平成11年6月8日衆議院環境委員会・会議録より
政策決定におけるNGOの参加についての質疑
○佐藤(謙)委員 民主党の佐藤謙一郎でございます。
この鳥獣保護法の改正の審議を聞けば聞くほど、私はやるせない気持ちといいますか、何でこうした法律を我々はこの場で審議しなければいけないのか、そんな思いにさせられております。個体数管理ですとか、あるいは科学的、計画的な保護管理といった辞書にもないようなこんな言葉が結局はまかり通って、人間との共生をうたいながら、野生生物を駆除し、狩猟に駆り立てていくという法律。一方で、野生生物を保護しなければいけないとした観点が全く抜け落ちてしまって、私自身この法律に何とも強い憤りを感じるわけであります。
個体数管理、大体管理なんという言葉を使うこと自体が、人間との共生とは全く無縁のものであることを証明するようなものでありますし、こうした言葉を使えば使うほど、アウシュビッツをほうふつとさせる言葉のレトリックを感じざるを得ないのであります。
今回私が非常に驚いておりますのは、環境庁は本来特定の業界と結びつく役所でありませんから、環境NGOですとか市民グループ、市民運動との連携の中から、本当に自然を保全していこう、あるいはダイオキシンや環境ホルモンといった我々の人体や生態系に著しい悪影響を及ぼすようなものに一緒になって取り組んでいこうとする、そういう役所であると私は考えていたわけでありますけれども、まさにその一番の財産である市民グループ、市民団体からこれほど大きな抗議や批判が来ている法律も私は経験をしなかったわけであります。
かつて環境アセス法あるいは地球温暖化法、さらには過般のPRTR法でも、いろいろな批判もありましたけれども、まさに野生生物と人間とが共生するというこの法律に対する非常に大きな反響と、そうした声を全く無視するかのような法律の提出のされ方に、私はまず疑問を感じました。
ここで冒頭まずお聞きをしたいのは、参議院の参考人質疑で幾つかのやりとりがありましたけれども、その中で参考人が、この改正案が作成される過程における検討会、審議会において合意形成が不十分であったと指摘をされております。具体的には、平成九年六月から十年の四月まで、環境庁が鳥獣管理・狩猟制度検討会を七回にわたって、これは非公開で行って報告書をまとめたというふうに言われています。この間、NGOに対する意見を聞くということはなかったということですし、また平成十年五月から十二月まで、三回にわたって自然環境保全審議会の野生生物部会、そして六回の小委員会が開催されたけれども、これもまたNGOに対する意見を聞く試みは一切なされなかったというふうにありましたが、まず事実を確認したいと思います。
○丸山政府委員 最初の、自然保護局に設けました鳥獣保護法改正の検討会につきましては、いわば内部的な専門家、研究者によります検討会でございます。その過程におきましては、専門技術的な検討をしていただくということで、NGOの方の意見を聞くということはいたしておりませんけれども、その後の審議会におきましては、これは公開制でございます。審議会の過程を公開いたしまして、またいろいろな御意見も寄せられております。また、審議会の中にも何団体かの自然保護団体の方も入っておられたところでございます。
また、審議会に限らず、自然保護団体と環境庁自然保護局はいわば車の両輪でございまして、ともに力を合わせて自然保護を進めてまいっているところでございます。常時、自然保護団体との意思疎通を図り、忌憚なく行政を進めるという基本姿勢で参っておりまして、具体的に審議会で公聴会とかあるいは団体の意見を聞くというような手続は踏んでおりませんけれども、全体としては、私どもとしては、十分意見を踏まえて検討してきたというふうに考えているところでございます。
○佐藤(謙)委員 まさに環境庁はこうした市民グループ、いろいろとありますからその辺はなかなか大変だと思いますけれども、そうした方々と一緒になって、これからの法律作成に携わっていただきたいと思います。
特に、PRTR法でも、OECDの原則やガイダンスマニュアルにあったように、まさに政策形成過程の透明性の確保あるいは利害関係者との合意というものが前提になっていたのに、それがほとんどなされていなかったという反省を我々はもっと深刻に感じてもらいたいと思いますし、先ほど近藤議員が質問しましたように、まさに自然、野生生物と人間、この共生という関係は、利害関係者がだれとだれではなくて、まさにすべての国民が利害関係者である、そういうところからスタートしなければ、何か国民にとって野生生物保護がうそに感じられるんだろうと思うのです。
その中で、まず一番最初に、そうした市民との信頼関係の構築がこの法律をさらに生かしていく一番大きなキーポイントだということを御指摘申し上げ、そして、これからの合意形成について、次の幾つかの点について確認をさせていただきたいと思います。
一つは、鳥獣保護事業計画、これは国が設定基準を今度改定することになると思いますが、この中にも、きっちりと市民、NGOの意見を入れていかれるか。
そして、二番目には、特定鳥獣保護管理計画、これは都道府県が策定する際のガイドラインあるいは計画の実施体制についてのガイドラインを策定しているということでありますけれども、こうしたガイドラインに対しても、きっちりと意見を入れていくという決意がおありなのか。
附帯決議等々にもありますけれども、さらには、こうした特定鳥獣保護管理計画の保護管理の目標として、個体群の規模ですとか確保すべき生息環境や生息域等について学識経験者等の意見を参考に決めていくことが想定されているというふうに言われておりますけれども、学識経験者等の等に、やはり一般市民やNGOの声をきっちりと聞くという姿勢があるのか。また、特定鳥獣保護管理計画等々の中で、鳥獣保護区の設定についても自然保護団体の意見を聞く用意があるのかを確認させていただきたいと思います。
○丸山政府委員 鳥獣保護事業計画の国の策定基準につきましては、五年ごとにその基準の改定をいたしております。第九次の鳥獣保護事業計画策定基準、来年には策定をいたしますので、その過程におきましては、自然保護団体あるいは市民団体の意見も十分聞いてまいりたいと考えております。
また、特定鳥獣保護管理計画をつくる際の国のガイドライン、これもいわば衆知を集めて策定する必要がございます。その策定過程におきましては、シンポジウムその他いろいろな手法を通じまして、自然保護団体あるいは狩猟団体、被害農家といった幅広い意見を聞いて策定をしてまいりたいと考えております。以上でございます。
○佐藤(謙)委員 ガイドラインは大体いつごろをめどにつくられることになっておりますか。
○鹿野説明員
この法律施行の中で、管理計画というものの策定が一番重要になると思いますので、私どもとしては、できるだけ早く、特にただいま先生がおっしゃいましたような手続関係等々につきましては、できるだけ早く策定して都道府県に出したい、具体的にはことしの秋ぐらいを予定してまいりたいと思います。
○佐藤(謙)委員
それは、できるだけ早くお願いすると同時に、やはり内容のあるものにしていただきたいと思います。
今回のこの法律で一番深刻に批判があるのが、地方自治体にこうした野生生物の保護というものが丸投げされてしまわれたのではないか、そうした実態に対する批判があるわけです。特に、野生生物の保護管理を進める地方の体制がまだ十分整備されていない状態で、自治体に十分な受け皿がないまま、捕獲許可権限を移すべきではないという指摘があちこちからあるわけであります。そうした受け皿がまだ余りないということ以前に、そうした現実を直視して認めていかなければいけないのに、環境庁が都道府県を支援しようとする意気込みがほとんど今までの議論でないということの方が私は非常に心配だ。
環境調査室の参考資料の中にも、都道府県における野生鳥獣の保護行政の現状から見て適切な計画の策定能力、実施能力に対して、多くの関係者から懸念が表明されているというふうにあります。だからこそ、国においても、都道府県の基盤整備の取り組みに対し、指導助言はもちろん財政的な面からも積極的に支援していくことが望まれると結ばれているわけです。
ところが、過般の参議院での質疑でも、捕獲許可権限が地方自治体に移譲されることについて問題はないかという趣旨の質問に対して、市町村が行っている有害鳥獣捕獲許可が適正に実施されていないという指摘もあるが、環境庁としては適正に行われていると認識している、こういったありさま。
都道府県は今二十数県でいろいろと頑張っているところもあるわけですけれども、安易に市町村にこうした権限をおろすことに我々は非常に不安を抱えているわけであります。そうしたことも、ただただ座視するということではなくて、市町村にはおろすべきではないという思いをお持ちであるかどうか、まず聞かせていただきたいと思います。
○鹿野説明員 国が持っている権限を都道府県、さらに都道府県から市町村にというのは、これはあわせて御審議いただいております地方分権法の中の鳥獣保護法に係る部分でございますが、私どもといたしましては、当然、今機関委任で都道府県にお任せしている部分、それが今度は自治事務になっていく、さらにその下で、都道府県から市町村に条例を制定して一部委任することができるという形になってまいります。
従来は、地方自治法の中の一般委任規定を使って相当の都道府県で市町村に委任してきたところでございますが、これからはしっかりと条例でそういう種を定めて委任するという形になろうかと思います。
私どもとしましては、これまで国が持っていた捕獲の権限、それが都道府県に、形は変わらないといいましても機関委任から自治事務になる、さらに市町村に行く場合がある。全体としましては、そういう地方分権の流れ、また、許可事務の簡素化ということからすればその事務の流れは一つ当然だろうと思います。
これは相手にしておりますのが野生の鳥獣でございますので、やはりそこは全体として、その鳥獣のそれぞれの置かれた生息状況、そういったものを慎重に勘案して、それぞれ別途委任事務というものを考えていくべきだと考えております。我々としては、それぞれ慎重な対応が必要と考えております。
○佐藤(謙)委員 国と自治体の役割については、今お話しのように一括法で整理をしているわけでありますけれども、環境庁は、そうした流れをそのままうのみにして、地方分権の流れからそうした方向を見守るということではなくて、それはもう権限というものがありますから、その範囲の中で、情熱といいますか、魂のようなものを吹き込むということはできるはずだと思うのです。
ことしの三月五日の朝日新聞に、クマ、人、不安の共存という記事の中で、「財源問題」というところでこういうくだりがあります。斜里町のことですけれども、
しかし、職員三人がクマ対策に専従する斜里町でも夏は時間外勤務が月に百時間を超える。人件費を除いても年間六百万円の対策費は町には大きな負担だ。
法改正で自治体に保護管理や駆除の権限が移されるが、山中さんは、これは斜里町自然保護係長の山中正実さんのことでありますけれども、
「苦しい地方財政では、自然環境は後回しにされかねない。北海道などやる気のある自治体では大いに前進するが、多くの自治体では単なる苦情処理として駆除、狩猟が進められる危険が大きい。せめて、地方独自の保護管理計画を審査する第三者機関が必要ではないか」
というふうに言っておられます。
こうした市町村の真剣な取り組みも一部にはあるわけですけれども、そうした彼の声を聞いてどういうふうにお感じですか。また、第三者機関が必要ではないか、そうした考え方にどういう感想をお持ちですか。
○丸山政府委員 現に、各都道府県の第一線の市町村におきまして、今お話しのような専門の鳥獣担当者の方が努力をされているところでございます。そういったような声を結集し、なおかつ都道府県の特定鳥獣保護管理計画の策定につながっていくものと考えております。
第三者機関という問題につきましては、いわば特定鳥獣保護管理計画を策定する過程で、研究者あるいは専門家、自然保護団体その他の幅広い方々によります検討会を事実上つくっておる例がございます。そういった全体としての諮問機関といったようなものをつくって、この特定地域の保護管理計画についてのチェックをしていただくということが通例でございますので、今度のガイドラインにおきましても、何らかの形で実施者に対する大所高所からの判断を求めるような、そういった検討会の設置も必要だろうと考えております。
○佐藤(謙)委員 いろいろと都道府県、市町村で御苦労があると思うわけですけれども、こうした科学的、計画的な保護管理を行うには、予算、人員、体制などが不可欠であって、現在の地方自治体ではなかなか厳しいわけでありますが、どうも、今回の法律案の議論の中で、国と地方自治体の野生生物保護の責任が明文化されていないということを指摘する向きがあります。
なるほどに、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律では、第二条の責務で国と地方公共団体の責務がきっちりと書き込まれているわけでありますし、新しい法律ということもあって、目的にも私たちが望んでいるしっかりとした目的が書き込まれているわけですけれども、この鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律というものが、まさに、鳥獣保護を表看板にしながら有害鳥獣の駆除と狩猟に偏った法律であるということが目に見える、そうした法律だということを感じざるを得ません。こうした明文化についてどういう御所見をお持ちか、お願いします。
○丸山政府委員 鳥獣保護狩猟法が昭和三十八年に改定されるに当たりまして、第一条に目的を明示いたしまして、鳥獣保護思想を明確にし、また、鳥獣保護事業計画を策定して、今後の鳥獣保護事業の基本にいたしたところでございます。その他、各般のことによりまして、いわば鳥獣保護法がスタートをしたところでございます。
現在、それに基づいて第八次までの鳥獣保護事業計画が策定をされ、各都道府県における鳥獣保護区の設定等も大変広範なものになってまいっております。私ども、そういったような法律の趣旨を踏まえて、また、今度の改正法による特定鳥獣保護管理計画の考え方を踏まえて、適正に対応してまいりたいと考えております。
○佐藤(謙)委員 全く情熱を感じられないような答弁であったわけですけれども、今回の科学的、計画的な保護管理の中で、減らしたいだけの管理計画が先行するということを危惧する方々がおられます。ふやそうとする管理計画のインセンティブというのが、都道府県にないのではないかと。
例えば、ツキノワグマをとり過ぎないための管理計画ですとか、そうしたものがオミットされてしまって、ツキノワグマ、猿など保護すべき野生動物に対して任意ではこうした計画が立てられないおそれがあるということでありますが、こうしたことに対して、任意ということを超えて義務化をしていくような積極的な具体策というものをお持ちでしょうか。
○鹿野説明員 今回の管理計画は、どうも減らす方ばかり注目されておりますが、私どもとしましては、ただいま先生から御指摘ありましたように、今、減少しつつあって手を打たなければいけない野生の鳥獣、これらについての計画策定という部分につきまして、非常に重要と考えております。
都道府県の場合に、ふやすための努力、例えば生息地改善ですとか環境の整備等々につきましてはなかなか実行しにくい、また都道府県の中で調整も大変という、いろいろなやりにくい面がございます。そういった面につきまして、今回、法制度の中でしっかりと位置づけることによりまして、それぞれ関係者間の調整も今までより容易になりましょうし、また、私たち国の関係機関、環境庁を初めとする関係機関でございますが、これらにつきましても、それぞれが法定の計画の上で定められた計画を実行するというものに対しましてできるだけの支援をしていく、そういうことがこれまで以上にやりやすくなるというように考えております。
○佐藤(謙)委員 より具体的にそうした支援の体制というものをつくっていただかなければ、本当に私が今危惧したような流れができてしまう。それはもう確実にできてしまうだろうというふうに考えておりますので、真剣に対応していただきたいと思います。
環境庁が本当にやる気があるのかといういろいろな議論の中で出てきたものの一つに、国立公園に野生動物事務所が十カ所あるというふうに聞いております。環境庁長官が参議院での質疑で地元の方が鳥獣の実態を知っているというふうに答弁されたと聞いておりますけれども、実態は、人がないからということであってほしいな、人があれば、この国立公園の野生動物事務所を、鳥獣保護法の改正の主役になるぐらいに、もっときっちりとその立場を明確にできるのではないかなというふうに思っていただけるとありがたいのですが、そうではなくて、地元の方が鳥獣の実態をよく知っているという答弁でした。
日光ですとか十和田だとか箱根だとかあるわけですけれども、例えば日光で、あの周辺の地元の人たちと野生動物事務所に勤務されている方々、どっちがそうした実態を把握されているか。こうした野生動物事務所をもっと機能させていくことが大事だと私は思うのですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
○鹿野説明員 自然の状態を観察したり、それをどう管理していくかということは、やはり現場が一番でございます。その点につきましては先生御指摘のとおりでございまして、私どももできるだけ現場でそういう鳥獣保護を含めました自然環境の管理に当たっていきたいと考えております。
ただ、先生御指摘のとおり、今全国に十一の国立公園・野生生物事務所というものを置いてございますが、現在のところ、そこの所掌するところは、国立公園の保護管理、利用といわゆる種の保存法に基づきます絶滅しそうになった動植物への対応というのが今私どもの現地職員の所掌事務となっております。
いずれにしろ、今申し上げましたように、自然環境はすべて現場で実際に見てそれをどう受けとめるかということが重要でございますので、今後、私どもの出先機関の所掌事務の中に鳥獣保護についても広げていくということを検討してまいりたいと考えております。ただ、そのためにはやはりもう少し体制の充実が必要かというように考えております。
○佐藤(謙)委員 正直に言っていただきました。体制の充実、まさにそのとおりだと思うのです。我々も環境庁を厳しく批判することがあるわけですけれども、やはり本音で、そういう体制がきっちりと確保されていけばこういうところでもっと積極的な関与ができるのだ、積極的な取り組みができるのだということをもっとストレートに言ってほしいと思うのです。
今、検討すると言っていただきましたけれども、ぜひ所掌事務の中に鳥獣保護というものをきっちりと入れていただいて、特定鳥獣保護管理計画の中で、野生生物は山や県境を越えてまたがって生息しているわけですから、そういう野生生物に対する対応こそまさに野生動物事務所の役割なのではないかなというふうに思うわけであります。
ここで、県境をまたがっている、そういう言い方をしましたが、何人もの方々から同様の質問をされております。個々の都道府県がそれぞれに努力をする、しかし県境をまたぐということで、重複駆除や過剰駆除になってしまうおそれがあるわけでありますけれども、この辺の責任の体制というのはどういうふうになっているか、お知らせください。
○丸山政府委員 改正鳥獣保護法では、一条ノ三第四項で、県境をまたがって分布する個体群を対象とする特定鳥獣保護管理計画策定の際には隣接都道府県と協議する旨の規定を置いているところでございます。
環境庁といたしましても、隣接都道府県間で適切な調整を図られ、保護管理施策が適正に実行されるように広域的な視点から指導してまいりたいと考えております。
○佐藤(謙)委員 それはよくわかるのですけれども、そうしたことに環境庁が出張るということはいろいろと権限的になかなか難しいと思います。それでも、側面から応援をする体制というのはありますか。
○鹿野説明員 先生御指摘のとおり、鳥獣には県境はありませんので、当然県境をまたいで移動したりするわけでございます。
このような場合に計画制度では、ただいま局長が御答弁申し上げたとおりでございますが、私ども環境庁としましては、それぞれの地域個体群だけでなくて、それを含みます国土全体で当該鳥獣がどのように生息しておるかという部分につきましては、全体を把握し、それぞれの都道府県に情報提供していく、これは環境庁の責務と思っております。
そういう国土全体の生息分布に基づきまして都道府県が隣県と協議して計画をつくっていくわけでございますが、当然、計画策定の間にも私どもが全国土的に見て適正となるようにしっかり指導していく、これはまたガイドラインの策定にもかかわってくるわけでございますが、国土全体の中でそれぞれの地域がどうあるかということは私どもの責務としてしっかりやっていきたいと思っております。
○佐藤(謙)委員 全体的な対応というのはもちろん環境庁の仕事であることはわかりますが、県境を越えて二つ以上の都道府県にまたがる、そうしたことが結局地域個体群の消長をまさに左右することでありますので、全体全体と逃げないで、地方分権の流れの中で地方分権を妨げない範囲で環境庁が果たす役割というものをもう少しアグレッシブに見つけ出そうという気がおありじゃないのかなということが残念でなりません。
そこで、先ほど来人材の話がいろいろと出てきているわけでありますけれども、鳥獣保護員制度、実は私は不勉強でこの法律の議論を始めてから初めて鳥獣保護員という制度があることを知ったわけであります。
参議院の参考人質疑の中で、野生鳥獣の保護管理を地方公共団体が行う際、予算不足、体制不備といった課題を抱えているがという趣旨の質疑に対して参考人から、鳥獣保護員制度を適正に活用し、鳥獣保護員に野生鳥獣の専門家を位置づけ、科学的、計画的保護管理を行うべきである、そうした意見が出されました。また別の参考人からは、野生動物専門官というべきものの位置づけが必要ではないかというふうに言われました。
平成八年の資料ではこの鳥獣保護員が三千二百七十人、しかし、ハンターからが七、八割というふうに聞いております。まさにこの鳥獣保護法は狩猟に寄りかかっている法律であるということのよい例ではないかと思いますが、この七、八割がハンターであるというのは事実ですか。
○丸山政府委員 おっしゃるとおりでございます。
特に、鳥獣保護員は都道府県の鳥獣保護事業計画に基づく事業の実施の事務を補助する職員で、資質の向上を図りながら、鳥獣の保護管理のための調査あるいはモニタリングの担い手として活用が期待されているところでございますけれども、狩猟者登録証の確認、あるいは狩猟者が所持している鳥獣の検査といったような狩猟の適正化に関する業務も担っているところでございます。
また、都会地におきましては、自然保護にお詳しいボランティアの方々に鳥獣保護員に御就任いただいておりますけれども、都会地以外におきましては、山のことを知っている、鳥獣のことを知っている方となりますと、どうしても狩猟免許を持っている方に限られるということで現在そのような状態になっているというふうに理解しております。
○佐藤(謙)委員 例えば、歯が痛む、虫歯を抜く、町の歯医者さんに補綴という立場の歯医者さんと保存という立場の歯医者さんがいるのですね。保存という立場は、なるべく虫歯を抜かないで、歯を抜かないで治療していこうとする。補綴は歯を抜いてきれいに歯の治療をしようという。我々はそのどちらかを選ぶことができるわけです。
自然というものを本当に大切にして愛して、ハンターがすべて愛していないというわけではありませんけれども、動物を見ると条件反射で銃を構えてしまう、そういう人たちだけにこうした鳥獣保護員を委嘱していいのだろうか、もっとほかに人材を確保していく、そうしたバランスというものがあっていいのではないか。有害駆除やこうした保護管理計画の実施に当たって、私人であるハンター依存というのは行政の責任放棄になるのではないか、そういう指摘をする人たちがいます。
私はハンターがすべて悪いと言っているわけではありません。そこに余りにも大きく依存する今の体制が本当に望ましいのか、そうでないとするならば、どこにそうした人材を求めようとしているのかお答え願います。
○丸山政府委員 鳥獣保護員の選定に当たりましては、当然ですが、当該市町村に居住していて、鳥獣保護事業に熱意を持っていて、地元住民の信望があり身体強健で時間的にも経済的にも制約が少ない方、こういう基準を設けて選定をいたしているところでございます。
都会以外の地域におきましてはそういったような要素に当てはまる方々がだんだん減ってまいっておりまして、どうしても狩猟とのかかわりにおいてその市町村に居住している方になりがちでございますが、私ども、できるだけ幅広い、自然保護に、あるいは鳥獣保護に関係のある方々に御参加を願いたいというふうに考えておりますので、今後ともそれのいわば多様化ということは努力をしてまいりたいと考えております。
○佐藤(謙)委員 これもまた全然具体性がなくて、そうした基準を読み上げていただいて頑張る、そういう決意表明だけだったような感じがして、こういうことが続くと事態というのは全く変わらない、そういう例を私は幾つも見てきたんですね。やはり、具体的にこういう人たちをというような答弁をこれからも期待したいというふうに思います。
時間が過ぎてしまいましたので、次に、わなの免許について御質問をさせていただきます。
甲種免許、乙種、丙種とあるわけでありますけれども、その甲種免許、これは明治時代の狩猟で生計を立ててきた人のためにできた制度だというふうに聞いております。田舎ではホームセンターにもごくごく自然にそうしたわなを売っている例があるというふうに聞いておりますけれども、このわなの販売の実態というのはどこまで把握されておられますか。
○鹿野説明員 先生御指摘のように、鳥獣を捕獲するためのわな、これはトラ挟みなんかが代表的なものでございますが、これがそういったような店頭に置かれておるというのは事実だと思っております。ただ、その実態そのものがどのくらい広がっておるかということにつきましては、残念ながら、私どももまだ調査をいたしているわけでございませんので、全体的な広がりについては把握いたしておりません。
環境庁は、こういったような販売店に、その販売に当たりましては、ただいま先生御説明ありましたように、これはわなの場合には鳥獣法の甲種の免許というのが必要でございますので、買う人がその甲種免許を取得しているのかどうかということを必ず確認して販売するようにという指導を都道府県を通じてしているところでございます。
○佐藤(謙)委員 やはりこうした免許制度があって、その販売の実態が全くわからないというのは、もう無責任きわまりないことだと思うのですね。こうした免許を持っている人が本当にそのわなを買うのか、それとも免許を持たなくてももうだれでも買える実態があるのか、その辺もきっちりとつかんでいただかないと、ますます市民からの批判が強くなっていくだろう。特に、クマの捕獲には箱わなが多く使われている。これは餓死させたり、とがった棒で突き殺すという残酷この上ない事例報告というのが相次いでいるわけですけれども、こうしたくくりわなですとかトラ挟みですとか張り網ですとか、無差別に獲物を捕らえて残酷な苦痛を与える、こうした狩猟具について、かすみ網のように使用、所持、販売を禁止すべきだというふうに思っているのですけれども、この辺についてはどうお考えですか。
○鹿野説明員 甲種免許を持っている方々が使うわなについてでございますが、これはわなの場合には鳥獣を無差別かつ大量というおそれがあるわけでございまして、そういったような形態のわなにつきましては使用を禁止もしくは制限しておるということでございます。
ただ、今お尋ねのくくりわな、張り網、トラ挟みというものにつきましては、例えば、夜行性の小さな動物をとるとき、それから銃器を使いづらい、割と住宅地の近くであるとかそういう場合、そういったような銃器使用による駆除が有効でないような場合に併用して使うということがございます。
こういうことからして、今後ともその限定的な使い方というような形でやっていきたいと思いますが、それによりまして特定の野生鳥獣が大変減少するというような事態になりましたら、私どもとしては、当該わなの禁止、もしくはそういうしかるべき制限を加えていくということについて検討してまいりたいと思っております。
なお、全体としては、そういうようなわなというものは鉄砲と違った危険な側面も持っておりますので、そういうものを適切に使用するということにつきましては、これまでも指導してきたところでございますし、今後ともそういったような指導を強めて、例えば免許の交付時等々につきまして、そういう指導を徹底してまいりたいと考えております。
○佐藤(謙)委員 都道府県や市町村では、できるだけ安上がりに効果的にそうした捕獲ができればというふうに流れていく、これは一つの流れだろうというふうに思うわけです。
例えば、最近、非常な勢いで猿に対する地獄おりのような大量捕獲ができる仕掛けが急速に普及しています。これは地域個体群を絶滅させるおそれがあると私は危惧をしているわけでありますけれども、この地獄おりというものは、環境庁としては、市町村が使いたいと言ったら推薦をするものなんでしょうか、それともやめるべきだと答えるものなんでしょうか。
○鹿野説明員 大量捕獲のできるわな、地獄おりなんか猿に対して効果的なわけですが、こういったものの使い方、やはり時と場所だと思っております。例えば猿なんかの場合にも、大量捕獲をどうしてもしなければいけないというような場合には、やはり使わざるを得ない場合も出てこようかと考えております。
○佐藤(謙)委員 大量捕獲しなければいけないというのはだれが決めるんでしょうか。
○鹿野説明員 今回の管理計画の中であれば、全体として目標とする頭数、そしてその結果として、それぞれの地域個体群が永続的に存続できるという目標を置くわけでございます。当然その中で、場合によっては、例えば猿の場合で、個体数調整としてかなりの数をしなければいけないという場合には大量捕獲ということになり得るわけでございまして、その目標決定、そういうものにつきましては、先ほど来申し上げましたように、研究者の意見、そしてまたNGOの意見、また、その被害を受ける人たちの意見、そういう方々の意見をたくさん聞く中で合意形成を図っていくべきものと考えております。
○佐藤(謙)委員 ここで、おりで捕獲された動物という存在、一たんおりに入ってしまった捕獲された動物は、実はあらゆる法律から抜け落ちている死角だというふうに言われています。
このおりで捕獲された動物の殺し方についてどういうふうにお考えかということと、実際に多数の動物がおりで捕獲されるわけですけれども、それがどういう殺され方をしているかの実態把握をどういうふうになさっているか、また、どうしようとされているか。
それから、さらに、この問題は、この後恐らく議論があるであろう動管法にもかかわってくる問題でありますけれども、そのかかわりをどう整理されているのか、その辺についてお答えください。
○鹿野説明員 わなにかかった動物のその後の処分もしくは殺し方でございますが、これはなかなか難しゅうございます。基本的には、野生鳥獣保護の問題というよりも、先生ただいまおっしゃいました、要するに、動物に対して虐待しないかとか、安楽死をどうやってさせてあげるかとか、その動物をどう愛護していくのか、そういう観点の問題ではなかろうかと考えております。
その実態でございますが、私どもとしましても、それぞれの、例えばわな、もしくはその駆除の形態のときに最終的にこういうふうな処分の仕方が多いという実態は例としては承知しているつもりでございますが、それが全国的にどういうのが多いのかというような全体としての把握ということは、現在のところできておりません。
○佐藤(謙)委員 これは動管法とのすき間の問題でありますが、こうやって鳥獣保護法の改正が現実に行われているわけでありますので、この辺はきっちりと議論をして、ある方向を出していただきたいというふうに思います。
それから、被害防除についてお聞きをしたいと思いますが、農水省はかつて、二、三十年前のカモシカ問題のときはいつも被害者の立場一辺倒であったというふうに聞いておりますけれども、近年、こうした鳥獣保護に対して積極的な姿勢を我々は感じ取っております。今までのいろいろな議論の中でも、被害防除に使える予算項目は総体で農水省として一千百億円あるというふうに答弁がありました。しかし、現実に防除ネットや防護さくに使われるのは十六億円にとどまる。これから地方公共団体のこれは要請主義という一つの手順を踏まなければいけないわけですけれども、この要請主義を一歩超えてもう少しPRをきっちりとして、農水省としてもこうした予算を有効に使っていく、そういう方向に導いてほしいというふうに思っております。
この鳥獣保護法の改正が今回必要であるほどに被害防除というのが急務であるとするならば、今までの偏った予算配分を是正する工夫があってもいいんじゃないか。国民の税金を適正に必要なところに分配する責任を農水省はどのように感じておられるか、お答えいただきたいと思います。
○大森説明員 私ども、農林業被害の関係につきまして、これまでも、いろいろな現地の状況等踏まえまして、各種の補助事業等によって、防護施設、防護さくを設置するとかあるいは防鳥ネットを設置する、こんなことにつきまして事業を実施してきておるところでございます。
それで、こういう防鳥あるいは防護施設、防護さく、現在メーンに実施しております事業、こういうもののほかに、やはりこれから、そういう鳥獣の被害を防止していくような新たな技術開発等にも取り組んでおるところでございます。
そういう中で、御指摘の予算の使い方というふうなことにつきましては、多くはメニュー事業の中に入っておりまして、そういう中で地域の優先度といいますか、これは農家の方々が丹精込めてつくった農作物、こういうものに対して繰り返し起きる被害あるいは程度のきつい被害、こういう地域にとりましては、やはりこういう事業を使って適正な対策をとっていくということが必要なわけでございまして、私どもも、そういう地域の実態を踏まえて、できるだけ被害の実態の正確な把握というものを通じた上で適正にこういう事業が実施されるようにこれまでも努めてまいったところでございます。
なお、私どもも、農林水産業そのものがやはりこれは環境と調和した形で将来に向かって発展していくということが非常に重要な視点でございますので、そういう視点を十分持ちながらこの鳥獣対策というふうなものについてはこれからも対応してまいりたいというふうに思いますし、そういう観点からいたしまして、有効な事業はそれぞれ使いながら、地域の実態、こういうものをしっかり把握し、きっちり評価する中から必要なものについては今後ともそういう事業的な措置もとってまいりたいというふうに思うわけでございます。
こういう事業がさらに効果を上げるというふうな観点から申し上げますと、これまでの各種の事業実施、こういうものにあわせまして、やはり個体の適正管理、そういう観点からの総合的な対応の必要性というものも現に感じておるわけでございます。そういう点もあわせまして、しっかりこういうものが適切に執行され、そしてまた効果が上がっていくような方向を模索してまいりたいというふうに思っております。
○佐藤(謙)委員 こうした被害防除により積極的にぜひ取り組んでいただきたいと思いますが、緊急被害対策として私自身は四つの段階に分けて考えました。
第一に補償措置というのがあるんだろうな、それから狭い意味での被害対策、それでやむを得なくて絞って撃つということ、さらには生息地の確保。生息地の確保等についてはこの後御質問をしたいと思いますが、補償措置ということになると、まず農林業被害の算定基準が適正に行われないと、これはそうした補償措置というところまで行かないだろう。もう一つ、参議院での議論では共済保険があるという答弁がなされました。しかし、これをもっと有効な保険にしていくにはどうした方法があるんだろうか。自動車で言う強制保険じゃないですけれども、今、掛けたい人が本当にごく一部で共済保険を掛けているということでは、本当の意味での補償措置につながっていかないのではないかということを考えます。これはちょっと通告していなかったので、おわかりの範囲でお答えいただければと思います。
○大森説明員 やはり被害の実態というものを非常に精度を高く、しっかり把握していくということが対策の前提でございます。私どもも、その点につきましては、非常にこれまでの蓄積を生かす中からより精度の高い方法によって実態の把握がなされるようにということで、昨年そういう点での通達の改正等も行いながら、さらにその精度の高い実態把握ということに努めておるわけでございます。
お尋ねの共済制度の対応ということでございますが、これにつきましては、農業共済の中で鳥獣による農作物被害というものもこれは共済金の支払い対象になっておるわけでございまして、鳥獣害を含めまして、気象災害あるいは病害虫等の共済事故による減収量が一定割合を超えました場合に共済金が支払われるという制度になっておるわけでございます。そういう中で、御指摘のように、鳥獣害と認められる被害につきまして共済金が現に払われた事例というものも出てきております。
ただ、これは、農業共済につきましては、いわゆる共済への加入というものが前提になってまいりますので、山奥のそういう畑作地帯ですとかあるいは果樹園地帯というふうなところにおきましてこの共済への加入がどの程度進んでいるかというふうなことが、この共済制度を生かすことができるかどうかということにかかわってくるわけでございます。
そういう点からいたしまして、できるだけこの共済制度の活用ということにつきましても、これは、広くこれまでのいろいろな会議等も通じて、都道府県あるいは市町村の方にもそういうことについていろいろとその情報を提供しながら共済制度の普及ということについても私ども取り組んでおるわけでございますが、いずれにしても、その点が一つのネックになるというふうなことがございます。
○佐藤(謙)委員 そうした方向で、積極的に取り組んでいただければというふうに思っております。
先ほどの生息地の確保という問題になってまいりますが、残念ながら、この法律には生息地管理というものが十分含まれていないということに対する批判が強いわけであります。そんな中で、きょうは生息域の復元と保全についてということで三点ほど質問させていただきたいと思います。
林野庁長官にきょうはおいでいただいておりますので、林野庁に後ほど質問をいたしますが、生息地の復元や保全という観点から、まず環境庁に、鳥獣保護の観点から林野行政との調整を図る必要があると思われますけれども、この林野行政との調整をどう図っていかれようとしているのか、この辺について御所見を伺います。
○丸山政府委員 生息環境の保全、復元に当たりましての林野行政との連携は大変重要であると認識いたしております。
森林の持っている公益的機能を発揮して野生鳥獣の生息地の適切な確保が推進されますように、環境庁としても緊密な連携に努めてまいりたいと考えております。
○佐藤(謙)委員 いやいや、そういう環境庁であるのかなということがよくわかります。やはり、もう少し魂を込めて議論をしてもらいたいというふうに思うわけでありますけれども、やむを得ないでしょう、それが現実でありますから。
そこで、クマやシカや猿のいろいろな議論をしているときに、広葉樹というものが減った、それが人間主人公の森に変えていってしまったと。経済性から針葉樹を植えて、そうして今日の日本を貧困な、最も寂しい、最も悲しい国にしてしまったわけであります。そうした広葉樹から針葉樹に変わったことが鳥獣保護に非常に大きな意味があるということも、まだ科学的には解明されていないといって環境庁はきっちりとした結論を出そうという姿勢がないわけです。
ここで林野行政をつかさどっておられる林野庁にお聞きしたいのです。生息地の保全というものは、林業やその林業人口に大きくかかわるものなんだろうと思います。きょうから参議院で審議される食料・農業・農村基本法では、農業や農業人口を確保するためにデカップリング制度の考え方が取り入れられたということですけれども、林業はそうではないというふうに聞いております。鳥獣の生息地である森林保全を考える上で、今後、収入とは必ずしも結びつかない広葉樹林の育成に対してデカップリングの形で財政支援の検討が必要になると考えておりますけれども、その辺についてどうお考えでしょうか。
○山本(徹)政府委員 先生御指摘のように、今野生鳥獣の保護、また生育環境の保全というのは大変重要な課題である、これは私どもも考え方を同じくいたしておりまして、平成八年の私どもの森林資源基本計画というもので、野生生物の保全を図るために森林整備の推進を行うべきであるという方針を出しております。
このために、具体的には、御指摘のような広葉樹林の整備、あるいは天然林施業等々もございますが、広葉樹林の整備も大変大きな課題として私ども積極的に取り組んでおりまして、最近では、人工林のうちで一〇%は広葉樹林として植栽されております。現在、人工林は日本の約四割ございますが、広葉樹林が二%でございまして、つい四十年代、五十年代ごろは人工林の植栽のうちで広葉樹林が本当に数%程度でございましたので、現在一〇%ということは、相当林業関係者の方々にも広葉樹林に対する認識が高まってきて、その実績も徐々に上がっていると思っております。
先生御指摘のデカップリングのような、広葉樹林というのは確かに林業の収益性という面から見るとこれは大変難しい問題がございますので、直接所得補償というような御提案がございましたが、現在、広葉樹林あるいは針葉樹林を植栽する、これは、植えただけではきちんと日本のアジア・モンスーン地帯では御案内のとおり育ちませんで、十年間程度下刈りとか枝打ちとかつる切りというような保育、育てる作業をいたします。また、二十年から三十年ぐらいになると間伐等の施業もいたします。
こういった植栽とか保育のための補助事業、これは公共事業で造林事業等の一環として補助いたしておりますけれども、広葉樹林についても、これの植栽を奨励するために、採択要件などを改善しながらこれを奨励いたしております。
これは農業でいいますと、造林に対する補助あるいは下刈り等に対する補助といいますのは、田植えとか草取りに補助金を出すような事業に相当いたす面がございます。欧米等の諸外国でも、造林や下刈り等には一般的に補助金は出されておりません。これは、日本の森林の整備、育成の施策として世界でも比較的ユニークなものであろうと思っております。
私どもは、御指摘のような広葉樹林の整備等々を含めまして、国民の貴重な、国民に対してさまざまな公益的役割を果たすための森林をきちんと整備するために、こういった造林や保育等に対する助成が現在あるということも念頭に置きながら、現在、林業は大変厳しい中で山の手入れがおざなりになっている面もございますので、さらに手を入れるためにはどうするか。
特に、こういった森林の植栽や保育に対する助成とともに、せっかく今木が育ちつつあります。林業が非常に衰退しているのは、国産材が利用されない。今一年間に二千万立方、木材が利用されておりますが、ほかに、毎年蓄積量として七千万立方ふえております。現に、昭和三十年代ごろには五千万立方、今の二倍半木材は利用されておりました。
もっともっと国産材のよさを理解していただいて、木材というのは国民の健康あるいは長生きにもいいというような研究結果もございますし、また、最近では、学校の食器から環境ホルモンが出てこれが子供に悪影響を与えるということで、これを一部、例えば喜多方市では地場産業である漆の食器に切りかえるというような動きも出ております。木材はそういった環境の問題はございません。むしろ環境保全に役立つ素材というふうに地球温暖化防止の昨年の六月の大綱でも位置づけられておりまして、そういった国産材の積極的な利用なども山を立派に育てるための大事な施策の一つであるとして、私ども力を入れてまいりたいと考えております。
○佐藤(謙)委員 今お話があったように、こうした木材使用というのは、鳥獣保護の議論とリンクをしていく問題だという認識から、これは林野庁だとか環境庁だけじゃなくて、我々自身に突きつけられている問題なんだろうというふうに考えております。
そこで、今度は、鳥獣保護といいながら、生息域を狭めていく最も大きな原因である開発行為への規制に踏み込んでいない点がこの今回の法案で欠けている点なんだろうというふうに思うわけでありますが、具体的に質問させていただきます。
大規模林道の話なんですけれども、これはかつて林野庁長官が市民グループとの円卓会議といいますか、会議に応じてくださって、結果として、山形県の朝日―小国ルートの大規模林道を中止する、こうした英断を下してくださいました。市民との連携の中から大規模林道問題が考えられた、そのスタートラインだったんだろうと思います。林野庁の外郭団体である森林開発公団、私もあちこちの林道を見ています。
一時間半ほどがたがた山道を登っていく、やっと着いたなと思ったその尾根伝いに七メートルの舗装道路がばあっと眼前に広がるときに、こんなむだ遣いをしていれば我々の年金や子や孫の将来というのが跡形もなくつぶされていく現実というのを見てきているわけでありますけれども、こうした二車線舗装道路で山岳地帯を貫く大規模林道を森林開発公団は全国に建設をしてきたわけであります。
この公団で、岩手県を走る川井住田線の横沢―荒川区間において希少猛禽類モニタリング調査を実施して、昨年八月二十七日に岩手県の川井村で行われた説明会では、少なくとも三つがいのクマタカが路線上に生息していることが公表された。そのうちの一つがいは、地元の早池峰クマタカ研究会によってこの春営巣行動が確認されているわけでありますけれども、野生鳥獣の保護という観点から考えて、当然何らかの手を打たなければならないと思います。それは森林開発公団のみならず、林野庁や環境庁にも大きな責任があるというふうに考えます。
そこで、この問題についてどう対処するのか。野生鳥獣、中でも生態系の豊かさを示すと言われるこの猛禽類をどう保護するかという一つの具体例を申し上げましたけれども、この法律が狩猟法だけではなくて保護法であるというのであれば、その証拠をこそこの事例によって明らかにしていただきたいというふうに思うのであります。
林野庁には森林開発公団をどう指導されようとするのか、また環境庁はどういうふうに対応しようとされているのか、それぞれお答えをお願いしたいと思います。
○山本(徹)政府委員 先生御指摘の公団の林道でございますけれども、これは、林業の仕事をやりやすくする、また、都市に比べて大変交通アクセスが不便でございます中山間地域の生活あるいは地場の産業等々のための道路としてこれを整備させていただいているところでございます。これを、環境との調和を図るために事前に調査を行いながら実施いたしております。先生御指摘の横沢―荒川区間でございます。これは、御指摘のとおり、クマタカの営巣が確認されております。
私どもは、こういった猛禽類を保護するための環境庁が出しておられますガイドラインに沿いまして事業を実施するとともに、事前のモニタリング調査あるいは専門家の御意見も承って、適切な事業実施を行うように公団を指導しているところでございますが、具体的な横沢―荒川区間につきましては、さらに、周辺地域の自然環境への影響というのをできるだけ小さくいたしますために、現在公団において、トンネル化の可能性等も含めましてルートの変更を検討していると承知いたしておりまして、私どもも、公団の検討に対して積極的に御相談に応じ、こういった猛禽類の保全等々の自然保護に万全を期してまいりたいと考えております。
○丸山政府委員 岩手県の大規模林道を森林開発公団が実施をしているところでございますが、現在もモニタリングを実施して、専門家の意見を聞きながら対策を講じていると聞いております。
私どもは、平成八年八月に、猛禽類の生息地周辺での開発に際して行われるべき調査あるいは保護対策のための指針を、「猛禽類保護の進め方」としてお示しをしたところでございます。閣議アセスの対象にはなっておりませんけれども、今後とも、「猛禽類保護の進め方」の考え方に沿って必要な施策が講じられるものと期待いたしております。
○佐藤(謙)委員 次に、参議院での附帯決議で、緑の国勢調査その他の自然環境に関する調査を徹底し、国全体の鳥獣の生息状況を適切に把握するという注文がついたわけでありますが、把握してどうするか、それから先が問題なんだろうと思います。
私どもが今関心を持っております愛知万博の予定地である海上の森では、先ごろオオタカの営巣が発見されました。把握した、それで、これをどうするつもりなのかを環境庁にお答えいただきたいと同時に、環境アセス法の施行に先駆けてアセスもやった、しかし、アセスが終わった後で貴重な生物がいることが把握された、こうしたときの対応をどういうふうにされるのか、環境庁からお答えをいただきたいと思います。
○丸山政府委員 愛知県の万博予定地の海上の森のオオタカにつきましては、営巣中心地を適切に保全するということが重要と考えまして、現在、「猛禽類保護の進め方」の考え方に基づきまして、愛知県その他におきまして専門家の意見を聞きながら調査の実施がされるものと聞いております。環境庁といたしましては、事業者からの要請にこたえ、必要な助言等をしてまいりたいと考えております。
○岡田政府委員 後段の御質問についてお答え申し上げます。
環境影響評価では、手続の途中で新たな事実が明らかになった場合には、基本的には次の手続の段階で、その新たな事実についても考慮した対応を行うことといたしております。したがいまして、本件につきましては、アセス手続をやり直す必要はなく、今後事業者において作成される環境影響評価書におきまして、愛知万博が今回営巣が確認されましたオオタカに与える影響への対応をも含めまして環境影響評価がなされるものと考えております。
○佐藤(謙)委員 この愛知万博の海上の森なんですけれども、地元住民及び環境保護団体では、自然保護検討委員会議の開催を求めています。これはかつて長野県でのオリンピックでとられた方策でして、今はオオタカ検討委員会というところに矮小化され、おとしめられようとしているわけです。
この長野県でのオリンピックでとられた方策、いろいろと議論はありますけれども、環境保全の点からいえば、岩菅山を競技会場から外したという点は評価されるべきだろうと思いますし、また、NGOと行政が協力できた、そうした一定の役割があったわけであります。しかし、希少植物の移植には失敗したということから、その辺については意見の分かれるところであります。
こうした教訓をも生かした上で、愛知万博での自然保護検討委員会議の開催が必要であるというふうに私自身も考えておりますけれども、これに対して環境庁はどういうふうにお考えですか。
○丸山政府委員 愛知万博につきましては、「自然の叡智」ということで、自然と共生する万博というテーマで検討が進んでいるというふうに承知いたしております。
オオタカに着目いたしました検討委員会ということで、NGOを含めた保全対策の検討の場が設置をされるというふうに承知いたしておりますけれども、さらにそれを上回る全体としての自然保護対策のあり方につきましては、むしろ愛知万博のあり方そのものでございます。これまでも検討が十分されてまいったと考えておりますけれども、今後どう対応するかにつきましては、事業者において判断をされるべきものと考えております。
○佐藤(謙)委員 かつて藤前干潟では、真鍋環境庁長官の大変な英断というものがあってその保全が図られたわけであります。それはそれですばらしいことであったけれども、環境庁長官のそうした判断で自然が守られていくということは、うれしい反面、それでいいのか、そういう一面もあります。どの方が環境庁長官であっても、やはり守るものは守っていく、そういう体制づくりに環境庁はより積極的であってほしいと思います。
そういう意味では、まさに環境をテーマにした万博が行われるこの海上の森、今回里山、里地の保全というものを前面に出した環境庁としては、ここは正念場なんだろうと思うのですね。ですから、こうした自然保護検討委員会議のような仕組みを一つでもつくって、全国にそうしたスタイル、そうした仕組みというものを広げていくことが、これは地域地域の環境保護団体と環境庁との信頼関係の回復になるんだろうと私は考えます。
次に、以前から質問をさせていただいておりました中池見の湿地について、これは環境庁長官にぜひとも現地を見ていただきたいということで、この委員会で御快諾をいただいたわけでありますけれども、その後、中池見湿地をどのように認識しておられるのか、お答えいただきたいと思います。
○真鍋国務大臣 先般の当委員会におきまして、佐藤先生から中池見の湿地の重要性をるる説かれたわけであります。私も同感の意を表明して、できるだけ早く現地を見てみたいという意思表示をいたしたわけであります。
しかしながら、現地視察は多うございまして、国会開会中でございますので、ほとんど土日しか活用できないという状態にあるわけでありまして、気持ちははやっておるわけでありますけれども、なかなかまだ実施の段階に至っていないわけであります。
この中池見の湿地の問題につきましては、休耕田を主体として湿地特有の植生があるということでありまして、この植生を何とか生かしていかなきゃならないという気持ちは今も変わっておりません。そんなことで、機会を見て早く現場を見せていただきたいと思っておる次第であります。
○佐藤(謙)委員 この中池見の湿地は、先日、御承知のように、コスタリカのサンホセで行われたラムサール条約の締約国会議で、その会議に先駆けて行われたプレ会議で大変な注目を集めたわけであります。今まで前例がないように、中池見の保全を訴える声明文が出されたというふうに聞いております。
ラムサール会議始まって以来ということでありますけれども、日本では全く注目されていないと言っても等しいわけであります。地下六十メートルのヨーグルト状の湿地が、実は五万年の泥炭層が、この地域の気候、植物の歴史を伝える可能性を持っているわけであります。地元敦賀市や福井県でもこの中池見が水田に利用されているという事実に目が行っていて、これが人類のみならず地球の歴史にとって、世界的に見ても極めて特殊な湿地であるということが世界に知れ渡っているのに、この日本がそんなすばらしい湿地というものをまだ十分に理解していないわけです。
五万年前の泥炭層の価値をどのように環境庁としては認識をして取り組もうとしておられるのか、環境庁長官の視察とは別に、環境庁としての取り組み方について御報告をお願いします。
○丸山政府委員 先月、コスタリカでの第七回のラムサール条約締約国会議におきまして、湿地登録の新たなクライテリアが決議されまして、新たな生物地理区分の観点からの基準が設けられたところでございます。
この決議などを踏まえまして、国内における基準の検討と全国の湿地の状況把握に努めて、新たな基準に対応した重要な湿地の選定を行ってまいりたいと考えておりますが、個別の湿地につきましては、その結果を見て総合的に判断することになると考えております。
中池見湿地につきましては、福井県の環境影響評価要綱に基づくアセスメントが実施され、平成八年六月に手続が終了しているということでございます。それらを見ながら、総合的に検討してまいりたいと考えております。
○佐藤(謙)委員 あと一、二問になりますが、鳥獣保護法の歴史をひもときますと、参議院でも議論があったように、狩猟法がその源であるということであります。それが幾つかの改正を経て今日に来たわけですけれども、特に昭和三十八年と五十三年に改正があったわけでありますけれども、そこでいろいろな議論がなされました。中長期的な鳥獣保護に関するかなり真剣な議論があったというふうに聞いておりますけれども、この三十八年と五十三年の改正ではどんな議論があって、そのうち今度の改正には一体何が実現したのか。
実を言いますと、ここでかなり真剣な議論があったにもかかわらず、今度の改正はほとんどそうしたものがまたまた先送りになっている。昭和三十八年からということになれば、もう三十年以上、四十年近くの先送りということになるわけでありますから、何が実現したのかをお答えいただきたいと思います。
○丸山政府委員 昭和三十八年、狩猟法が改正され鳥獣保護及狩猟法となりました際には、目的規定の設置、都道府県の鳥獣保護事業計画の実施、休猟区の新設、鳥獣保護員の設置、都道府県鳥獣審議会の設置が定められておるところでございます。
五十三年の改正におきましては、狩猟免許試験制度の導入、猟区の設定の範囲拡大、登録制度の新設といったものがされているところでございます。
○佐藤(謙)委員 多分、私の質問の仕方が悪かったのだと思います。三十八年の改正、五十三年の改正で何が実現したかということは、私も資料でよく知っているところでございます。つまり、そこでの議論で先送りにされた問題が一体何であるかということをお答えいただきたいのと、その問題の中で、今度の改正で一体何が実現したかについてお答えをいただきたいと思います。
○丸山政府委員 野生鳥獣が自然資源の一部として持続可能に存続するということで、狩猟圧によるコントロールに限らず、鳥獣保護という考え方で事業を進めるということが流れとして入っておりますが、その中で、生態、生息数を調査して、その結果に基づいて生態系とのあつれきや人とのあつれきを防止するような、いわば科学的な保護管理、ワイルドライフ・マネジメントと言っておりますが、そういったような考え方が今回導入をされたところでございます。
それから、従来から議論があって検討課題とされているものの一つには、いわば猟区のあり方の仕組みがございます。これは、現在は禁猟区や市街地等におきまして狩猟を制限いたしておりますけれども、その考え方といいますのを逆転して、全国の中でいわば可猟区を設定して、それ以外の地域については禁猟にしていわば鳥獣の保護に貢献をしたらいかがか、こういう論議でございます。
この全国禁猟区制度につきましては、一つは、人とのあつれきとのかかわりで問題になっている野生鳥獣というのは比較的全国に均一的に存在しているということで、その問題をどう扱っていくか。
それからまた、狩猟を行う場所、猟区につきましては、現在十三万ヘクタールほどの猟区がございますけれども、そこで狩猟が可能ないわば人員、定員といいますのは千五百名程度で、なおかつ稼働は三十日程度でございます。二十二万人の狩猟者の方がおられます中で、現在の猟区といいますのは、千五百人くらいのキャパシティー、しかも一カ月分ぐらいしかない。したがって、それを、ほかの地域は禁猟にして、その猟区だけで可猟にするということはなかなか非現実的でございます。
そういったような議論は昭和五十三年からございまして、現在でも御論議をされている向きがあることは承知をいたしております。
○佐藤(謙)委員 何が非現実的なんですか。
○丸山政府委員 我が国の場合に、野生鳥獣というのが比較的農林業を営む地域で多く生息しているということで、人とのあつれきがどうしても出てくるということが広域的に存在するという点と、それから、可猟区、猟区以外を狩猟禁止にするということにつきましては、いろいろな試みはございますけれども、現在、いわば狩猟を行う区域として設定しております区域が非常に限定的、全国的に十三万ヘクタール程度、三十六カ所でございまして、そこで狩猟を行っていただくとすると、千五百人分ぐらいのスペースしかない。二十二万人の狩猟者がおられまして、その中で千五百人分ぐらいしかないということで、その猟区の制度を広げていくということが一つのテーマでございますけれども、いささか時間がかかるということで、必ずしも現実的なテーマになっておらないということでございます。
○佐藤(謙)委員 可猟区、このネガとポジを逆転すると、そこの地主さんに一々猟をしていいかどうかを確認していく作業をすると、ほとんどがだめだと断られてしまうというんですね。それはどういうふうにお考えですか。
つまり、やはり我々は、自分たちの安全というものを一番中心に置いていこう、今、河川敷でもどこでも、ちょっとロマンチックなムードに浸ろうとして川沿いを歩いていくと、突然アシの茂みから銃弾が飛んでくるような、そんな危ないところで子供たちが遊んでいる。農林業の被害ばかりが言い立てられて、私たち都市に住む者あるいは地方に住む者、健康で安全な生活が本当に確保されているんだろうか、そうした原点に立って考えれば、息は長いかもしれないけれども、私は、この鳥獣保護法というものが、鳥獣保護をまさにベースにした法律に変わっていかなければいけないというふうに考えています。
先ほど、ワイルドライフ・マネジメント、ドイツからそうしたものを輸入している、そういう説明が得々とありますけれども、もはや西洋的な自然を管理していこうとする、そうした時代、その破綻が言われて久しいわけであります。新しい、日本の自然と共生できる、本当の意味での鳥獣保護法というものをつくっていこうじゃないですか。
私は、そういう意味では、今欠けている議論の中で、鳥獣保護法というものを、新たにこの附則の見直し条項では、生物多様性条約その他の国際条約との整合性を図りつつ、未解決である昭和三十八年改正当時の課題も含め、野性生物の種及び生息環境に関する法制度全体の見直しを行うことを提案したいというふうに思います。
三十八年、五十三年の一体何が今度の法改正につながったのかというと、もうほとんどその実態というものが先送りされているという現実を我々は知らされるだけであります。
そうした自然管理型西洋文明を取り入れる愚かさを、ある市民団体の方がきのうファクスで送ってくださいました。
今、兵庫で、野生動物のえさ畑を奥山に作りました。畑といい、これまでして来たえさになる広葉樹の奥山植林といい、ずり落ちそうな急斜面を登りつめての作業は、気の遠くなるような三Kどころかもう大変な作業でした。奥地に森を造る。こんなもの人間の力でできるものではないとつくづく感じます。
きょう、急斜面のところどころに、すこしずつ均等にばらまかれたシカのふんを見て、感動しました。かれらはこうやって、森中に均等に肥料をばらまいています。ただで森を造ってきてくれた人類の大恩人を悪者呼ばわりしてこの法で殺し尽くそうとするなんて、人間のはしたなさに恥ずかしくなります。
今残っている彼らの生息地を厳重に手付かずで保全すること。国を挙げて広葉樹林の復元運動を起こし、動物に管理してもらうこと。これしか被害問題解決の道はありません。
私は、これがすべてとは思いません。しかし、そうした市民の思いというものをどうかどうか心の中にしまって、環境庁は、この鳥獣保護法が将来の我々にとって一体どういう意味を持つのか、自分たちのやりやすい、しめた、これは都道府県や市町村に丸投げしてしまえ、そんなものではなくて、環境庁の省昇格の一番大切なときに、どうかこれをすばらしい宝物にしていけるようにつなげていっていただきたいと思います。
これで質問を終わります。
○北橋委員長 午後一時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。
午後零時二十五分休憩
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