破壊環境再生臨時措置法案要綱(案)<民主党対案>

 第一 目的

  この法律は、破壊環境再生についての基本理念を定め、及び国等の責務を明らかにするとともに、破壊環境評価に基づき破壊環境再生を実施するために必要な事項を定めることにより、自然環境の保全の視点を欠いた公共事業により破壊された自然環境の再生に関する臨時の措置を講じ、もって自然と共生する社会の実現を図り、あわせて地球環境の保全に寄与することを目的とすること。

 第二 定義
 
1 この法律において「公共事業」とは、公共事業基本法第二条第一項に規定する公共事業をいうものとすること。
 
2 この法律において「破壊環境再生」とは、過去に対象公共事業(第七の2の対象公共事業をいう。)により破壊された従来の生態系その他の自然環境を取り戻すことを目的として、関係行政機関、関係地方公共団体、地域住民、特定非営利活動法人、自然環境に関し専門的知識を有する者等の地域の多様な主体が参加して、河川、湿原、干潟、藻場、里山、里地、森林その他の自然環境を保全し、若しくは再生し、又はその状態を維持管理することをいうものとすること。
 
3 この法律において「破壊環境再生事業」とは、破壊環境再生を目的として実施される事業をいうものとすること。
 
 第三 基本理念
 
1 破壊環境再生は、健全で恵み豊かな自然が将来の世代にわたって維持されるとともに、自然と共生する社会の実現を図り、あわせて地球環境の保全に寄与することを旨として適切に行われなければならないものとすること。
 
2 破壊環境再生は、関係行政機関、関係地方公共団体、地域住民、特定非営利活動法人、自然環境に関し専門的知識を有する者等の地域の多様な主体が連携しつつ、自主的かつ積極的に取り組んで実施されなければならないものとすること。
 
3 破壊環境再生は、地域における自然環境の特性、自然の復元力及び生態系の微妙な均衡を踏まえて、かつ、科学的知見に基づいて実施されなければならないものとすること。
 
4 破壊環境再生事業は、破壊環境再生事業の着手後においても破壊環境再生の状況を監視し、その監視の結果に科学的な評価を加え、これを当該破壊環境再生事業に反映させる方法により実施されなければならないものとすること。
 
5 破壊環境再生事業の実施に当たっては、自然環境の保全に関する学習(以下「自然環境学習」という。)の重要性にかんがみ、自然環境学習の場として活用が図られるよう配慮されなければならないものとすること。
 
 第四 国及び地方公共団体の責務
 
  国及び地方公共団体は、地域住民、特定非営利活動法人その他の民間の団体等が実施する破壊環境再生事業について、必要な協力をするよう努めなければならないものとすること。
 
 第五 実施者の責務

  対象公共事業に係る破壊環境再生事業を実施しようとする者は、基本理念にのっとり、破壊環境再生事業の実施に主体的に取り組むよう努めなければならないものとすること。
 
 第六 他の公益との調整

  破壊環境再生は、国土の保全その他の公益との調整に留意して実施されなければならないものとすること。
 
 第七 破壊環境評価
 
1 中央破壊環境評価委員会は、特定公共事業(事業費の総額が百億円以上の公共事業(地方公共団体が実施した公共事業にあっては、国の補助率が二分の一以上のものに限る。)であって、昭和五十五年以後に完了したものをいう。以下同じ。)が自然環境に及ぼした影響その他必要な事項を勘案して、当該特定公共事業に係る破壊環境再生を行う必要があるかどうかを評価しなければならないものとすること。
 
2 環境大臣は、中央破壊環境評価委員会が1により破壊環境再生を行う必要があると評価したときは、当該評価に係る特定公共事業(以下「対象公共事業」という。)の実施場所を管轄する都道府県の知事及び当該対象公共事業に係る行政機関の長に対し、その旨及び当該評価の内容を通知しなければならないものとすること。
 
3 都道府県破壊環境評価委員会は、都道府県知事が2の通知を受けたときは、当該通知に係る対象公共事業が自然環境に及ぼした影響の詳細について評価しなければならないものとすること。
 
 第八 破壊環境再生基本計画
 
 1 都道府県知事は、第七の3により対象公共事業が自然環境に及ぼす影響の詳細が明らかになったときは、当該対象公共事業について破壊環境再生基本計画を定めなければならないものとすること。
 
 2 破壊環境再生基本計画には、次の事項を定めるものとすること。
 
  一 対象公共事業の名称及び場所
 
  二 第七の3の評価の概要
 
  三 当該対象公共事業に係る破壊環境再生に関する基本的方向
 
  四 破壊環境再生全体構想及び破壊環境再生実施計画の作成に関する基本的事項
 
 3 都道府県知事は、破壊環境再生基本計画を定めようとするときは、都道府県破壊環境評価委員会の意見を聴かなければならないものとすること。
 
 第九 破壊環境再生協議会
 
1 破壊環境再生基本計画が定められたときは、3の事務を行うため、都道府県に、当該破壊環境再生基本計画に係る破壊環境再生協議会(以下「協議会」という。)を置くものとすること。
 
2 協議会は、次に掲げる者をもって構成するものとすること。
 
 一 当該都道府県の知事又はその指名する職員
 
 二 関係行政機関及び関係市町村の長又はその指名する職員
 
 三 地域住民、特定非営利活動法人、自然環境に関し専門的知識を有する者、土地の所有者等(土地若しくは木竹の所有者又は土地若しくは木竹の使用及び収益を目的とする権利、漁業権若しくは入漁権(臨時設備その他一時使用のため設定されたことが明らかなものを除く。)を有する者をいう。)その他の当該対象公共事業に係る破壊環境再生事業又はこれに関連する破壊環境再生に関する活動に参加しようとする者
 
3 協議会は、次に掲げる事務をつかさどるものとすること。
 
 一 破壊環境再生全体構想を作成すること。
 
 二 破壊環境再生事業実施計画について審査し、その結果に基づいて都道府県知事に意見を述べること。
 
 三 破壊環境再生事業の実施状況を監視し、その結果に基づいて都道府県知事に意見を述べること。
 
4 協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、都道府県の条例で定めるものとすること。
 
第十 破壊環境再生全体構想
 
1 破壊環境再生全体構想は、破壊環境再生基本計画に即して、次に掲げる事項を定めるものとすること。
 
 一 破壊環境再生の対象となる区域
 
 二 破壊環境再生の目標
 
 三 その他破壊環境再生の実施に必要な事項
 
2 破壊環境再生全体構想又はその変更は、協議会を組織する都道府県の議会の承認を受けなければ、その効力を生じないものとすること。
 
第十一 破壊環境再生事業実施計画
 
1 対象公共事業に係る破壊環境再生事業を実施しようとする者(以下「実施申請者」という。)は、当該事業の計画(以下「破壊環境再生事業実施計画」という。)が3の一及び二の要件に該当する旨の都道府県知事の確認を受けなければならないものとすること。
 
2 破壊環境再生事業実施計画には、次の事項を定めるものとすること。
 
 一 実施申請者の名称又は氏名
 
 二 破壊環境再生事業の対象となる区域及びその内容並びにその年次計画
 
 三 破壊環境再生事業の対象となる区域の周辺地域の生態系その他の自然環境との関係並びに生態系その他の自然環境の保全上の意義及び効果
 
 四 その他破壊環境再生事業の実施に関し必要な事項
 
3 都道府県知事は、申請に係る破壊環境再生事業実施計画が次の要件に該当すると認めるときは、1の確認をするものとすること。
 
 一 破壊環境再生基本計画及び破壊環境再生全体構想と整合性のとれたものであること。
 
 二 一に掲げるもののほか、当該破壊環境再生事業実施計画が自然環境の保全の観点から適切なものであること。
 
4 都道府県知事は、3の確認を行おうとするときは、当該破壊環境再生事業実施計画に係る協議会の意見を聴かなければならないものとすること。
 
第十二 破壊環境再生事業の実施
 
1 破壊環境再生事業は、第十一の3の確認を受けた破壊環境再生事業実施計画に基づいて行わなければならないものとすること。
 
2 都道府県知事は、第九の3の三の意見を受けたときその他破壊環境再生の適切な実施の観点から必要があると認めるときは、破壊環境再生事業を実施する者に対し、破壊環境再生事業実施計画の変更、当該破壊環境再生事業の実施方法の変更等の命令その他の必要な措置を講ずることができるものとすること。
 
第十三 中央破壊環境評価委員会
 
1 環境省に中央破壊環境評価委員会を置くものとすること。
 
2 中央破壊環境評価委員会は、第七の1の事務をつかさどるものとすること。
 
3 1及び2に定めるもののほか、中央破壊環境評価委員会の組織、所掌事務及び委員その他の職員その他中央破壊環境影響評価委員会に関し必要な事項については、政令で定めるものとすること。
 
第十四 都道府県破壊環境評価委員会
 
1 都道府県に都道府県破壊環境評価委員会を置くものとすること。
 
2 都道府県破壊環境評価委員会は、第七の3及び第八の3の事務をつかさどるものとすること。
 
3 1及び2に定めるもののほか、都道府県破壊環境評価委員会の組織、所掌事務及び委員その他の職員その他都道府県破壊環境影響評価委員会に関し必要な事項については、その都道府県の条例で定めるものとすること。
 
第十五 この法律の失効

 この法律は、施行の日から起算して十五年を経過した日に、その効力を失うものとすること。

第十六 その他
 
 本法の規定の実施手続の詳細、施行期日その他必要な事項を定めるものとすること。