自然再生推進法案(与党案)の問題点および意見

項目 問題点
全般(法案合意の問題点) 自然再生は、多くの市民が参加して行うものであり、その為には、様々な関係者から意見を収集して法案を作成するべきであり、今回の法案は、議論も尽くされていない、十分な意見徴収も行われていない。
全般(法案合意の問題点) 真に自然再生を目指すなら、1・これまでの自然破壊を反省し、2・環境悪化の原因などについて、科学的な調査を行った上で、3・自然再生の目標を具体化し、4・再生計画を立てて、5・実施体制を確立し、6・情報公開と国民(市民)参加の原則を貫くべき。
 
全般(法案の位置づけ) 法体系上、この法律は、「国土利用」法の一法であって、環境基本法とその下位の自然環境保全法の体系には属していない。
 
全般(法案の位置づけ) 法案の構造は、一定の土地等の上で展開される市民の多様な自然保護活動が、行政執行の面で邪魔なものと考えて、市民の創意工夫に基づく活動を否定することを企画するものと見てとれる。
 
全般(NGO、NPO関係) 行政とさほど摩擦のなかったところ(NGO、NPOなど)が、予算がつくという仕組みになると、妥協が迫られる。さまざまな言い方をして接近してくることが考えられる。
 
全般(法案の内容) 法案全体を見ても、野生生物に対する配慮が見当たらない。 再生事業に目を奪われ、今ある自然の保全をおろそかにしないでほしい。
 
全般(事業暴走への危惧) 市民参加や情報公開、公聴会等、金がついて単年度で行うものであり、容易なものでない。予算がついて、事業が暴走するようなものである。すべて予算執行の手続きに基づいて行い、自然推進なんか考えていられない。 
全般(事業暴走への危惧) 日本の場合では自然再生・野生生物回復基本方針という場合、生態系ネットワーク、フライウェー、絶滅危惧種などをどう回復していくか考慮に入れて三つのプログラムを組んでいく必要がある。当然個別事業に対して、自然再生推進法という定義がされなくてはいけないが、この法案のように事業が自然再生ということで進められるのであれば、暴走することが考えられる。
全般(事業実施方法) 議論の上で、事業を実施することになっているが、許認可の必要なものでない限り、実施しできる。計画自体は主務大臣に出しておかなければいけないが、主務大臣は助言程度しかできない。規制するなどといった法的な効力は一切ない。NPO法人は、協議会の一参加者でしかない。もちろんNPO法人が実施者になることもありえるが、容易に実施地域を定め、計画を立てて実施することが可能。これに、NPO法人は、実施者が作ることは簡単であるので、実施が容易に行うことができる。公共事業についても、抽象的な枠組みについても、これに当てはまるような事業が多くある。大きな開発行為が考えられた時に、従来どおりミティゲーションが行われる場合、この部分は本法案に当てはまるということになれば、主務大臣は斡旋を図る必要があるためアセス法を免れるなどということもありえる。
全般(事業実施方法) 例えば、水門を空けるということでも自然再生になる。それが盛り込まれていない。いくら葦原などを作っても、生息地の管理などはされていない。生態系の問題が切り離されている。
(目的) 法案の目的にも、他の項目にも「生物の多様性の確保」についての記述見あたらない。 生物多様性国家戦略を策定しているにも係わらずなぜ記述がないのか? 生物多様性国家戦略の整合していない。 
(目的) 生態系の機能をどう復元されていくかということが話されていない。
(定義) 「自然環境」を単なる場として捕らえていて、生物に関わる条項が見当たらない。 
(第2条) 特定非営利活動法人の範囲が不明。 そもそも再生は、保全措置のひとつのツールであるはずが、法案では「再生」に「保全」が含まれている。 
(第2条) 過去に損なわれた自然環境を取り戻すことは、代償措置ではない。
(第3条4項)  再生事業における科学的評価とフィードバックがうたわれているが、その権限は実施者に委ねられていて歯止めが掛からない。 
(第3条4項)  アダプティブマネージメントとして、ブレーキのしくみがない。ブレーキのない車を靴ってしまうということが一番の危惧。
(第3条4項)  「自然再生は、国土の保全その他の公益との調整に留意して実施されなければならないものとすること。」が大問題である。
(第3条第5項)  「自然環境学習」を強調しながら、次代を担うべき子供達への環境教育を所管している文部科学省は主務大臣になっていない。 
(第4条) 「地方公共団体の責務」として、「事業実施対象地域の、都道府県議会もしくは市町村議会は、適切な自然再生事業が行なわれるように努める」とするべき。
(第5条) 地方公共団体が事業の実施者となる場合もあるので、首長は自然再生事業を適切には監視できない。
(他の公益との調整)(第6条) 科学者が加わるということは海外では当然のことで、地域の自然資源に管理者として加わるという仕組みが一切ない。科学委員会は本来協議会に入ってはいけない。科学委員会は第3者として存在しなくてはいけない。
(他の公益との調整)(第6条) 自然再生推進法案でも、NGO/NPOが環境保全したい地域では、「その他の公益との調整」によって、自然再生事業が行なわれない可能性・大。
(自然再生協議会)(第8条)  協議会は合意形成機関として位置づけられ、科学的評価機関が存在しない。 この法案は、「閣議決定」した「自然再生基本方針」を踏まえ、市民が「自然再生協議会」なる御用団体を作り、事業計画もがんじがらめに役人に縛られた方針の範囲で、「自然と共生」するようだ。 
(自然再生協議会)(第8条)  協議会等の参加に明記された団体は、みんな天下りが在籍し、行政べったりである。活動していると妨害をしてくるような団体に、この計画以外に一億以上のお金が流れている。
(自然再生協議会)(第8条)  第3者が評価できるようなものが必要。なんでもかんでも看板の架け替えというようにされていくのはよくない。必要事業をNGO、NPOが外部機関として評価する仕組みを作ることが必要。
(第9条) 自然再生事業の実施にあたっては、第3者認証のしくみを法に盛り込むことが必要。
(第9条2項) 再生事業の対象面積に制限が無く、環境アセスとの関連が不明である。 
(第9条2項) モニタリングについての具体的記述が無く、その評価基準も定めがない。 評価手法がない。
(第9条2項) 環境破壊的な開発行為にはどういうアクションが取れるか、また今までやってきた復元行為にどういう影響があるか。モニタリングの対象にされていない。そうすると評価の仕様がないというところにおちいる。
(第12条)  第12条の規定は、再生事業の許認可権限を聖域化するもので、到底容認できない。 
(自然再生事業の進捗状況等の公表)(第13条)  評価してそれをどう計画にフィードバックできるかの仕組みも必要。