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軽井沢におけるニホンザル全頭駆除計画に関する質問書

2004年12月 日

長野県知事 田中康夫  様

軽井沢における野生ニホンザルの全頭駆除に関する質問書

野生生物保護法制定をめざす全国ネットワーク


 拝啓

 時下ますますご清祥のことと存じます。
私ども「野生生物保護法制定をめざす全国ネットワーク」は、全国45の自然保護団体、動物保護団体によって1999年に組織されたネットワー クです。
 長野県で、このほど県の方針により軽井沢のサルを全頭駆除することを決定したと聞き、驚いております。公平で、開明の誉れ高い田中知事の政策としては理解できないものがあり、一同大きな危惧を抱いております。
 これに対して、以下の点をお伺いいたしたく、ご回答をお願いいたします。


1.国との協議について
 捕獲の予定地域は国指定鳥獣保護区であり、そこにおける捕獲には環境省の許可が必要です。新聞報道では、国との協議も行わずに県だけの判断で決定したかのように報じられていますが、これは事実でしょうか。

2.特定鳥獣保護管理計画について 
 長野県の「特定鳥獣(ニホンザル)保護管理計画」では、「軽井沢個体群は捕獲のみに頼らない総合的計画的な被害防除による保護管理を進める」とされていますが、これまでどのよう保護管理を進めてこられたのでしょうか。
 また、計画には、最終手段として「全群捕獲」も検討の可能性はあるとはされていますが、そのような重大な決定に至る前には、事前のモニタリング(生息状況や被害実態)にもとづく情報収集や分析を行い、その情報が公開された上で、関係各方面の参加にもとづく合意形成がなされる必要があります。今回の決定は、このような手続きを経ているのでしょうか。

3.軽井沢のサルを全頭駆除する根拠について 
 有害鳥獣捕獲においては、農作物被害等、被害の実態が存在し、捕獲を行わなければ被害を防げない場合に限って必要最小限の頭数を捕獲することを行政が許可することになっています。今回の場合、被害の実態に比して全頭を捕獲しなければならない必然性があるかどうかはなはだ疑問です。
 軽井沢では、地元のNPOが2001〜2002年にかけて、町から、サルの生息調査や被害対策の委託を受けて取り組んできたため、被害は相当軽減されていたと考えられます。 しかし、2003年から、町が猟友会(野生動物監視隊)に委託先を変えたことにより、被害が増大しています?これは科学的保護管理対策の手法を欠くことになり、被害コントロールに失敗したせいでははないかと推測されますが、ご見解をお聞かせ下さい。

4.捕獲方法について
 サルの全頭捕獲の場合は、普通大型檻(地獄檻など)が用いられますが、全頭捕獲をするためには、まず檻を設置し、それに対する馴致とそれにともなう餌付けが一ヶ月〜数ヵ月必要になります。これ自体、サルの人なれや農作物への餌付け状態を増長させることになり、捕獲までに被害状況はさらに悪化することがあります。
 また、全頭捕獲は難しく必ず取り残しが出ますので、群れが分断して小集団によるゲリラ的な被害が増えることも予想され、何もせずに数年たてばまたもとの状態に戻ります。費用と労力の割には効果が見られないということは、すでに県内の他地域の例で実証されています。
 県として、何ら被害が軽減しないこのような捕獲方法を再検討する余地はないのか、ご見解をお知らせください。

5.被害防除対策について
 軽井沢は別荘地であり、農作物被害といっても少数の家庭菜園規模が対象です。また、この地域のサルは、野猿公園や観光地で餌付けされたサルとは異なり、人に対して積極的に襲ってるようなサルは見られないとのことです。このような場合の対策としては、小規模の囲いを作る、戸締りをきちんとする、出会っても刺激しないといった対策で十分と考えられます。追い払いについても、地元のNPOが実施している追い払い方式で効果を上げていると考えられます。
 何よりも、誘引物の除去や餌付けの禁止、家庭菜園のネット張りなど、地域における被害防除対策を進めることが必要であり、これがなされないまま捕獲をしてもまた別の群れを引き寄せるだけとなる可能性があります。
 また、住民の中には、サルを迷惑を思う人ばかりではなく、窓の外にサルが見える情景を楽しむ方もおられます。その人々の声は今回の決定には反映されていないと考えられます。
 県は、このような具体的な対策があるにもかかわらずこれを怠り、全頭駆除によってこの地域からサルを一掃してしまうおつもりのようですが、サルの保護を求める一般感情にどのように配慮されているのか、ご見解をお知らせください。

 以上、ご多忙中、恐縮に存じますが、12月28日までにご回答いただきたく、お願い申し上げます。