自然環境再生臨時措置法案要綱(案)

第一 目的

  この法律は、自然環境再生についての基本理念を定め、及び国等の責務を明らかにするとともに、自然環境影響評価に基づき自然環境再生を実施するために必要な事項を定めることにより、自然環境の保全の視点を欠いた公共事業により破壊された自然環境の再生に関する臨時の措置を講じ、もって自然と共生する社会の実現を図り、あわせて地球環境の保全に寄与することを目的とすること。

第二 定義

 一 この法律において「公共事業」とは、別表に掲げる事業のうち事業費の総額が百億円以上の事業(国以外の者が実施した事業にあっては、当該事業費に対する国の補助金等(財政構造改革の推進に関する特別措置法(平成九年法律第百九号)第三十四条に規定する補助金等をいう。)の割合が二分の一以上のものに限る。)であって、昭和五十年度以降に着工したものをいうものとすること。

 二 この法律において「自然環境再生」とは、過去に対象公共事業(第七の六の公共事業をいう。)により破壊された従来の生態系その他の自然環境を取り戻すことを目的として、関係行政機関、関係地方公共団体、地域住民、特定非営利活動法人(特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)第二条第二項に規定する特定非営利活動法人をいう。以下同じ。)、自然環境に関し専門的知識を有する者等の地域の多様な主体が参加して、河川、湿原、干潟、藻場、里山、里地、森林その他の自然環境を保全し、若しくは再生し、又はその状態を維持管理することをいうものとすること。

 三 この法律において「自然環境再生事業」とは、自然環境再生を目的として実施される事業をいうものとすること。

第三 基本理念

 一 自然環境再生は、健全で恵み豊かな自然が将来の世代にわたって維持されるとともに、自然と共生する社会の実現を図り、あわせて地球環境の保全に寄与することを旨として適切に行われなければならないものとすること。

 二 自然環境再生は、関係行政機関、関係地方公共団体、地域住民、特定非営利活動法人、自然環境に関し専門的知識を有する者等の地域の多様な主体が連携しつつ、自主的かつ積極的に取り組んで実施されなければならないものとすること。

 三 自然環境再生は、地域における自然環境の特性、自然の復元力及び生態系の微妙な均衡を踏まえて、かつ、科学的知見に基づいて実施されなければならないものとすること。

 四 自然環境再生事業は、自然環境再生事業の着手後においても自然環境再生の状況を監視し、その監視の結果に科学的な評価を加え、これを当該自然環境再生事業に反映させる方法により実施されなければならないものとすること。

 五 自然環境再生事業の実施に当たっては、自然環境の保全に関する学習(以下「自然環境学習」という。)の重要性にかんがみ、自然環境学習の場として活用が図られるよう配慮されなければならないものとすること。

第四 国及び地方公共団体の責務

  国及び地方公共団体は、地域住民、特定非営利活動法人その他の民間の団体等が実施する自然環境再生事業について、必要な協力をするよう努めなければならないものとすること。

第五 実施者の責務

  対象公共事業に係る自然環境再生事業を実施しようとする者は、基本理念にのっとり、自然環境再生事業の実施に主体的に取り組むよう努めなければならないものとすること。

第六 他の公益との調整

  自然環境再生は、国土の保全その他の公益との調整に留意して実施されなければならないものとすること。

第七 自然環境影響評価 

 一 中央自然環境影響評価委員会は、公共事業が自然環境に及ぼした影響その他必要な事項を勘案して、当該公共事業に係る自然環境再生を行う必要があるかどうかの評価(以下「第一次自然環境影響評価」という。)を行うものとすること。

 二 環境大臣は、第一次自然環境影響評価を行うため必要な範囲において、関係行政機関及び関係地方公共団体の長に対し資料の提出及び説明を求め、又は公共事業について実地に調査することができるものとすること。

 三 環境大臣は、第一次自然環境影響評価を行うため必要な範囲において、公共事業の実施者(国及び地方公共団体を除く。)に対し資料の提出及び説明を求め、又は公共事業について実地に調査することができるものとすること。この場合、当該実施者はその調査を拒めないものとすること。

 四 環境大臣は、中央自然環境影響評価委員会が第一次自然環境影響評価を行ったときは、当該第一次環境影響評価を踏まえて、当該公共事業に係る自然環境再生を行う必要があるかどうかを決定しなければならないものとすること。

 五 環境大臣は、四により自然環境再生を行う必要があるかどうかを決定したときは、次の事項を当該公共事業の実施場所の所在地を管轄する都道府県知事及び当該公共事業に係る関係行政機関の長に通知するとともに、環境省令で定めるところにより、公表しなければならないものとすること。

 吹@第一次自然環境影響評価の対象とした公共事業

 早@当該公共事業に係る自然環境再生の要否

 秩@第一次自然環境影響評価の内容

 六 都道府県自然環境影響評価委員会は、都道府県知事が五による通知(四による決定において、自然環境再生を行う必要があると認められた公共事業(以下「対象公共事業」という。)に係るものに限る。)を受けたときは、当該通知に係る公共事業が自然環境に及ぼした影響の詳細についての評価(以下「第二次自然環境影響評価」という。)を行うものとすること。

第八 自然環境再生基本計画

 一 都道府県知事は、都道府県自然環境影響評価員会が第二次自然環境影響評価を行ったときは、当該第二次自然環境影響評価を踏まえて、当該対象公共事業について自然環境再生基本計画を定めなければならないものとすること。

 二 自然環境再生基本計画には、次の事項を定めるものとすること。

  吹@対象公共事業の名称及び実施場所

  早@第二次自然環境影響評価の評価の概要

  秩@当該対象公共事業に係る自然環境再生に関する基本的方向

  刀@自然環境再生全体構想及び自然環境再生実施計画の作成に関する基本的事項

 三 都道府県知事は、自然環境再生基本計画を定めようとするときは、都道府県自然環境影響評価委員会の意見を聴かなければならないものとすること。

第九 自然環境再生協議会

 一 自然環境再生基本計画が定められたときは、三の事務を行うため、都道府県に、当該自然環境再生基本計画に係る自然環境再生協議会(以下「協議会」という。)を置くものとすること。

 二 協議会は、次に掲げる者をもって構成するものとすること。

  吹@当該都道府県の知事又はその指名する職員

  早@関係行政機関及び関係市町村の長又はその指名する職員

  秩@地域住民、特定非営利活動法人、自然環境に関し専門的知識を有する者、土地の所有者等(土地若しくは木竹の所有者又は土地若しくは木竹の使用及び収益を目的とする権利、漁業権若しくは入漁権(臨時設備その他一時使用のため設定されたことが明らかなものを除く。)を有する者をいう。)その他の当該対象公共事業に係る自然環境再生事業又はこれに関連する自然環境再生に関する活動に参加しようとする者

 三 協議会は、次に掲げる事務をつかさどるものとすること。

  吹@自然環境再生全体構想を作成すること。

  早@自然環境再生事業実施計画について審査し、その結果に基づいて都道府県知事に意見を述べること。

 四 協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、都道府県の条例で定めるものとすること。

第十 自然環境再生全体構想

 一 自然環境再生全体構想は、自然環境再生基本計画に即して、次に掲げる事項を定めるものとすること。

  吹@自然環境再生の対象となる区域

  早@自然環境再生の目標

  秩@その他自然環境再生の実施に必要な事項

 二 自然環境再生全体構想又はその変更は、協議会を組織する都道府県の議会の承認を受けなければ、その効力を生じないものとすること。

第十一 自然環境再生事業実施計画

 一 対象公共事業に係る自然環境再生事業を実施しようとする者(以下「実施申請者」という。)は、当該事業の計画(以下「自然環境再生事業実施計画」という。)が三の遂yび曹フ要件に該当する旨の都道府県知事の確認を受けなければならないものとすること。

 二 自然環境再生事業実施計画には、次の事項を定めるものとすること。

  吹@実施申請者の名称又は氏名

  早@自然環境再生事業の対象となる区域及びその内容並びにその年次計画

  秩@自然環境再生事業の対象となる区域の周辺地域の生態系その他の自然環境との関係並びに生態系その他の自然環境の保全上の意義及び効果

  刀@その他自然環境再生事業の実施に関し必要な事項

 三 都道府県知事は、申請に係る自然環境再生事業実施計画が次の要件に該当すると認めるときは、一の確認をするものとすること。

  吹@自然環境再生基本計画及び自然環境再生全体構想と整合性のとれたものであること。

  早@垂ノ掲げるもののほか、当該自然環境再生事業実施計画が自然環境の保全の観点から適切なものであること。

 四 都道府県知事は、三の確認を行おうとするときは、当該自然環境再生事業実施計画に係る協議会の意見を聴かなければならないものとすること。

第十二 自然環境再生事業の実施等

 一 自然環境再生事業は、第十一の三の確認を受けた自然環境再生事業実施計画に基づいて行わなければならないものとすること。

 二 都道府県自然環境影響評価委員会は、第十一の三の確認を受けた自然環境再生事業実施計画に基づいて行われる自然環境再生事業の実施の状況を監視するものとすること。

 三 都道府県自然環境影響評価委員会は、都道府県知事に対し、二の監視の結果に基づいて必要な意見を述べることができるものとすること。

 四 都道府県知事は、三の意見を受けたときその他自然環境再生の適切な実施の観点から必要があると認めるときは、自然環境再生事業を実施する者に対し、自然環境再生事業実施計画の変更、当該自然環境再生事業の実施方法の変更等の命令その他の必要な措置を講ずることができるものとすること。

第十三 財政上の措置等

  国及び地方公共団体は、自然環境再生を推進するために必要な財政上の措置その他の措置を講ずるよう努めるものとすること。

第十四 中央自然環境影響評価委員会

 一 第一次自然環境影響評価を行わせるため、環境大臣の所轄の下に、中央自然環境影響評価委員会を置くものとすること。

 二 中央自然環境影響評価委員会の組織、所掌事務及び委員その他の職員その他中央自然環境影響評価委員会に関し必要な事項については、政令で定めるものとすること。

第十五 都道府県自然環境影響評価委員会

 一 都道府県は、第二次自然環境影響評価並びに第八の三並びに第十二の二及び三の事項の処理を行わせるため、都道府県自然環境影響評価委員会を置くものとすること。

 二 都道府県自然環境影響評価委員会の組織、所掌事務及び委員その他の職員その他都道府県自然環境影響評価委員会に関し必要な事項については、その都道府県の条例で定めるものとすること。

第十六 この法律の失効

  この法律は、施行の日から起算して十五年を経過した日に、その効力を失うものとすること。

第十七 その他

  本法の規定の実施手続の詳細、施行期日その他必要な事項を定めるものとすること。

別表

 一 土地改良法(昭和二十四年法律第百九十五号)第二条第二項に規定する土地改良事業

 二 森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)第二条第一項に規定する森林における造林、間伐及び保育並びに林道の整備に関する事業

 三 森林法第四十一条に規定する保安施設事業その他の治山事業

 四 沿岸漁場整備開発法(昭和四十九年法律第四十九号)第二条に規定する沿岸漁場整備開発事業

 五 漁港漁場整備法(昭和二十五年法律第百三十七号)第三条に規定する漁港施設の整備に関する事業及び漁港の環境の整備に関する事業

 六 都市公園法(昭和三十一年法律第七十九号)第二条第一項に規定する都市公園(当該都市公園に都市基盤整備公団が設ける公園施設を含む。)その他の公園又は緑地の整備に関する事業

 七 下水道法(昭和三十三年法律第七十九号)第二条第三号に規定する公共下水道(以下「公共下水道」という。)、同条第四号に規定する流域下水道(以下「流域下水道」という。)及び同条第五号に規定する都市下水路の整備に関する事業

 八 河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)第三条第一項に規定する河川(同法第百条の規定により同法の二級河川に関する規定が準用される河川を含む。)に関する事業その他の治水事業

 九 急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(昭和四十四年法律第五十七号)第二条第三項に規定する急傾斜地崩壊防止工事に関する事業

 十 海岸法(昭和三十一年法律第百一号)第二条第一項に規定する海岸保全施設の整備に関する事業及び海岸の環境の整備に関する事業

 十一 道路法(昭和二十七年法律第百八十号)による道路の整備に関する事業

 十二 住宅の建設に関する事業

 十三 全国新幹線鉄道整備法(昭和四十五年法律第七十一号)第二条に規定する新幹線鉄道に係る鉄道施設の建設に関する事業

 十四 港湾法(昭和二十五年法律第二百十八号)第二条第五項に規定する港湾施設(同条第六項の規定により港湾施設とみなされる施設を含む。)の整備に関する事業、港湾の環境の整備に関する事業並びに同条第八項に規定する開発保全航路の開発及び保全に関する事業

 十五 空港整備法(昭和三十一年法律第八十号)第二条第一項に規定する空港その他の飛行場で公共の用に供されるもの(これらと併せて設置すべき航空保安施設その他の施設を含む。以下「空港」という。)の整備に関する事業及び空港の周辺における航空機の騒音により生ずる障害の防止等に関する事業

 十六 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号)第二条第一項に規定する廃棄物を処理するための施設(公共下水道及び流域下水道を除く。)の整備に関する事業