったものに対しての責任は一体どこが取るのか、今どのように想定されていますか。
○政府参考人(岩尾總一郎君) まず、そのような事態が生じないように未然防止に努めるということが一番でございます。万一かかる影響が生じた場合には、販売先などにおいて環境中に放出されず保管されているものの使用の中止ということで、まず影響の拡大を防ぎたいというふうに考えています。次に、環境中に放出されたものであっても、例えば栽培中のものを刈り取るなどの措置によって効果が上がるというふうに考えています。
 それから、原状回復ということでございますが、承認された使用規程に基づいて正しく使っていった場合に生じた生物多様性影響に関する原状回復については、もちろんその使用者に使用の中止を求めるということですが、使用者のみならず、遺伝子組換え生物等につき知見を有する開発者などの承認取得者にも協力を要請することになると考えています。そして、行政としても応急措置を講ずることが求められる場合であれば、既存の制度、組織を活用しながら、適切に対処してまいりたいと考えております。
○福山哲郎君 この法律はまだ本当に科学的知見が足りないところがあって、不明確な点がたくさんあるんですが、そこは運用上しっかりと対応していただかないと、やっぱりBSEの問題や薬害エイズの問題は、やっぱりそれぞれの長期にわたって国民に影響が及ぼす可能性がありますので、是非慎重に対応していただきたいと思います。
 農水省と厚労省さん来ていただいたんですが、時間がなくなったので簡単にお答えください。表示の件です。
 まず、食用油やしょうゆなど、先ほど段本委員の質問にもありましたが、これに対して表示義務がない理由。それからその混入、許容混入率ですね。遺伝子組換えの混入率がEUでは一%という厳しい数字なんですが、日本は五%と、これが日本の場合に高い理由。それから、不使用や不分別や、使用や、あと表示がないものとか、その表示方法が非常に消費者にとって分かりにくくなっている理由についてお答えをいただいて、最後に済みません、こういったことに対してどのように今後対応していただくつもりなのか。もう時間ありませんが、簡潔にお答えをいただきたいと思います。
○政府参考人(山本晶三君) お答えいたします。
 日本において、油やしょうゆにつきましては遺伝子組換えの表示の対象外となっておりますが、これはEUと違いまして、食品においてDNAや、これに基づきまして生じたたんぱく質が残存しないもの、これにつきましては表示の対象外とすることにしておりまして、これは平成九年から十一年に、二年間にわたりまして食品表示問題懇談会遺伝子組換え食品部会というのを作りまして、消費者を含めます生産流通業者、いろんな方々から御議論をいただいた結果でございまして、平成十三年からこれをやっている結果でございます。
 そういう意味で、今、日本の混入率五%ということでございますが、現在日本においていわゆる分別、生産、流通、管理、これを行っておるわけでございますが、そうしておきましても、例えばバルクで輸入されるような農産物の場合につきましては、どうしても最大で五%程度の混入する流通実態ございます。そういう意味でこの五%という数字が出ているわけでございまして、それはEUの場合とは流通の状況が違うんではないかというふうに考えております。
 また、その表示につきまして、先生御指摘のような表示にしております。これにつきましても、先ほど申し上げました食品流通の懇談会でいろいろ御議論いただきまして、パブリックコメントを含めまして幅広い国民参加の下で取りまとめられたわけでございます。
 しかしながら、いずれにせよこの遺伝子組換え食品の問題、国民的な関心も高うございます。そういう意味で食品の表示全般につきましては、厚生労働省と共同で設けました食品の表示に関する共同会議においても議論をしておりますし、また、いずれにいたしましても、この表示対象品目につきましては毎年見直しを行っているところでございまして、新しい農産物が開発された場合や分析技術の精度が向上されました場合につきましてはこの対象品目に追加することにしておりますので、そういうことから、この表示制度というのをしっかり運用してまいりたいと考えております。
○政府参考人(遠藤明君) 厚生労働省におきましても、農林水産省と協力をしつつ遺伝子組換え食品の表示制度について、消費者の皆様に分かりやすく説明をしてまいりたいと考えております。
○福山哲郎君 終わります。
○委員長(海野徹君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。
   午後零時二十二分休憩
     ─────・─────
   午後一時三十分開会
○委員長(海野徹君) ただいまから環境委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
○加藤修一君 公明党の加藤修一でございます。
 午前中の同僚の委員の様々な質問を聞いていても、いろんな課題があるんだなというふうに思いました。
 それで、議定書の方では、カルタヘナ議定書の方の第一条の「目的」には「リオ宣言の原則15に規定する予防的な取組方法に従い、」というふうに書いてございまして、これが正に目的になっているわけなんですけれども。
 いろいろと予防原則を調べていく中で、大竹千代子さんの論文等なんかも読ませていただいておりますけれども、水俣病の関係なんかも特に取り上げておりまして、水銀を排出したチッソの事件で被害が拡大した理由の一つは、行政が因果関係がはっきりしないものは規制できないと、いわゆる食品衛生法を解釈したためであったと思うと、そういうふうに述べておりまして、その点で、いわゆる予防原則の概念では、脅威の存在が確認され因果関係が科学的にまだ証明されない場合にも予防的な規制を行い得ると、こういうふうに予防原則の中身について論及しておりますけれども。
 一九七三年にいわゆるチッソの関係で魚類中水銀汚染濃度の基準ができるまで魚との摂食禁止措置が取られたことは実質的な規制を除いて一度もない、また排水の規制が行われたのは一九六五年で、いわゆる新潟の第二水俣病が進行してから二年ほどたち公式に発覚した後のことであると、そういうふうに論文の中には書いてございます。
 あるいは、さらに、前回も多少述べたかもしれませんが、いわゆるBSEの関係で、BSE問題に関する調査検討委員会報告、平成十四年四月二日、その中で、第U部では「BSE問題にかかわる行政対応の問題点・改善すべき点」という中でこういうふうに結論付けております。「危機を予測し、発生を防ぐための措置を講じて危険のレベルを引き下げておく予防原則の意識がほとんどなかった。風評被害を過剰に警戒してBSE対策の遅れを招いたという指摘もある。予防原則を徹底すると巨額のロスを伴う恐れがあることから、行政担当者が萎縮する傾向は避けられない。しかし、食の安全は国民の生命健康に関わる問題だけに、国民の理解を求めながら果断に対策を講じなければ行政の不作為を問われかねない。」ということで、ここの部分においてもやはり予防原則という言葉を使いながら結論を締めているわけなんですけれども。
 そこで、参考人の話の中にもあちらこちらでいわゆる予防原則という言葉が出てきたり、あるいは予防的取組方策、そういった言葉も使っている方もございました。やはり私は、そういった面については連合審査、これは化学物質審査規制法の関係でございますけれども、やはりそういった面についても整理をすべきであるというふうに申し上げてまいりましたが。
 政府としては、現段階では予防的取組方法ということについて、そういう言葉として統一しているというふうに私も認識しておりますが、いわゆるリスク分析と予防的取組方法、この関係において、言うまでもなく予防的取組方法というのはリスク分析のプロセスに位置付けられる。単に位置付けられるだけじゃなくして、私は、どういうときに予防的取組方法を用いるか用いないかという、そういったことについてやはり一つのルール等というものが考えられなければいけないということだと思うんですね。現在の段階でいかなるルール等でこの予防的取組方法というものを適用しているのか、その辺について、まず御答弁をお願いしたいと思います。
○政府参考人(炭谷茂君) まず、環境保全上の問題が生じ、その対策を講ずるプロセスにつきまして、一般的に、まず問題の原因の特定、その問題の影響の深刻さの評価、そして対策のオプションの洗い出し、また対策の効果、影響などの評価を、専門家などの意見を聴しながら環境上の支障を未然に防止するを旨として、必要な対策を選択して実施していくというのが一般的なプロセスだろうと思います。
 その際、科学的な知見が十分得られていない中で影響のリスクをどう評価し、被害の未然防止を図っていくかということについて、環境基本計画においてその基本的な方針が定められておりますけれども、その中で、深刻な被害等をもたらすおそれのある場合には、科学的証拠が欠如していることを対策を延期する理由としてはならないという、予防的な方策が指針として決められております。この指針を基にいたしまして対策を検討し、実施していくということにしているわけでございます。
○加藤修一君 いや、確かに環境基本計画の中には、「環境の世紀への道しるべ」ということで、二〇〇〇年の十二月二十七日、第二部では「二十一世紀初頭における環境政策の展開の方向」ということで、その第二節で「持続可能な社会の構築に向けた環境政策」というのがあって、そして基本的な考え方があって、その基本的な考え方の中にいわゆる環境政策の指針となる四つの考え方、そのうちの一つとして予防的な方策というのがあるわけでありますけれども、必ずしも私は、この予防的な方策の中身、環境基本計画の中に書かれているものについては、具体性がもう少し持たせるように努力した方がいいのではなかろうかと、そう思います。
 今まで何回か質問してくる中で、カナダの例とかEUの例とか紹介してまいりましたけれども、その中でのやはり適用にかかわる規則というものについても十分参考にして、いわゆる予防的取組方法の運用ルールを具体的に作成すべきではなかろうかと、このように思いますけれども、この辺についても御見解をお示ししていただきたいと思います。
○政府参考人(炭谷茂君) 一般的には、化学物質や遺伝子生物などの管理を始めとして、技術の開発が大変進歩、進展が著しい。それに対して環境上の影響等についての科学的知見の蓄積が十分でないと。また、それに対する、追い付くための時間を要するという分野について予防的な必要性が高くなるというふうに考えておりますし、また逆にそうでないという、比較的予防的手法の必要性が低いという、いろいろなケースがあるわけでございます。課題ごとに予防的な取組の必要性の程度、またその在り方が異なるんではないのかなというふうに考えておりまして、先生御指摘されました、一般的なルール化が可能かどうかということについては十分な検討を要するのではないのかなというふうに考えているわけでございます。
 一方、先生が引かれました環境基本計画において、環境政策の指針として予防的な方策が定められておりまして、この施策の指針の具体的な適用の在り方については、課題ごとに予防的取組の必要性、その在り方が違いがあることを踏まえまして、基本計画の点検、これは五年ごとに行うということにいたしておりますけれども、基本計画の点検の過程におきまして、予防的取組に関する施策の進展や今後こうした取組が必要な問題を洗い出しまして、また海外の事例等も整理しながら研究していきたいというふうに考えておる次第でございます。
○加藤修一君 ちょっと頭が整理、私できないんですけれども、具体的に、前回といいますか、カナダのケースについても紹介しておりますので、いわゆるこういうことについて、質問通告はしておりませんが、こういう海外における予防原則の動向を見ていきますと、やはりガイドラインとして一つ一つ作り上げつつあるというふうに理解していいんではないかなと思いますけれども。
 これは、先ほど五年ごとに見直しという話がございましたけれども、やはり私は、前向きに、具体的にやはりそういう適用ルールというのを、これは恐らくいろんな予防的取組方法が日本の中にもあって、それを、その複数のやつを貫いている抽象的な共通する事項というのは必ずあると思うんですね。そういったものをやはり抽出して作り上げていくことが極めて私は重要でないかと思っていますけれども、この辺についての御見解がもしあればよろしくお願いしたい。
○政府参考人(炭谷茂君) ただいま先生が御指摘されました海外の例、例えばEU、カナダ、イギリス等の事例について勉強をさせていただいております。その中において、いわゆる予防的な取組、また予防原則と言ってもよろしいんだと思いますけれども、そのような原則について書かれておりまして、私どもも大変参考になる事項だろうと思っております。
 しかし、我が国における現在の環境基本計画において、それぞれの具体的な事例ごとにまず積み上げ、その取扱いをしていこうということがより現実的なアプローチであろうというふうに思っているわけでございます。したがって、現在、五年ごとの見直し、これは平成十三年に作りましたからあと二年ちょっとで来るわけでございますけれども、その際、このような具体的な事例の積み重ねというものを十分参考にしながら、どのように予防的取組を行っていくかということについて検討してまいりたいというふうに考えている次第でございます。
○加藤修一君 よろしく積極的にその辺について検討を早く進めていただきたいと、そのように思います。
 それで、事例についてお話が、事例という言葉を使いながら話がございました。そこで、環境省におけるこの予防的取組方法の具体的な事例、これぞというものをちょっと紹介をいただきたいんですが、こういう法律の中にこういった形で実は入っているんですよということで、これが国民に向けて分かりやすい説明にもなるということも含めて説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(岩尾總一郎君) 昨年、加藤議員からの質問主意書でも御回答したところでございますが、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律の第三条、第四条、新規化学物質の製造の届出と事前審査の仕組み等は、予防的な取組の考え方に沿った対応と考えております。
 現在、御審議いただいております本法でございますが、生物多様性条約カルタヘナ議定書ではその目的にリオ宣言の十五に規定する予防的な取組方法に従うとされておりまして、本法も予防的な取組の考え方を踏まえております。具体的には、生物多様性が生じるおそれのある環境中での使用を目的とする遺伝子組換え生物等について、その使用に先立って影響評価を行い承認を受けるということの義務付け、生物多様性に必要とされる科学的知見が必ずしも十分ない場合には試験的な使用を行い情報収集した上で使用拡大する、必要に応じて使用開始後の状況を把握できるようにし、承認時に予想できなかった環境の変化や科学的知見の充実により生物多様性影響を生じるおそれがあると判断された場合には使用の変更、廃止があるという措置があるということでございます。
 これらは、EUの規制においても必要以上に貿易の規制をするものであってはならないというのもありますが、技術的、経済的実現可能性を考慮すべきこと、あるいは十分な科学的根拠を得るための合理的な期間内に再検討を行うなど限定的に運用していると承知しておりますので、このようなものとの整合性もあるというふうに考えております。
 私ども、今般のこの法律、正に先生御指摘のこの予防的取組方法の具体事例というふうに考えております。
○加藤修一君 そういう具体的な例があるわけですけれども、私、国民の側の方も予防原則という言葉は、NPO中心にしてでありますけれども、比較的多く使われるケースが多いと。それで、先日の参考人の陳述におきましても予防原則という言葉が出たり、あるいは予防的取組方法、方策、方法ですか、そういった、どういうふうに理解すればいいかなと思う局面も当然あるわけなんですけれども、政府としてやはり、予防的取組方法ということについて今統一されている、そして具体的にはこういった法律の中に積極的に生かされていますよと、場合によっては、将来EU的な予防原則というような方向に向けて今議論をしているとか、そういったいわゆる環境省として宣伝するようなことも私は必要でないかなと、そう思います。ですから、パンフレットを作るようなことを通してコミュニケーションを大いに図るべきでないかなと、そう思っておりますので、その辺についても検討をよろしくお願いしたいと思います。
 それから、環境基本計画のいわゆる予防的取組方法でありますけれども、必要に応じてあるわけなんですけれども、先ほど来からも若干の説明がございました。ただ、私、この必要に応じというのは、以前に行政の人と議論したときにケース・バイ・ケースだという言い方されたものですから、その場合のケース・バイ・ケースというのはどういった意味であるのかというのはなかなかもう少し論理的に分かりづらい表現でございました。
 それで、海外の、先ほどカナダのケースとか様々な、EUのケースもございます。その中では、予防的な原則、あえてこれ、EUのケースですから予防原則というふうに言わせてもらいますけれども、例えば、適用に当たって無差別という考え方が一つある、あるいは再評価を受ける、そういったことも適用のルールとして掲げられている。無差別というのは、比較可能な複数のケースがそれぞれに異なった待遇を受けるべきではない、似通ったケースについては別の待遇、別の措置をするということになってはいけないと。また逆のケースについても同じです。一律に同じような待遇を受けるべきではない、違うのにもかかわらず同じ待遇を受けるべきではないと、そういったことでありますし、さらに、再評価を受けるというのは、これは予防原則を導入したときに、その後、科学技術の進歩に対して、科学的な知見が積み重なってきて定期的に再評価されなければいけない、必要ならば修正されるべきであるという、そういったことが一つの予防原則の適用のルールとして実は作られているわけですけれども、こういったことがやはり、環境計画というんですか、環境基本計画、その中における予防的取組方法について、そういった面についてもやはりつながっていく在り方として考えていくべきではないかと、このように思いますけれども、その辺についてどのようにお考えでしょうか。
○政府参考人(炭谷茂君) 環境基本計画におきまして定めております事項とかなり、ただいま先生が御指摘されました言わば要素といいますか、そういうものとの共通するものがあるのではないのかなというふうに感ずる次第でございます。
 例えば、先生が挙げられました新しい科学データで常に再検討するということも当然環境基本計画の中には、例えば、表現は違いますけれども、科学的な知見の充実に努めるというものと思想が一致しているんじゃないのかなとも思いますし、また、完全な科学的な証拠が欠如していることを対策の延期する理由としてはいけないということも、言わばヨーロッパやカナダなどで言われている均衡の原則とある程度思想的に共通する部分がかなり見られるんじゃないのかなと。必ずしもぴったり一致するものとは言えませんけれども、かなり思想的には私どもの環境基本計画も同じような思想で作られているというふうに考えております。
○加藤修一君 今の答弁の中にいわゆる充実に努めるという話がございましたけれども、確かにそういったことも極めて重要で、ただ私が申し上げているのは、再評価を受けるという、そういったところですね。それが指針として、科学的知見が積み重なってきたときに再評価をしなければいけないとか修正をしなければいけないと、そういうねばならないというふうになっていることが即重要な意味を持っているわけであって、充実に努めるということで、努めた結果それがどうなのかというのが、それ以上何もないわけでありますから、その辺が極めて私は大事だと思いますけれども、どうでしょうか。
○政府参考人(炭谷茂君) まず、私どもといたしましては、環境基本計画の運用といいますか、それの実績というものをまず積み重ねてまいりたいというふうに考えております。その中から、おのずから予防的取組の望ましい方向というものが徐々に集約してくるというふうに考えております。そのようなことで、今後、環境基本計画の見直しというものもスケジュールに上ってきますので、その中で十分検討させていただきたいというふうに考えています。
○加藤修一君 是非よろしく検討をお願いしたいと思います。十分経験は、私は日本ぐらい経験が豊富なところはないと思っておりますので、これから更に経験を深めることもそれはそれで重要だと思いますけれども、既に既往の経験は豊富にあると思いますので、その中から出てくる様々な適用のルールということも考えられると、そういうふうに思っているものですから、あえて何回となく取り上げて質問をしているわけでございます。
 それでは次に、適用のルールの関係で、経験があるかないかという話になっている部分もあるんですけれども、SPS協定、この第五条の第七項、これについては日本もリンゴの検疫の関係で、いわゆるSPS協定において暫定的に予防原則、その論文にはそういうふうに書いてありましたのであえて予防原則というふうに使ってしまいますけれども、そういったものに基づいて日本政府が経験した経緯がございます。
 そのときに、四つの要件というのがありまして、それを紹介しますと、入手可能な情報の内容が科学的根拠とするには不十分であること、あるいは、そのSPS協定に基づく予防的措置は入手可能な適切な情報に基づかなければならないこと、あるいは三番目として、予防原則に基づくSPS措置を適用している間も当該国が一層客観的なリスクアセスメントのために必要な追加の情報を得るよう努めていること、四点目としては、暫定的なSPS措置は適当な期間内に再検討されていることということで、四つの項目がこれはSPS協定第五条の七項を要約した中身になるわけでありますけれども、こういったことについて日本政府も様々な経験を得ているわけですけれども、こういった面についての認識、見解をお尋ねしたいと思います。
○政府参考人(岩尾總一郎君) SPS協定、衛生植物検疫措置ですが、十分な科学的証拠に基づかなければならないとして、今、先生がおっしゃいました、例外的な措置を取る場合には今の四つの要件を提示しているわけでございます。
 我が国としても、これまでSPS協定の下、WTO紛争処理機関において、我が国に係る案件も含め、動植物検疫、環境の保護に関する措置等に関して様々な議論が国際的に行われてきていることは承知しております。今後、カルタヘナ法を運用していくに当たり、貿易関連協定との整合性を踏まえる観点から有用な経験になると考えております。
 今後、カルタヘナ法を予防的取組方法の観点も踏まえて運用していくに当たって、この貿易関連協定との整合性が問われるとすれば、御指摘のSPS協定五条七項と関係してくるものと考えております。
○加藤修一君 時間がないから次に参りますけれども、あと、よく議論される話でありますけれども、ホルモン牛肉の関係でございます。
 この紛争の経験から、EUは、いわゆる予防原則の内実の強化、予防原則を精緻化していかなければいけないと、こういうふうに考えておりまして、最終的に、私が調べた範囲ではEUの中にEU法としても設置したというふうに聞いているわけなんですけれども、いわゆる予防原則の精緻化、こういうふうにEUはかなり強烈に前に進んでいるという状況だと私は理解しておりますけれども、こういった面についてどういう認識、評価をされておりますか。
○政府参考人(岩尾總一郎君) EUにおいては、御指摘のホルモン牛肉紛争の経験から、予防原則の適用の方法に関する文書を欧州委員会が二〇〇〇年に公表しております。
 この文書において、予防原則は、有害な影響を及ぼすおそれが特定されているものの、十分な確度を持ってそのリスクについて、主にリスク管理にかかわる意思決定者がこれを科学的に決定できない場合に用いられる取組方法であるとされております。
 また、予防原則に基づき取られる対策に求められる条件として、保護のレベルに応じていること、類似の状況には同じように対処すること、過去の対応と整合していること、対策を取る場合と取らない場合の便益とコストの調査に基づいていること、新たな科学的知見に照らして見直されること、科学的根拠の生み出す責任の所在の明確化が記述されております。
 EUでは、遺伝子組換え生物の分野においてもこのような考え方を踏まえ、二〇〇一年に遺伝子組換え生物の環境放出に関するEU指令を改正したと承知しております。今後、EU指令に基づく個別の措置の運用が進められていくことと考えられることから、我が国としてもこのようなEUの取組は注視してまいりたいと考えております。
○加藤修一君 ありがとうございます。
 それで、今まで多少の質疑応答を繰り返しながら、日本における予防的取組方法の適用ルール、そういったものが十分検討をしていくべきではなかろうかという私の主張と、そういったことも含めて見直しの中で前向きに検討していきたいと、こういった話がございました。
 大臣に質問なんですけれども、是非こういった面について積極的に私は取り組んでいっていただきたいと。場合によっては、場合によってはという言い方もおかしな話でありますけれども、将来的にはやはり私は、EUのような中身を持つ予防原則の方法が社会の仕組みとして一定の定着が進んでいく、そういった形になることが極めて私は望ましいと、そんなふうに思っているものですから、やはり環境省がこういった面についてもイニシアチブを取ってやっていくべきであるということで是非前向きの検討をよろしくお願いしたいと、このように思いますけれども、感想を含めて大臣の御答弁をお願いしたいと思います。
○国務大臣(鈴木俊一君) 先般の化審法の経済産業委員会との合同審査のときも、先生からこの問題取り上げられたところであります。今までのやり取りを踏まえてということでありますけれども、率直に申し上げまして大変難しい問題であると、そういうふうに思っております。
 我が国の環境基本法の中では予防的取組の方策という考え方が取られて、そういうものが、化審法でありますとか本法の中にその考えが取られていると。一方においてEUなどの予防原則というものがあるというわけでありますが、それの定義、また使い方も、例えば先生も御指摘になられたように、さきの参考人質疑でもそれぞれの先生がその辺をそれぞれ使っておられるというような御指摘もございました。両者に共通するところ、両者の違い、そういうものがやはり整理もすることが必要であると、こういうふうに思っております。
 そういう中におきまして、環境基本法で示されている予防的取組の方策、そういうものを様々な環境施策にどういうふうに具体化していくかということがこれは重要なことではないかと、そういうふうに思っております。これは、個々の環境問題について、それぞれ、どの程度の予防的な取組の必要性、その程度の違いがあると思いますし、また在り方も異なっていると、そういうふうに思います。
 先ほど炭谷局長も答弁いたしましたが、環境基本法の点検、これは五年に一度行われるわけでございますけれども、そういうときに、本法案でありますとか化審法でありますとか、こうした予防的取組方策の考え方が採用されております施策の進展の評価を行う、また今後取り組むべき問題点の洗い出しも行う、そして環境政策全般、全体についてこの予防的取組方法の議論を更に深める。さらに、先生からも再々御指摘のございます各国での取組の状況の把握等もいたしまして、適用に当たっての考え方の整理を行うために専門家の意見を聴く機会、こういうのも設ける必要があろうかと思います。
 そういうような機会も設けまして、環境省としても研究をしてまいりたいと考えております。
○加藤修一君 よろしくお願いをしたいと思います。
 以上で私の質問は終わります。
○岩佐恵美君 生物多様性の保全について鷲谷参考人は、単に生物の種類数を多く確保するというようなことではない、進化の歴史を共有する生物種及び環境要素から成る調整済みの関係ネットワークとしての動的で均衡の取れたシステム、健全な生態系を維持するために在来の遺伝子、種、生態系を保全し持続的に利用することと述べておられました。
 ところが、現代の商業的な食物、飼料分野での遺伝子組換え技術の活用は、除草剤耐性大豆や害虫抵抗性のトウモロコシなど、特定の目的に沿った遺伝子組換えを行った作物だけを大量に栽培をする、そして在来の品種を淘汰をするということになります。
 私は、遺伝子組換え技術の活用そのものが生物多様性とは逆の方向を向いている、そう思うのですけれども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(鈴木俊一君) 遺伝子組換えの技術でございますけれども、これは生物に従来の技術によっては付与することが困難であった新たな特性を持たせることが可能であり、現在も有用な物質の生産、医薬品の開発など多くの分野において利用が行われているところでありまして、この遺伝子組換え技術というのは有用な技術であると、そのように認識をしております。
 しかし、一方におきまして、こうした遺伝子組換え生物等によりまして環境中の生物の多様性、こういうものが影響をされるという、そういうことも指摘をされているわけでありまして、一定の規制というものをしっかりとやっていくことが重要であると、そういうふうに考えているところであります。
 昨年十二月に、政府部内のBT戦略会議におきましてバイオテクノロジー戦略大綱というのが取りまとめられました。そこにおきましても、バイオテクノロジーの発展には、産業への応用技術開発とその安全性確保が車の両輪であると、そういうふうに指摘をした上で、合理的な規制の存在が消費者の安全性の信任を得る大きな道であると述べられているところであります。
 こうした考え方、これは度々答弁をさせていただいておりますけれども、環境と経済の統合というそういう考え方にも沿うものであると思っております。生物多様性の確保、それと遺伝子組換え生物等の有効な活用、この二つの課題につきましても、本法に基づく適切な規制を通じて両者を両立させていくべく取り組んでまいりたいと考えております。
○岩佐恵美君 既に大企業による遺伝子組換え技術の大規模な商業的利用で数々の問題点が指摘をされています。例えば、昭和電工のLトリプトファンの不純物の生成による死亡事件、GMジャガイモを与えたラットの免疫力低下、Btトウモロコシの花粉によるオオカバマダラ、ガの幼虫への影響、Btトウモロコシの根から浸出した毒素による土壌汚染、GM菜種の近縁雑種への伝播等々があります。
 また、この間も参考人の方々が指摘をしておられましたけれども、除草剤耐性の遺伝子の伝播によって除草剤が効かないスーパー雑草が出現する可能性、特定の害虫への抵抗性を持つ作物の栽培が続くとそれに耐性を持った害虫が出てくる、そういう耐性を持った害虫に変化をしていくという可能性など、未知の問題も数々指摘をされています。
 環境中に放出するその使用についての第一種使用規程の承認の際に、こういう問題を本当にきちんと評価をして生物多様性への影響のおそれがないと確実に判断できるのでしょうか。
○政府参考人(岩尾總一郎君) 第一種使用規程の承認に当たりましては、申請者から提出のあった使用規程やこれに添付される生物多様性影響評価書について専門の学識経験者の意見を聴くこととしております。これらのものから、最新の科学的知見に基づく意見の聴取によって適切な判断が可能になると考えております。
 また、本制度の運用に際し、科学的知見が必ずしも十分に得られていない場合にあっては、試験的な使用を行い情報を収集した上で使用を拡大する方針であり、十分慎重な判断の上で承認することが可能であると考えております。
○岩佐恵美君 先ほどから専門家、学識経験者ということが言われているんですけれども、そういう分野の研究というのは非常に遅れている、あるいは人が少ないということで、そういう中で企業の方の研究だけはどんどん進んでいるわけですよね。そういうアンバランスがあると思うんですけれども。
 そういう中で、遺伝子組換え作物を一番たくさん作っているのはアメリカです。日本はその最大の輸入国です。輸入トウモロコシの八七%、大豆についても七五・五%がアメリカから輸入をしています。アメリカでの遺伝子組換え作物の作付け割合と日本の自給率、これから割り出していくと、日本で流通しているトウモロコシの三割が遺伝子組換えということになります。大豆については、先ほどの質疑でもありましたけれども、半分以上が遺伝子組換え大豆だということになります。ところが、アメリカは生物多様性条約もカルタヘナ議定書も締結をしていません。にもかかわらず、聞いたところによると、カルタヘナ議定書の協議でアメリカは、予防原則の適用、表示制度に関して、被害のおそれが証明されない限り規制すべきではないと言って強く反対をしたということです。
 こういう状況の下で遺伝子組換え作物による生物多様性の影響を排除するということは、私は日本では非常に困難だというふうに思うのですけれども、その点の認識はいかがでしょうか。
○政府参考人(岩尾總一郎君) 本法案においては、生物多様性を確保する観点から、議定書を締結した国から輸入されたものであるか締結していない国から輸入されたものであるかの区別なく、同様の規定を適用することとしております。このため、アメリカから輸入される遺伝子組換え生物等も本法案に基づく規制の対象になります。アメリカから輸入される遺伝子組換え農産物についても、生物多様性影響評価を踏まえその国内利用の可否を判断することにより、かかる影響を防止してまいりたいと考えております。
○岩佐恵美君 日本政府の従来の安全性への対応の甘い姿勢、これが大変これまでも大きな問題になってきました。
 参考人質疑で天笠参考人が詳しく紹介をされましたけれども、スターリンク問題への農水省や厚生省の対応は全くひどかったということです。スターリンクは、アレルギーを起こすおそれがあるというのでアメリカでも食品用としては承認されていなかった、飼料用としてのみ栽培が認められていたものです。日本では食品も飼料用もこれは未承認でした。ところが、二〇〇〇年の春に日本の市民団体の調査で家畜飼料からスターリンクが検出をされました。それに対して農水省は、アメリカが日本に輸出しないと言っているのだから日本に入っているはずがないと否定をして、追試を行うことも拒否をしたということです。
 その後、九月十八日にアメリカの市民団体がタコス製品からの検出を発表して、アメリカの環境保護庁などは直ちに調査を開始をして、二十二日には食品会社が自主回収を開始をしました。二十六日には種子販売会社が販売停止をする。十月三日にはEPAが混入を正式に認め、FDAがリコールを発令した。こういう経過があるのですけれども、日本では、農水省が飼料へのスターリンクの混入を認めたのは十一月の十三日、厚生省は更に遅れて十一月二十二日になってようやく食品への混入を認めました。食品検査体制の見直しを発表したのは翌年の一月でした。経時的にくどくど申し上げましたけれども、日本の対応というのは全く後手後手に回ったんですね。
 この問題について日本政府が素早く対応できなかったのは、知的所有権の制約でスターリンクの検査ができなかったためだと聞いています。混入を指摘した人に対して、その人が情報を不法に入手したのではないかと、混入の有無よりも、農水省の担当者は、あんたはどこからその情報を得たのかといって詰問されたという衝撃的なこともあったそうです。
 生物多様性への影響については、LMOについてのより詳細なデータが必要だと思います。本当に今回の法律で判定に必要なデータをすべて入手できる保障があるのでしょうか、きちんと対応できるのでしょうか、この点について伺いたいと思います。
○政府参考人(岩尾總一郎君) まず、今回の法律を作るということでございます。この法律においては、承認を受けていない遺伝子組換え生物等が混入して輸入されるおそれのある場合などについては、輸入の届出を義務付けるとともに、輸入者に対して必要な検査を受けるべきことを命ずることができるという規定を設けております。この規定の措置を的確に実施することで、生物多様性影響の防止が図れると考えております。
 また、評価について十分なデータを入手することが可能かということでございますが、この制度実施に当たりましては、組換え生物等の使用承認申請に当たって必要なデータを提出させることとしておりまして、不十分なデータしか提出がないといった場合にはその国内利用を認めないこともあり得るというふうに考えております。また、科学的知見が十分に得られていない場合においては、試験的な使用を行い、情報を収集した上で使用を拡大するなどの手法を用いながら、追加情報が得られるよう措置をしたいと考えております。
 また、承認後も、承認を取得した者に対し、必要に応じ使用状況に関するデータなどの提供を求めることができるとしたことで、これらを通じて先生御指摘の必要なデータの入手は図っていきたいと考えております。
○岩佐恵美君 それから、アメリカの穀物の流通の問題なんですけれども、アメリカのトウモロコシや大豆の生産・流通実態を見ると、組換え作物とそれからGM作物、これが区別をされていないわけですね。生産段階で既に非遺伝子組換えとして作付けされたトウモロコシも組換え遺伝子に汚染されているということです。流通段階も不分別がほとんどで、日本に輸入されたトウモロコシを見ると、組換え、非組換えが分別されていない。それはもう当然なんですけれども、それどころか、穀物流通が非常に雑で、トウモロコシの中に大豆がかなり混ざっているなどという驚くべき実態にあるというんですね。
 こういう実態、状態の中で使用規程の承認だとかいろいろ議論していますけれども、私はそういう承認以前の問題もあるというふうにこの話を聞いて思いました。こういう実態の下で、一体どう対応していくのかということを伺いたいと思います。
○政府参考人(岩尾總一郎君) アメリカで組換え体、それから組換え体じゃないものがそれぞれ栽培されていて、同時に集められているということは承知しております。
 私ども、先ほども申し上げましたが、このようなものについては、その遺伝子組換え生物等が混入して輸入されるおそれがあるというときには、その地域を指定いたしまして、輸入の届出の義務付けですとか輸入者に対して必要な検査を受けるというような、受けることを命ずることができる旨の規定を設けたということで、少なくともそのような混入したものに対しても今回の法的措置によりまして的確に対応できるというふうには考えております。
○岩佐恵美君 是非そう期待したいものだと思いますけれども。この法律を審議すればするほど、現状においても非常にずさんな実態であるということが分かって、何か背筋が寒くなる思いがするわけですね。
 加藤参考人の資料の中で、アメリカとEUのGM農作物の規制の比較、これが紹介をされておりましたけれども、アメリカの規制は非常にEUに比べて緩いわけですね。EUでは予防原則が目的や評価の原則に明記をされていますけれども、アメリカにはない。事前審査は一部届出や登録で済ますことができる。認可の有効期限あるいはトレーサビリティーの規定はない。モニタリングは特定の組換え作物だけで、情報公開も限定的である。
 日本は、先ほども言いましたけれども、遺伝子組換え作物の最大の輸入国であり、その先はアメリカだということですね。ですから、食に対する国民の安心、安全の確保、あるいは環境影響の防止のために日本はEU以上に厳しい対応をしてほしい、それが私は国民の願いではないかというふうに思うんですね。
 加藤参考人は、今のEUと日本との比較に対して、今みたいなことで簡単に比較をして、その点についてどう思うのかということについて、何か運用上の問題というようなことを言われたような気がするんですけれども、いずれにしても国内の法律でどう対応していくかということが問われるというふうに思うのですけれども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(鈴木俊一君) 今回のこの法案、法律案におきまして、十分なそうした予防的な措置が取られて未然防止を、防ぐような十分な国内対策が取られているかどうかということが重要であると、そういうふうに考えるところでございますけれども、本法案におきましては、遺伝子組換え生物等の環境中での使用等につきまして、事前の承認制度を設けて、そして生物多様性への影響の未然防止を図ることにしております。そしてまた、その承認の後も、承認を取得した者に対しまして必要に応じ使用状況等に関するデータなどの提供を求めることができることとしているところでありまして、これらを通じまして予防的な取組を進めていくことをしているところであります。さらにまた、遺伝子組換え生物等の使用等を適正に行うため、主務大臣が使用者に提供すべき情報を定めてこれを公表する、それとともに譲渡等の際にはこの情報を譲受け者に提供する義務を課すということもしているわけであります。
 このように、本法案は生物多様性への影響を未然に防止するため必要な措置を適切に講じることができるような仕組みを盛り込んだものでありまして、これらの仕組みを通じまして我が国として十分な国内対策が実施できるものと考えているところであります。
○岩佐恵美君 EUは、九〇年四月に遺伝子組換え作物の実験栽培と商業栽培を規制する指令を制定しました。ところが、日本では当時環境庁が野外実験に関する法制化の検討を始めたのですけれども、通産省や財界の反対でつぶされてしまったということです。その後、九六年から遺伝子組換え食品の流通が実際に始まって、遺伝子組換え作物の様々な問題が明らかになってくる中で、EUは九八年から遺伝子組換え作物の新たな承認を事実上凍結をして、遺伝子組換え食品はほとんど流通していない、そういう実態にあるということです。
 さらに、昨年十月からは新たな指令が施行されて、食品としての安全性や生態系への影響の確認、長期的影響のモニタリングの実施、承認申請に関する情報の公開、表示とトレーサビリティーが事業者に義務付けられました。この指令で特に注目されるのは表示とトレーサビリティーです。日本では、遺伝子組換え作物の表示が義務付けられている食品は大豆、豆腐、みそなど十五種類、トウモロコシがコーンスナック菓子あるいはコーンスターチなど九種類、ジャガイモが六種類となっていて、食用油や日本で多く使われるしょうゆ、これは表示が義務付けられていません。先ほどから議論があるところです。
 食品の表示というのは消費者の選択に資するものとする、これはもう当たり前のことですね。消費者の、私は表示というのは選択の権利を保障するものだと思います。ですから、遺伝子組換え作物を使用している全食品に表示を義務付けるべきだと思いますが、その点いかがですか。
○政府参考人(遠藤明君) 現在、遺伝子組換え食品について表示制度を設けているわけでございますけれども、食品衛生法によります表示基準は罰則をもってその遵守が担保される必要があることから、その遺伝子組換え食品の検知方法等の問題あるいは流通実態等も加味をして、現在の表示制度を作っているところでございます。
 なお、実際に流通する遺伝子組換え食品に関しては、事前に安全性の確認されたものということでそれの表示の問題として行っているというところでございます。
○岩佐恵美君 その表示の問題なんですけれども、安全であるから表示しなくていいということには決してならないですよね。そんなことはないので、じゃ、なぜ食品添加物は全面表示になっているのかということになりますよね。安全だといったって表示しているじゃないですか。つまり、消費者が知る権利、どれだけ、どういうふうに入っているのかというのを知りたい、その要望にこたえてああいう表示が実現をしているわけですよね。
 だから、私、このさっきから議論を聞いていて、GM商品について表示をしない、検出できないから表示しない、それは変だと思うんですよね。作っている本人は分かるわけですから、なぜ堂々と私は遺伝子組換え食品ですと名のらないんですか。大体やましいところがある場合には、本人は何か本名を名のらなかったり、本性を出さなかったりするんですよね。おかしいと思います。
 私、表示については徹底的に、何も安全だ安全でないという論争しているそれ以前の問題なんです。消費者の選択の問題なんですよね。何か、もっとしゃきっとしてもらいたいんですよ。そこのところを大臣、私、これ大臣に伺う予定なかったんですけれども、ちょっと大きい立場で、役所とやり合っていてもらちが明かないんですね、この問題。是非、大臣、二十一世紀型、消費者があれだけなぜ不安に思うのか。そこは消費者の不安にこたえた行政が対応していないからだと思うんですね。その点いかがでしょうか。
○国務大臣(鈴木俊一君) 午前中、ツルネン先生の質問の中でアンケート調査についてのかかわる御質問がございました。八割程度の方がこの遺伝子組換え生物技術についてはこれはもう有用なものだという認識をしつつも、また一方において、その食品あるいは生態系に対する影響について懸念を持っていると、こういうことでございます。
 やはりこうした懸念を払拭する努力をするということは必要であると、こう思うわけでありまして、いろいろ法律によって表示等も決められているわけでありますけれども、やはり必要に応じてそういう見直しのようなこともやはり検討され、結果として、やはり消費者であり国民でありのその不安を払拭するためのやはり行政としての努力というものは必要じゃないかと思います。
○岩佐恵美君 日本の表示なんですけれども、表示が義務付けられている食品でも、原材料の上位三品目の主原料に使われている場合に限っているんですね。しかも、混入率が五%までは不使用の表示を認めている。五%というのは結構な割合なんですよね。表示方法も、使用、不分別、不使用、表示なし、この四種類の表示があるわけですけれども、表示がない納豆、みそ、豆腐、これは不使用を意味するわけですけれども、食用油やしょうゆ、これは遺伝子組換え作物を使用していても表示がない。非常に私たちにとっては分かりにくいんですね。だから、お店に行ってどうなっているのかなと思って見ても、なかなかよく分からないんですよね。
 EU指令では、先ほどもありましたけれども、全食品に表示を義務付けて、混入率も日本とは違って〇・九%以上は表示をする。主原料の限定もないんですね。非常に表示方法もそれから使用方法についてもちゃんとしていて、消費者に分かりやすい状態になっているんですね。
 だから、よく、もっとEUのあの表示の在り方を研究して、日本としてちゃんと対応していただきたい。大臣、今御答弁いただきましたけれども、そこのところをしつこく追求をしていっていただきたい、そうお願いをしておきたい、要望しておきたいと思います。
 それから、EUの新指令でもう一つ注目されるのはトレーサビリティーです。油など最終製品に組換えたんぱく質が検出できない食品でも、遺伝子組換え原料が使われていればトレーサビリティーに基づいて全面的に表示される、つまり表示をされるということはトレースできるということになるわけですけれども、是非日本でもここのところをきちんと、せっかく新しい法律ができるわけですから、そういう考え方を採用していくべきだと思いますけれども、その点いかがでしょうか。大臣、いかがでしょうか。
○政府参考人(岩尾總一郎君) 先生の御指摘は、本法においても遺伝子組換え生物であるということを表示すべきじゃないかということだと思っております。
 この法律は生物多様性影響の防止を達成するのが目的でございますので、使用等が適正に行われるように使用者に対して、提供すべき情報がある遺伝子組換え生物などについて主務大臣がその情報を具体的に定めて明らかにする、それから譲渡者に対し、譲渡の際に当該情報を譲り受ける者に提供する義務を課すということにしております。こういう措置を通じて法の目的は達成されるものという理解をしております。
○岩佐恵美君 それは行政の担当者としてのお考えなんでしょうけれども、今私が大臣にそういうことを申し上げた、大臣に伺いたいと思ったのは、さっきの表示の問題と同じなんですけれども、ちゃんと消費者にとって表示をされる、そしてそれはトレースをされていくということが非常に大事だということを念頭に置いて対応していただきたい。
 つまり、さっき申し上げたように、アメリカというのは遺伝子組換えのものもそうでないものもみんなごちゃごちゃ、しかも大豆もトウモロコシも一緒になっているような、そういう非常に雑な国からの輸入になるわけですけれども、そういうものを、日本の国内でどういうふうにそういうものに対応していくのかというのは今後非常に大事になってくるというふうに思うんですね。そこら辺、消費者の不安がきちっと解消されるように、本性が分かるように全体を組み立てていく必要があるというふうに思いますので、その点、大臣のお考えを伺いたいと思います。
○国務大臣(鈴木俊一君) 先ほど岩尾局長から御答弁をさせていただいたところでございますが、しかしどういう形にしていくかということは、これはいろいろ検討しなきゃいけないと思いますが、基本的に先ほど申し上げましたとおり、消費者の方あるいは国民が持っているいろいろな不安と申しますか、そういうものにこたえていく、形はともあれですね、どういう形でこたえていくか、そういう問題意識をしっかり行政として持っていく必要があると思っております。
○岩佐恵美君 要するに、情報公開というのは私は安全を担保するとても大事な基本だ、基礎だというふうに思うんですね。そこのところをはっきりさせて議論をしていただきたいし、対応していただきたいと思います。
 今度の法律案では、カルタヘナ議定書の的確かつ円滑な実施を図るための担保法ですけれども、カルタヘナ議定書はその前文や目的条項に書かれているように、現代のバイオテクノロジーが急速に拡大をして、生物の多様性に及ぼす悪影響への懸念が増大していることから、一九九二年のリオ宣言の予防原則に従って取り決めたものです。リオ宣言の第十五原則は、言わずもがなですけれども、深刻な被害や不可逆的な被害のおそれがある場合には、その確実性が科学的に完全でないということを、適切な環境悪化防止策を延期する理由にしてはならない。
 つまり、予防原則をきちっとうたっているわけですけれども、この予防原則に沿ってカルタヘナ議定書が運用されていく、その精神に沿って議定書が決められているわけですから、この法律そのものも予防原則に沿ってやはり運用されていかなければいけないというふうに私は思います。
 その点、日本政府の認識について伺いたいと思います。
○国務大臣(鈴木俊一君) この予防的取組方法につきまして、これは今、先生が御質問の中で御指摘をされたように、リオ宣言原則十五に言われているものであります。我が国政府といたしましても、もちろんこうしたものの重要性、これはもうきちんと認識をしております。それゆえに、この環境基本計画におきましても予防的な取組方法、これを環境政策の指針となる考え方として明確に位置付けているわけでありまして、こうした考えに沿って化学物質対策、そういうようなものもこの原則で対応しているところであります。
 そして御指摘のとおり、このカルタヘナ議定書でもその目的にリオ宣言原則十五に規定する予防的な取組方法に従うこととされているところでありまして、この法律はカルタヘナ議定書に基づく国内法でございますので、当然予防的な取組方法の考え方も踏まえたものとしているところであります。
○岩佐恵美君 遺伝子組換え生物は生態系にとっての新規生物であり、特殊な外来種。鷲谷参考人は、外来種の侵略性は生態的に必然であり、外来種が侵入すれば生態系の不健全化を加速し、生物多様性を脅かす主要な要因になると述べられました。特に、人為的に大量に持ち込んで長期に使用すると突然変異が蓄積し、適応進化が起こりやすい。特に、人為的な一定の淘汰圧を掛け続けると爆発的な増加あるいは生態系への甚大な影響をもたらしやすいという重要な指摘をされました。そして、予測、評価のポイントとして、LMOの侵略性、遺伝子そのものの生態系への侵入性、生産される毒素などの直接的影響、LMOから遺伝子が伝播された生物などによる複合的な影響、この四点を挙げられました。
 これらについてきちんと評価されるんでしょうか。
○政府参考人(岩尾總一郎君) 実際、生物多様性影響評価を行うに当たっては、鷲谷参考人が指摘した今の四つの点についても十分配慮して対応してまいりたいと考えております。
○岩佐恵美君 十七日の参考人質疑で、各参考人から生物多様性についての知見はまだ極めて不十分であり、LMOが環境に出た場合の長期の影響の予測は困難であることが一致して強調されました。しかも、生物多様性への影響をきちんと評価できる生態系分野の専門家が極めて少ない、そういう分野には人も予算も十分手当てされていないということが鷲谷参考人、岩槻参考人から指摘をされました。
 これでは、その制度を作っても実効性が伴わないということになります。生物多様性の基礎となる生態学、進化学、生態遺伝学、こうした研究に力を入れるべきだと思いますが、その点、大臣いかがでしょう。
○国務大臣(鈴木俊一君) 生物多様性の影響評価、これを適切に行うためにはこうした分野におきます知見を、科学的知見を進めることが必要であるというのはもう先生の御指摘のとおりでございます。
 環境省におきましても、国立環境研究所におきまして遺伝子組換え生物等の生態系への影響を評価するための研究を進めておりますし、また、自然環境基礎調査あるいはレッドデータブックの作成等を通じまして生物の多様性に関する情報を収集するなど施策を推進してきたところでございます。
 今後とも、生物多様性評価を行うために必要とされる科学的知見の充実のために研究の一層の推進に努力をしてまいりたいと考えております。
○岩佐恵美君 遺伝子組換え生物は一度環境中に広がってしまえばその影響を取り除くことは極めて難しいと思います。現在の知見で十分解明し切れない将来の影響についてのリスク管理、ここで重要なことは情報の公開とモニタリングによって広く国民的監視が行われることです。これはもう同僚議員から、ずっと皆さんから出されている問題です。
 ところが、この法律では、開放的な使用についての使用規程について、承認後の公表だけで申請段階での公表規定がありません。閉鎖的使用の拡散防止措置については確認後も公表規定がありません。また、承認された使用規程が守られているか、確認された拡散防止の下でどのくらい環境に漏れているかなどのモニタリング規定もありません。密室で審査をして、承認後は事業者任せということです。
 そこで、私どもとして、党としては環境への影響の防止を担保するために最小限必要な措置として、影響評価の根拠データも含めた情報公開、意見書の提出、遺伝子組換え生物使用状況の定期的な報告義務を盛り込んだ、そういう修正案を提起をしたいと思っておりますけれども、そういう措置がない政府案で本当に生態系への影響の防止が保障されるのでしょうか。
○政府参考人(岩尾總一郎君) 遺伝子組換え生物等については、その環境への安全性等について国民各層に高い関心があり、また地域の環境情報は地元の方々含め、蓄積されているものと認識しております。したがって、本法律の実施に当たっては国民各層に幅広く情報提供を行っていくことにより、信頼性の高い制度としていくことが重要であると考えております。
 具体的には、承認申請の際に提出される情報について、企業の知的財産権に関する情報や個人情報等の保護に配慮しつつその公表を行うとともに、内容に応じてパブリックコメントを求め、様々な方々の知見を審査に生かしてまいりたいと考えております。
 承認した後につきましては、本報告案では承認取得者や使用者等の関係から状況の報告を求めることができることにしておりますので、このような規定に基づいて法の的確な運用に努めてまいりたいと考えております。
○岩佐恵美君 今日一日いろいろ議論を伺っていて、なるほどそうか、それなら安心だなという気がもう全然しないんですよね。この法律には賛成なんですけれども、やっぱり不安で不安で仕方がない面がたくさんある。でも、この法律ができたらもう万全だよということで、どんどんどんどん何か申請が出て、何か認可されて、遺伝子組換え作物天国になる心配もなきにしもあらずなんですね。
 そこで、私はやっぱり遺伝子組換え作物の問題から出発して、鷲谷参考人は、日本のような温暖で水も豊かなところで食糧自給率がこれほど低いというのは生態学的には異常なことなんだと、日本の農業の在り方に問題がある、そう述べられました。私も全くそのとおりだと思うんですね。大臣は漁業の分野の専門家でいらっしゃるかもしれませんけれども、私は日本の農業が今衰退している、疲弊している、こういう下で何かこう遺伝子組換え作物に流れていくというのは違うんじゃないかと。やっぱり、環境保全を考えた、持続可能な日本の古来のすばらしい農業環境があるわけですよね。そういうものを大事にした環境を整えていく必要があるというふうに思うんですが、大臣のお考え、感想でも結構ですけれども、お伺いしたいと思います。
○国務大臣(鈴木俊一君) バイオテクノロジーということでこういう遺伝子組換え生物、作物、こういうものが出てくるということは、これは一つのこれからの産業の在り方としてこの技術は重要だと思います。しかし、日本の農業がそういうものにすべて取って代わられていいということは全くないと、そういうふうに思っております。
 私も、環境大臣させていただきまして、環境行政とそれから農業を始めとする第一次産業、大変つながりが大きいということを本当につくづくと思っております。農業の持っております多面的機能、これは国土の保全でありますとか水の涵養でありますとかあるいは自然環境の保全と、こういうような面があるわけでございますので、やはり昔からのそういう農業がきちんと行われて、それぞれの農村あるいは山村、里においても営農が健全にされるということが、これが自然環境保全にもつながることであると、こういうふうに思っておりますので、そうした農業の振興、農業の大切さ、そういうことは十分感じているところであります。
 環境省といたしましても、環境基本法あるいは生物多様性国家戦略、こういう考えに基づいて、そうした農業、農林省を始めとする関係省庁ともよく連絡を取りながら、こうした面からの自然環境の保全ということもしっかり考えていきたいと思っております。
○岩佐恵美君 終わります。
○高橋紀世子君 今、先ほど岩佐さんから、先生からお話ありましたけれども、やはり日本の農業、食事の自給率が低いのは、私は大変心を痛めております。
 今日は、質問を二つさせていただきます。
 本法案に限らず、国会に提出される多くの法案及びその提出理由や説明文などは非常に分かりにくい文章になっていると私は思います。法律というのは、一部のエキスパートのものではなく、万人にかかわるものですから、もっと読みやすく、だれもが内容をきちんと把握できるようにすべきだと私は考えます。
 同じ内容でも分かりやすい文章で法案や説明文を書けることができると思うのですが、大変失礼な質問ですけれども、環境大臣、どうお思いになるでしょうか。
○国務大臣(鈴木俊一君) 極めて一般論で恐縮でございますけれども、法律といいますものは国民の権利義務を規定するものであるわけでございますので、まずあいまいさを避けなければいけない。それから、厳密さや論理的な統一性が要求されるということがございますので、どうしても難しくなりがちであると、そういうふうに思っております。
 しかし、先生御指摘のとおりに、法律は、国民にその遵守を要求するものである以上は、国民が理解することができるものでなければならないというのは、これはもう当然のことでございまして、私も全く先生と同様に思うわけであります。法律を理解しやすいものにするためには、これはもう行政府、立法府一体となって取り組まなければならないことであると、そういうふうに思っております。
 いずれにいたしましても、法律案の内容、これを分かりやすく説明したパンフレット、こういうものを活用するなどによりまして国民の理解の促進に努めてまいりたいと考えております。
 本日御審議いただいております法律案につきましても、この法律を成立させていただきましたら、この法律の説明はもとより、実施のためのガイドライン、こういったものを分かりやすくかつ明確に定めて、国民の疑問点にはっきり、疑問点にはしっかりお答えできるよう職員を指揮してまいりたいと考えております。
○高橋紀世子君 やはり、内容というのではなく、だれでもが分かるように書くことを私はどうしてもしたらいいんではないかといつも思っております。何か読んでいるうちにますます分かんなくなってきてしまうし、やはりこれは、法律というのは、特に教養のある人とかない人とか無関係に私たち市民が守るものでありますから、難しく書くということは非常に私、間違っていると思います。是非これはまたお考えおきいただきたいし、私も努力したいと思います。
 本法案は、基本的事項の公表は主務大臣の役割だと規定しています。けれど、生物多様性の確保や遺伝子組換え生物から健全な環境を守ることは本来環境省の役目だと思うんです。縦割り行政の壁を打ち破って、たとえそれが他省の管轄であっても、環境保全のためにどういう視点で結論を出して行動するかは真の環境省の仕事だと思います。
 この点に関して、大臣、どういうふうにお考えでしょうか、御意見を伺わせていただきたいと思います。
○国務大臣(鈴木俊一君) この法律におきます主務大臣の役割でございますけれども、これは遺伝子組換え生物等の利用にかかわる指針を運用するなど、一つは遺伝子組換え生物等の性状、使用等に関する十分な知識を有する、そういうそれぞれの大臣、それと、生物多様性に関する十分な知識を有する環境大臣がそれぞれの知識、経験を活用して役割分担を行うこと、これを行うことを政令において定めることとしているところであります。
 御指摘の基本的事項につきましては、各省の所管ごとに各大臣が公表するというのではございません。これは、環境大臣を含むすべての主務大臣が共同して策定し、公表する方向で検討をいたしているところであります。
 環境省は、基本的事項の策定を始めほとんどの事務に関与することとしております。遺伝子組換え生物等による生物多様性への影響を防止する観点から、主導的な役割を担って横断的な役割を果たしてまいりたいと思っているところであります。
○高橋紀世子君 分かるんですけれども、やはり私は、これは環境省が主になって、もちろん縦割りじゃなくて横のつながりは必要だと思うんですけれども、イニシアチブを取るのは最後まで環境省であるべきだと思うので、ちょっとこのあれについて少し疑問を持ちました。
 もう一度、そのことについて話していただけますでしょうか。
○国務大臣(鈴木俊一君) 今申し上げましたとおり、イメージといたしましては環境大臣はすべてにかかわりを持つと。環境大臣とそれぞれの、例えば薬にかかわるような、いろいろな成分を、そういう遺伝子組換えのもの、それは厚生労働大臣、それから農作物にかかわるものは、これは農林水産大臣がそれぞれやるわけですけれども、環境大臣は常に、環境大臣と厚生労働大臣、あるいは環境大臣と農林水産大臣というように常に関与をしていくということでございますので、主導的な役割を果たせると、そのように感じております。
○高橋紀世子君 はい、分かりました。
 環境業務というのは本当に大切で難しいことだと思うので、是非また力を出していただきたいと思います。
 今日はありがとうございました。
    ─────────────
○委員長(海野徹君) 委員の異動について御報告いたします。
 本日、愛知治郎君が委員を辞任され、その補欠として椎名一保君が選任されました。
    ─────────────
○委員長(海野徹君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 本案の修正について岩佐恵美さんから発言を求められておりますので、この際、これを許します。岩佐恵美さん。
○岩佐恵美君 私は、遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律案に対する修正の動議を提出いたします。
 遺伝子組換え生物の利用は、農業生産分野を始めとして急速に拡大しており、生態系、生物多様性への悪影響を未然に防止することは急務の課題です。特に日本は、食糧の多くを遺伝子組換え作物の大量生産国であるアメリカから輸入しています。生物多様性に対する科学的知見が不十分な下で、将来に回復不可能な影響を及ぼすおそれがある遺伝子組換え生物の使用については、国民の健康と環境を守る立場から、予防原則を貫き、慎重に対応する必要があります。
 ところが、これまでの政府の対応は、アメリカなどの外圧に屈し、国民の命と健康よりも業界の利益を優先する姿勢が多くの問題を生み出しました。その誤りを繰り返さないためには、情報の公開と国民による監視が不可欠です。その点を拡充するために修正案を提出いたします。
 修正案の内容は次のとおりです。
 第一は、遺伝子組換え生物の解放的な使用に関する使用規程の承認申請があった場合には、生物多様性影響評価の基礎資料も含めて公表することとします。公表があった場合には、生物多様性への影響の防止に関する意見書を出せることとします。主務大臣は、生物多様性に影響を及ぼすおそれがないと認めるときでなければ第一種使用規程を承認してはならないこととします。
 第二に、閉鎖的使用に関する拡散防止措置の確認についても、申請があったとき及び確認したときは公表することとします。
 第三に、遺伝子組換え生物を使用している者は、毎年、使用状況等を報告しなければならないこととし、報告は公表することとします。
 以上が修正案の内容です。
 委員の皆様方の御賛同をお願いいたします。
    ─────────────
○委員長(海野徹君) 委員の異動について御報告いたします。
 本日、山東昭子さんが委員を辞任され、その補欠として松山政司君が選任されました。
    ─────────────
○委員長(海野徹君) これより原案並びに修正案について討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律案について採決に入ります。
 まず、岩佐さん提出の修正案の採決を行います。
 本修正案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(海野徹君) 少数と認めます。よって、岩佐さん提出の修正案は否決されました。
 次に、原案全部の採決を行います。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(海野徹君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 小川勝也君から発言を求められておりますので、これを許します。小川勝也君。
○小川勝也君 私は、ただいま可決されました遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律案に対し、自由民主党・保守新党、民主党・新緑風会、公明党、日本共産党、国会改革連絡会(自由党・無所属の会)及び社会民主党・護憲連合の各会派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
    遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずべきである。
 一、遺伝子組換え生物等による生物多様性影響については未解明な部分が多いことから、科学的知見の充実を急ぐとともに、「リオ宣言」第十五原則に規定する予防的な取組方法に従って、本法に基づく施策の実施に当たること。
 二、遺伝子組換え生物等による生物多様性影響の防止に万全を期するため、環境省のリーダーシップの下、関係省庁間の十分な連携を図るとともに、本法実施に係る人員・予算の確保等必要な体制の整備に努めること。
 三、遺伝子組換え生物等に対する国民の懸念が増大していることにかんがみ、「基本的事項」を定めるに当たっては、広く国民の意見を求め、その結果を十分に反映させるとともに、国民に分かりやすい内容のものとすること。また、「基本的事項」の策定後においても、十分な情報公開の下、国民とのリスクコミュニケーションを積極的に推進すること。
 四、「生物多様性影響評価書」の信頼性を確保するため、評価手法・基準等を定めるに当たっては、国民のコンセンサスを十分に得るため、広く意見を求めること。また、評価後におけるモニタリングの実施とその結果の情報開示が図られるようにすること。
 五、遺伝子組換え生物等の第一種使用等の承認に当たっては、関係する国際機関における検討や諸外国の研究成果等を踏まえつつ、学識経験者の意見を尊重し、客観的な評価の下に行うこと。
 六、遺伝子組換え食品の安全性に対する消費者の不安が大きいことから、その安全性評価を行うに当たっては、科学的知見を踏まえ慎重を期するとともに、表示義務の対象、表示のあり方、方法についても検討を行うこと。
 七、遺伝子組換え生物とともに移入種による生物多様性影響が懸念されていることから、移入種対策に係る法制度を早急に整備すること。
 八、国際的な生物多様性の確保を図るため、生物多様性条約、カルタヘナ議定書を締結していない米国等に対し、あらゆる機会を利用して同条約、同議定書に参加するよう積極的に働きかけること。
   右決議する。
 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
○委員長(海野徹君) ただいま小川君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕
○委員長(海野徹君) 全会一致と認めます。よって、小川君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、鈴木環境大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。鈴木環境大臣。
○国務大臣(鈴木俊一君) ただいま御決議のございました附帯決議につきましては、その趣旨を十分に尊重いたしまして努力する所存でございます。
○委員長(海野徹君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(海野徹君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時五十七分散会