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1999:「第8次鳥獣保護事業計画の基準の改定素案」に対する意見書


1999年9月21日  

環境庁自然保護局野生生物課
鳥獣保護業務室御中


「第8次鳥獣保護事業計画の基準の改定素案」に対する意見書

 

野生生物保護法制定をめざす全国ネットワーク


 当ネットワークは、全国各地で野生生物保護の問題に関心を持ち活動している多数の団体・個人が、問題解決へ向けて広く協力する組織です。今回の鳥獣保護法"改正"によって全国的に発生する問題を監視し、その結果をふまえて鳥獣保護法抜本改正を含む野生生物保護の法制度に関する提言を行うことを目的としています。
 
 第1鳥獣保護法改正後の経過に関する当ネットワークの認識と整理
 
 今回の鳥獣保護法改正に対しては、多くのNGOが多岐に渡る問題点を指摘し、これを廃案にするよう求めた。この声は国会における審議に反映され、国会議員たちからも改正案に疑問が投げかけられ、一時は否決の可能性も高まっていた。それにもかかわらず、改正案自体は可決をみたが、NGOの指摘、国会審議における議論は、今後の課題として、衆参それぞれの附帯決議の形で遺された。また、それら課題の実現は、法案の修正(附則の追加)に基づく、改正法施行後3年を目処とする法改正を含む制度見直しによって担保された。つまり、政府は、国会が掲げたもはや無期延期が許されない課題の実現に向けて、改正法の施行運用で可能な限りのことを実行し、その成果をモニタリングして公表し、成果不十分なら3年後に法改正を含む抜本改革を余儀なくされるということである。
 
 附帯決議の内容
*()内の記載は、衆議院、参議院附帯決議の条項の番号を示す。
ア.集中対策期間を設けての鳥獣の生息状況把握(衆・一項、参・一項)、
イ.鳥獣保護区の適切な設定等を通じた野生鳥獣の生息しやすい環境整備(衆・三項、参・二項)、
ウ.野生鳥獣の移動ができる回廊づくりの積極的検討(衆・三項、参・二項)、
エ.防護柵の整備等の被害防除対策の推進(衆・三項、参・二項)、
オ.被害防除に係る対策技術の開発及び普及(衆・三項、参・二項)、
カ.都道府県における早急な調査研究体制の整備(衆・五項)、
キ.都道府県における野生鳥獣保護の専門的な知識・経験を有する人材の確保及び育成(衆・五項、参・二項)、
ク.関係地方公共団体間の調整能力の向上(衆・五項)、
ケ.生息地の所有者、農林業や狩猟、自然保護等関係者などの協力、連携を得るためのネットワークの構築(衆・五項)、
コ.都道府県を越えた広域かつ統一的な鳥獣保護管理を図るための、関係都道府県に対する、積極的な助言、指導及び財政的支援(衆・五項)、
サ.鳥獣保護員の役割強化、大幅増員及び人材育成(衆・六項)、
シ.狩猟者のモラル向上(衆・七項、参・三項)、
ス.鉛弾の規制を含む適切な措置(衆・七項、参・三項)、
セ.関係地方公共団体と協力しての狩猟、駆除の対象となったシカ等の死骸の適切な処理体制の整備(衆・七項、参・三項)、
ソ.関係地方公共団体における鳥獣保護行制の体制強化のため必要な支援(衆・八項、参・六項)、
タ.野生鳥獣の保護を一層明確にした法制度の検討(衆・一〇項、参・八項)、
チ.鳥獣による農林業者の被害救済措置(衆・一〇項、参・八項)、
ツ.公的機関が主導する捕獲体制(衆・一〇項、参・八項)、
テ.野生鳥獣の保護管理のための国と地方の責務の一層の明確化のための具体策(衆・一〇項、参・八項)
 
 附帯決議に遺された課題に則し、改正法施行の準備として、あるいはそれと平行して準備が進められなければならない事項は次のように整理される。
1)新しい制度=特定鳥獣保護管理計画(以下「特定計画」ともいう)が、個体数調整を偏重し結果的に過剰捕獲をもたらさないための仕組み作り
2)捕獲許可を含む鳥獣行政全体の運用の改善
3)鳥獣行政の基盤整備(調査研究体制の整備、専門的な知識・経験を有する人材の確保及び育成、鳥獣保護のため生息地の所有者等の協力を得るためのネットワークの構築、関係地方公共団体における鳥獣保護行政の体制強化のため必要な支援等)
4)法整備が必要でかつ今回の法改正に盛り込まれなかった事項(被害補償制度等)の速やかな検討
 第2今回の意見聴取、改定素案全般に関わる問題点とそれに対する意見
 
1.今回意見聴取の対象とされたのは、鳥獣保護事業計画の基準、しかもそこに網羅される事項のほんの一部についてにしか過ぎない。しかし、他にも意見を聴くべき重要な点がある。すなわち、
 第1に、捕獲許可権限の国・都道府県間の分配(告示において規定される予定)についてである。この問題は、「2)捕獲許可を含む鳥獣行政全体の運用の改善」という課題における最大のポイントの一つである。
 環境庁レッドリストの「絶滅危惧I・II類」、「準絶滅危惧種」及び「絶滅のおそれのある地域個体群」は、いずれも、一定の科学的評価に基づき、国レベルでの保護の必要性が明らかになっている種・個体群といえる。そうである以上、その捕獲許可は、国が一元的な科学的評価及び計画の下に一括管理されるべきである。
また、「4)法整備が必要でかつ今回の法改正に盛り込まれなかった事項(被害補償制度等)の速やかな検討」についても今回は何ら意見聴取の対象とされていない。
 
 第2に、鳥獣保護事業計画の策定手続等の運用についての見直しである。新しい特定計画については、公聴会の開催等、知見の集約と市民参加を保障する手続が法律上定められたが、鳥獣保護事業計画についても、上記の観点を取り入れて策定手続等の運用を改善しなければならない。そのためには、鳥獣保護事業計画の策定とモニタリング(後述する捕獲許可運用の年次のチェックなど)のための検討会を設置し、自然保護団体をメンバーに加えることや、事業計画の素案について広くパブリック・コメントを求めることなどが必要である。
 
2.鳥獣保護事業計画の内容に関わる課題のうち、先送りにされた課題が非常に多い。
すなわち、第1で整理した「2)捕獲許可を含む鳥獣行政全体の運用の改善」、「3)鳥獣行政の基盤整備」に含まれる課題の多くは、(予算措置は別途必要であるとしても、)鳥獣保護事業計画の基準の中に書き込まれるべき事項であるが、そのほとんどが、現在検討されている第8次計画改定基準から除外されている。
 
 具体的に、改定素案のアンダーラインの引かれていない部分(「今回ご意見を頂きたいと考えている箇所」にあたらない部分)を見る。
 例えば、第2の鳥獣保護区の設定等については、生息地整備の核をなすものであり、8次計画改定において先延ばしにされた点は、問題である。特に、特定計画において個体数調整のみが先行的に強化される懸念があり、環境庁が保護管理の3本柱とする生息地整備、被害防除、個体数調整のバランスが崩れた形で制度が動くおそれがある。第3の人工増殖、放鳥獣の問題は、移入種問題等、生物多様性保全の関連からそのあり方を大きく問い直さなければならない問題である。第5の鳥獣の生息状況の調査や第8の鳥獣保護事業の実施体制の整備は、捕獲許可の運用を初め、鳥獣保護のための施策全般の基礎となるべき事項である。これらの点に関する見直し抜きに捕獲許可基準の改善のみを議論しても実質的な効果は期待薄である。鳥獣保護法改正が審議された先の国会では、鳥獣保護が国民全体の関心事であることを改めて明らかにした。農林業従事者及び狩猟者の減少を踏まえて、鳥獣を国民共有の財産として、また地域自然環境の重要な構成要素として明確に位置づけ、保護のインセンティブを強化していくことが急務である。その意味で、第7の鳥獣保護事業の啓発については大幅な改善が急がれる。
 
3.さらに、これらの課題が平成14年4月施行予定の第9次計画以降の課題として先送りされてしまうと、改正法施行後3年目の平成14年9月目処に行われる法改正含みの制度見直しを行おうとする際、第9次計画施行からわずか5ヶ月間しか経過していないこととなり、基盤整備を初め各種施策の改善の状況をふまえての制度運用の評価を行うことは不可能となる。つまり、3年後見直しは骨抜きにされてしまうのであり、附則第2条の趣旨を大きく損なうことになってしまう。
 
4.従って、当ネットワークとしては、次の点を求める。
(1)環境庁レッドリストの「絶滅危惧I・II類」、「準絶滅危惧種」及び「絶滅のおそれのある地域個体群」の捕獲許可は、一元的な科学的評価及び計画の下に国に分配すること。
(2)今回の法改正に盛り込まれなかった事項(野生鳥獣保護を一層明確にした法制度の検討、被害補償制度等)の実現に向けて速やかな検討を開始するための具体的手順を早急に公表し、市民の意見を聴くこと。
(3)鳥獣保護事業計画の策定とモニタリングについて、知見の集約と市民参加を保障する観点から現在の手続の運用の見直しを早急に行うこと。事業計画のモニタリングについては9次計画を待たずに実施できるようにし、策定手続の運用については9次計画策定において改善策が実施できるようにすること。
(4)鳥獣保護事業計画の積み残された課題(改定素案の第2,3,5,7,8の項目等)につき早急に全面的見直しを行い、平成14年4月施行の第9次計画を待たず、改定された計画ができるだけ速やかにに実施されるようにすること。
 
 第3改定素案においてアンダーラインが引かれた部分(「今回ご意見を頂きたいと考えている
箇所」)に対する意見
 
1「第4有害鳥獣の駆除に関する事項」について
 
●有害鳥獣駆除の基本的考え方(第4の1)
 人と野生鳥獣との共存を図る上での基本原則について触れられていない点がある(地域個体群の長期的・安定的存続(99.12.14自然環境保全審議会答申))。有害鳥獣駆除の対象とする「被害等」に、植生の衰退や在来種の圧迫を含めることは問題である。これらは、鳥獣を含む生態系内でその構成員の相互作用として現れる現象である。そもそも何らかの対策を講ずべきか、その必要があるとしていかなる対策が適切かの判断は単純ではない。一部の現象(例えば人身への危害)をとらえてそれを被害と断じ、鳥獣を加害者として駆除するという有害鳥獣駆除の仕組みとは本質的になじまないものである。
 また、最近の大分市高崎山の事件に象徴されるように、有害鳥獣駆除の運用には大きな問題がある。有害鳥獣駆除の違法・不適切な運用を防止するための十分な方策が講じられなければならない。
(修正案)
第1段落から次の部分を削除する。
「又は植生の衰退や在来種の圧迫等の自然生態系の攪乱」
 
(修正案)
第1段落の末尾に続き、以下の部分を挿入する。
「有害鳥獣の駆除は、当該鳥獣の地域個体群が長期的に安定して存続することを妨げるものであってはならない。」
 
(修正案)
第3段落の後に、次の段落を挿入する。
「有害鳥獣駆除の運用の適正を図るため、都道府県自然環境保全審議会内に有害鳥獣駆除の運用をチェックする専門部会を設置する。この専門部会の委員には専門家のほか、自然保護団体、狩猟団体等関係者を含めることとする。専門部会は、当該年度終了後できるだけ速やかに開催され、同年度における駆除の運用の適正さにつき検討することとする。専門部会は一般に公開する他、部会審議と併行して市民の意見(パブリック・コメント)を聴取する機会を設けることとする。都道府県知事は、専門部会の検討結果を遅滞なく環境庁長官へ報告することとする。なお、そもそも鳥獣保護事業計画の策定とモニタリングについて、そのメンバーに自然保護団体を加えた常設の検討会を設置し、上記有害鳥獣駆除の運用チェックもその検討事項とする。」
 
●許可の考え方(第4の2の(1)の1))
素案では、有害鳥獣駆除を慎重に取り扱うべき場合について、被害発生が希な鳥獣の類型と、保護上の要請が高い鳥獣の類型について、それぞれ同一の要件を定めている。しかし、両者において有害鳥獣駆除を慎重に扱うべき理由は異なる。つまり、前者については、もっぱら被害発生の根拠が厳しく問われるのに対し、後者ではそれに加えて駆除を行うこと自体の高度の必要性、鳥獣保護上の特段の配慮が要求される。従って、有害鳥獣駆除が許される要件は、それぞれの類型について区別して記述されなければならない。
 予察駆除は、駆除数の設定根拠・手続について明確な基準を定めることが難しいため、鳥獣の過剰捕獲のおそれが強い。また、予察駆除を許せば、年度前(初め)の1回の許可があれば、その後は枠の範囲内で駆除が自由に行えるため、捕獲許可制度による過剰捕獲の抑止力は弱まる。このような捕獲許可の運用がなされてきたことは、捕獲許可制度の運用上大きな問題であった。さらに、上記のような運用(年度初めの1回の許可によって、予察枠内の駆除が市町村に委ねられる)は、半ば捕獲許可権限を委譲してしまっているようなものであって、都道府県はその条例に定めるところによってのみ、市町村に対して捕獲許可権限を委譲できるとする改正法の趣旨に反する。
従って、今後、予察駆除は認められるべきでない。
(修正案)
第1段落「被害等が生じているか又はそのおそれがあり」の部分を、「被害等が生じており」と修正する。
 
第2段落を、次の部分と差し替える。
「狩猟鳥獣等以外の被害発生が希な鳥獣の類型(狩猟鳥獣、カワウ、ダイサギ、コサギ、トビ、ドバト、タイワンシロガシラ、ウソ、オナガ、サル、、マングース又はノヤギ以外の鳥獣)について有害鳥獣駆除を許可するのは、特段の被害発生の根拠が具体的に認められる場合のみとする。」
 
第3段落の「生息数が少ないなど保護上の要請が高い鳥獣の種又は地域個体群に係る駆除は特に慎重に取り扱うこととし」を次の部分と差し替える。
「生息数が少ないなど保護上の要請が高い鳥獣の種又は地域個体群に係る駆除は、駆除によって被害低減の効果が相当に見込まれること、当該鳥獣個体群の安定的存続に影響がないこと、それ以外に取るべき手段が存在しないことの全てが十分な根拠をもって認められる場合のみとし」
 
第4段落は次の部分と差し換える。
「予察駆除は、鳥獣の過剰捕獲をもたらすおそれが強い等、捕獲許可の運用のあり方として不適切であるので、行わないこととする。」
 
第5段落は削除する。
 
●許可権限の市町村長への委譲(第4の2の(1)の2))
都道府県知事の捕獲許可事務を市町村長へ委譲するにあたっては、それが地域個体群の安定して存続可能な個体数の維持(99.12.14審議会答申)に悪影響を与えるものであってはならない。
その観点から、委譲に当たって特に慎重に取り扱うべき場合をある程度明確に示す必要がある。
(修正案)
第1段落に続き、次の部分を加える。
「都道府県知事は、1)で挙げた有害鳥獣駆除を慎重に取り扱うべき鳥獣の種又は個体群(被害等が生じることが希であり従来の許可実績がごく僅少であるもの及び個体数が少ないなど保護上の要請が高いもの)及び特定鳥獣保護管理計画対象鳥獣個体群を市町村長へ委譲するに当たっては、特に慎重に取り扱うこととする。」
 
●捕獲実施に当たっての安全の確保(第4、2、(1)、3))
今日においては、捕獲が実施される場所が地域の生活者やハイカー等一般国民の活動空間と重なり合うことが非常に多く、特に地域の生活者(関係住民等)は捕獲の実施に当たって重大な利害を持つ(危険を負う)ことになる。そこで、これらの者に対する万全の配慮が必要となる。
(修正案)
「捕獲の実施に当たっては」以下の部分を次のとおり修正する。
「捕獲の実施に当たっては、予定する時期、場所、員数、方法、駆除対象等を事前に関係地域住民等へ公開し、それらの者から実施の是非、時期、場所等について要望が出た場合はそれを最大限に尊重して行うこととする。」
 
●捕獲物の処理等(第4の2の(1)の4))
適法に捕獲された鳥獣の流通においては、それが過剰な捕獲・密猟を助長するおそれがないようにしなければならない。それにもかかわらず、現在この点に関する包括的な管理の仕組みが存在しない。一方、動物実験のような、学術研究目的での鳥獣の利用に関してさえ、十分な国民的合意が得られていないばかりか、過剰な捕獲・密猟を助長する捕獲物の処理類型が存在する(例・最近発覚した高崎山におけるサルの例)。上記のような仕組みがない以上、現時点では学術研究目的も含め、捕獲物の積極的利用(譲渡・引き渡しを含む)については慎重な態度をとるべきである。
 また、特にクマ(ツキノワグマ、ヒグマを含む)のたんのうについては、その需要が誘発する過剰捕獲・密猟が絶滅のおそれを招いていることが国際的に指摘されているが(ワシントン条約第10回締約国会議決議10.8)、クマは我が国では種の保存法における取引規制の対象から除外されている。素案においては目印標を装着することが指摘されているが、その実効性を担保する仕組みが法定されているわけではない。また、たんのうの流通に関する対応は一切想定されておらず、野放しである。クマの身体部分を含む個体等については、種の保存法の適用がぜひとも必要と考えるが、現行(改正後)鳥獣保護法に基づく処理の場面においては、当面、流通を許さないこととしておかなければならない。
 以上より、学術研究目的といえど、生体については原則積極利用せず、死体についても有害物質による汚染状況を把握するための調査等の生物多様性保全に関する場合に限定されるべきである。
 
(修正案)
第1段落の「捕獲の目的に照らして」から第2段落の末尾「明確にするものとする。」までの部分を、以下を次のとおり修正する。
「捕獲の目的に照らして適正に処分することとし、第三者に譲渡し、引渡すことのないよう指導しなければならない。学術研究目的での捕獲物の譲渡・引渡については、生物多様性保全に直接関わる学術研究目的であって、かつ生体を対象としない場合に限って行うよう、指導することとする。」
 
第3段落を次の部分と差し換える。
「なお、捕獲に当たって半矢等の損傷を受けた個体が生じた場合は、当該個体による人身への危害の防止、鉛中毒事故等の防止および当該個体の無用な苦痛を防ぐために、当該個体の回収に努めるよう、また捕獲個体を致死させる場合は、できる限り苦痛を与えない方法によるよう指導することとする。」
 
●捕獲情報の収集(第4の2の(1)の5))
捕獲の実態については、最近報道された大分市高崎山の例のように虚偽報告(さらには無許可捕獲も行っていた)などの危険がつとに指摘されるところであり、都道府県による厳格な情報管理が必要である。
(修正案)
第1段落「サンプルを添付させる等して、」と「捕獲実施者に対し求めること」との間に、次の部分を挿入する。
「捕獲日から起算して2日以内にされるよう求めること。」
 
(修正案)
「なお、必要に応じ捕獲の実施に立ち会う」との部分を、「なお、できるだけ捕獲の実施に立ち会う」
と修正する。
 
●許可対象者(第4の2の(2)のア)
有害鳥獣駆除の目的は、農林水産被害等の一般的防止にあり、特定個人の利益を図るものではない。従って、被害者個人やその者から依頼された者に許可申請を求めることは制度の趣旨に反する疑いがある。
(修正案)
第1段落を次のとおり修正する。
「許可申請者は、被害発生地の属する市町村の関係部局とする。」
第3段落の末尾に次の部分を加えること。
「近接した区域・時期において発生したと認められる被害に対する許可申請が複数ある場合は、一つの許可のみを行う。特に、申請の駆除区域・時期に照らして、共同駆除の方法により単一の捕獲許可で対処し得ると考えられるにもかかわらず、単独駆除の方法での申請が複数なされている場合の許可にあたっては慎重に対処することとする。」
 
●鳥獣の種類・員数(「員数」は用語として不適切なので、「数」と改められるべきだろう。)(第4の2の(2)のイ)
(修正案)
1)を次の部分と差し換える。
「駆除対象鳥獣の種類は、現に被害等を生じさせた種であること。」
 
2)の建築物の汚染を理由とする巣の除去については、巣があること自体が建物の美観を損ねる「汚染」と評価されてしまうおそれがある。
(修正案)
2)に「建築物等の汚染等を防止するため」とあるを、「建築物等の著しい汚染等を防止するため」と修正する。
 
●期間(第4の2の(2)のウ)
(修正案)
1)の「被害等の発生が予察される場合、」の部分を削除する。
 
2)の末尾に次の点を加える。
「駆除対象の鳥獣についても、その繁殖に著しい影響を与え、その結果地域個体群の安定した存続を危うくさせるおそれがある期間は避けるよう考慮すること。」
 
2)の部分は削除する。
 
●区域(第4の2の(2)のエ)
鳥獣保護区や休猟区における駆除は、それら区域が本来鳥獣の保護繁殖を図るための区域であることから、慎重に行われなければならない。しかし、それらに隣接する区域においても、故意の追いだし又は偶然に保護区から出た鳥獣が捕獲される危険がある。
(修正案)
3)の「鳥獣保護区又は休猟区における駆除は」とある部分を、「鳥獣保護区又は休猟区及びそれらに隣接する区域における駆除は」と修正する。
 
●方法(第4の2の(2)のオ)
(修正案)
第1段落の「原則として」と「法第15条」との間に、「当該種のみを特定して捕獲する方法以外の方法及び」を挿入する。
 
第3段落の「なお、」と「水辺地のうち」の間に次の部分を挿入する。
「水質等の生活環境の改善を図るため、また野生鳥類の鉛中毒を防止するために、水辺地における鉛散弾及び鉛空気銃弾の使用は控えるよう協力を求めるとともに、」
 
2「第6特定鳥獣保護管理計画の樹立に関する事項」について
 
●保護管理の目標(第6の5)
保護管理目標としての「農林業被害の程度」については、現状では農林業被害の量及び質を客観的に把握するための基準も体制も整備されていないため、この点の今後の整備が急務である。(第2,3段落関係)
(修正案)
第3段落の末尾に続き、次の部分を加える。
「「農林業被害の程度」を目標とする場合は、被害の算定基準、及び効果測定の基準を策定し、それらの情報を公開することとする。」
 
(修正案)
第2段落7行目「大雪等のリスク」を「大雪等の環境変動のリスク」と修正する。
 
(修正案)
第2段落7行目「地域個体群が十分に存続できる」を「地域個体群が安定的に存続できる」と修正する。
 
 特定計画における目標設定は十分な科学的裏付けを要し、最大限の科学的知見・関連情報の集約が要求される。その点からすると、目標設定には専門家のみならず自然保護関係者からの参考情報等の提供が有益である。参考情報等となると、当該都道府県内以外の者が有していることも多いであろう。また、市民参加の観点から見ると、鳥獣が「広く現在及び将来の世代の人間がその恵沢を享受すると共に、長く後世に伝えて行くべき国民共有の財産である」(98.12.14自然環境保全審議会答申)以上、広く全国の市民の意見をきくべきである。(第4段落関係)
(修正案)
第4段落「専門家や地域の幅広い関係者の合意形成を図りつつ」を「専門家の意見を基盤とする一方、当該都道府県内外の自然保護団体等幅広い関係者の合意形成を図りつつ」と修正する。
 
●個体数管理(第6の6の(1))
捕獲数の算出が十分な科学的根拠に基づくものであるか否かを、合意形成に参加する者らが有効に検証できるよう、その根拠を明示しておく必要がある。
(修正案)
第1段落6行目「年間実施計画の策定を行うこととする。」に続き、次の部分を挿入する。
「この年間実施計画においては、捕獲数の算定根拠を明示することとする。」
 
 特定計画における目標頭数を計画通りに実施、とりわけ過剰捕獲を防止するためには、狩猟・捕獲(とりわけ私的に行われる狩猟)の実績を当該年度内に逐次把握しつつ、年度終了時に目標頭数と整合するように調整しなければならない。
(修正案)
第1段落末尾に続き、次の部分を挿入する。
「狩猟者、捕獲者に対し、狩猟行為・捕獲行為毎に、狩猟・捕獲データを提出させることとする。」
 
●生息環境管理(第6の6の(1))
野生生物の生息地内保全は、自然界の法則に則り、生態的・進化的プロセスを保存しつつ行われなければならない。これが生物多様性保全の基本である。この観点からすれば、素案の第1段落に記述されている、自然に対する積極的干渉は、一定の条件の下に補完的に行われたり、強い人為的影響下にあって荒廃が著しい区域等において例外的に行われるべきものである。
むしろ、第2段落に記述されている施策こそ原則というべきであろう。
(修正案)
第1段落2行目の「特に重要な生息地については、」に続き、第2段落の「極力鳥獣保護区又は休猟区に設定し」以下の部分を挿入し、以上の部分を第1段落とする。
 
第1段落2行目の「生息に適する森林・草地」以下の部分の冒頭に「相当程度の人的影響が及んでおりかつ現在は荒廃してしまっている区域で、野生鳥獣の生息地として特に整備を図る必要が認められる場合は、」との記述をを挿入し、以上の部分を第2段落とする。
 
●公聴会等の開催(第6の8の(3))
(修正案)
3行目の「選定されるよう留意する。」に続き、「公聴会は一般人に対し公開して行う。」を挿入する。
4行目の「また、必要に応じて、」に続き、「国民の関心に広く応えるため」を挿入する。
 
3「第9その他鳥獣保護事業の実施のため必要な事項」について
 
●学術研究を目的とする場合(第9の1の(1)の1)のア)
(修正案)
末尾に次の部分を加える。
「電波発信機装着を直接間接の目的とする捕獲は、捕殺を直接の目的とするものであってはならないよう指導することとする。」
 
●特定鳥獣保護管理計画に基づく数の調整を目的とする場合(第9の1の(1)の1)のイ)
 
(修正案)
末尾に次の部分を加える。「特定計画を策定すべき種・個体群については「特定鳥獣保護管理計画に定むる所に依り特定鳥獣の数を調整する為」以外の事由に基づく捕獲は許可できないこととする。」
 
●その他特別な事由を目的とする場合(第9の1の(1)の1)のイ)
 愛玩飼養は、素案自体の記述にもあるとおり、自然保護、生物多様性保全にもとるものであり、乱獲・密猟を助長し、このような目的での飼養の存在それ自体が違法な飼養との区別を困難にし、違法行為の摘発を困難にしている。また、飼育繁殖下の野生動物の遺伝的劣化防止のため野生の個体を捕獲することは、ワシントン条約においてもランチングとして議論されている。そこで前提となっているのは、こうした捕獲を許容するためには、全体的なランチングの計画、その科学的根拠、ランチングに名を借りた野生からの過剰捕獲や違法取引を防止するための措置等である。
日本国内ではそのような緻密な議論などなく、ランチングの実施をチェックするためのシステムもない。
(修正案)
第2段落を次の部分と差し換える。
「愛玩飼養は、自然保護、生物多様性保全にもとるものであり、乱獲・密猟を助長し、このような目的での飼養の存在それ自体が違法な飼養との区別を困難にし、違法行為の摘発を困難にしているため、愛がん飼養目的の許可は今後行わないこととする。
また、養殖鳥遺伝的劣化防止目的の鳥類の捕獲については、捕獲頭数設定等についての科学的知見の集積が十分でないこと等から、当面許可しないこととす
る。」
 
●許可権限の市町村長への委譲(第9の1の(1)の2))
学術研究目的での捕獲においては、捕獲許可権者が「当該研究目的を達成するために不可欠な必要最小限の捕獲」か否か及び「適正な研究計画」か否かという学術的専門的判断を要求され、適正かつ迅速に対応しようとすればかなりの負担となる。
 また、特定計画の個体数調整を目的とした捕獲については、都道府県レベルでの一貫した計画的実施が必要であり、市町村へ捕獲許可権限を分配してしまうと、計画の目標頭数に向けての捕獲のコントロールに支障を来す。すなわち、特定計画に基づく個体数調整は狩猟と捕獲許可を併用して達成することとされているため、捕獲許可は当該年度の狩猟実績を逐次モニターしながら行わざるを得ない。ところが、狩猟に関する情報は都道府県が管理しつつ、捕獲許可を市町村に委譲してしまうと状況対応的に許可を運用することが不可能となる。また、都道府県に捕獲許可権限を委譲してしまうと、あらかじめ想定した市町村毎の目標頭数以上の捕獲が出てしまったような場合、その分を他の市町村での捕獲から減じるという状況対応的な扱いも不可能になってしまう。
 
以上より、これらの事由に基づく捕獲許可を市町村が行うことは大きな困難、過大な負担を伴うのであって、市町村への委譲に当たっては特に慎重に扱われるべきである。
 
(修正案)
第1段落と以下の部分を差し換える。
「この点、1)のアについては、捕獲許可権者が「当該研究目的を達成するために不可欠な必要最小限の捕獲」か否か及び「適正な研究計画」か否かという学術的専門的判断を要求され、また、1)のイについては、都道府県レベルでの一貫した計画的実施が必要であることから、これらの事由に基づく捕獲許可の市町村への委譲に当たっては特に慎重に扱うこととする。」
 
●捕獲実施に当たっての安全の確保(第9の1の(1)の2))
今日においては、捕獲が実施される場所が地域の生活者やハイカー等一般国民の活動空間と重なり合うことが非常に多く、特に地域の生活者(関係住民等)は捕獲の実施に当たって重大な利害を持つ(危険を負う)ことになる。そこで、これらの者に対する万全の配慮が必要となる。
(修正案)
「なお、特定鳥獣保護管理計画に基づく捕獲の実施に当たっては」以下の部分を次のとおり修正する。
「なお、特定鳥獣保護管理計画に基づく捕獲の実施に当たっては、予定する時期、場所、員数、方法、捕獲対象等を事前に関係地域住民等へ公開し、それらの者から実施の是非、時期、場所等について要望が出た場合はそれを最大限に尊重して行うものとする。」
 
●捕獲物の処理等(第9の1の(1)の4))
適法に捕獲された鳥獣の流通においては、それが過剰な捕獲・密猟を助長するおそれがないようにしなければならない。しかし、現在この点に関する包括的な管理の仕組みが存在しない。ところが、動物実験のような、学術研究目的での鳥獣の利用に関してさえ、十分な国民的合意が得られていないばかりか、過剰な捕獲・密猟を助長する捕獲物の処理類型がある(例・最近発覚した高崎山におけるサルの例)。上記のような仕組みがない以上、現時点では学術研究目的も含め、捕獲物の積極的利用(譲渡・引き渡しを含む)については慎重な態度をとるべきである。
また、特にクマ(ツキノワグマ、ヒグマを含む)のたんのうについては、その需要が誘発する過剰捕獲・密猟が絶滅のおそれを招いていることが国際的に指摘されているが(ワシントン条約第10回締約国会議決議10.8)、クマは我が国では種の保存法における取引規制の対象から除外されている。素案においては目印標を装着することが指摘されているが、その実効性を担保する仕組みが法定されているわけではない。また、たんのうの流通に関する対応は一切想定されておらず、野放しである。クマの身体部分を含む個体等については、種の保存法の適用がぜひとも必要と考えるが、現行(改正後)鳥獣保護法に基づく処理の場面においては、当面、流通を許さないこととしておかなければならない。
 以上より、学術研究目的といえど、生体については原則積極利用せず、死体についても有害物質による汚染状況を把握するための調査等の生物多様性保全に関する場合に限定されるべきである。
(修正案)
第1段落の「捕獲の目的に照らして」から第2段落の末尾「明確にするものとする。」までの部分を、以下を次のとおり修正する。
「捕獲の目的に照らして適正に処分することとし、第三者に譲渡し、引渡すことのないよう指導しなければならない。学術研究目的での捕獲物の譲渡・引渡については、生物多様性保全に直接関わる学術研究目的であって、かつ生体を対象としない場合に限って行うよう、指導することとする。」
 
第3段落を次の部分と差し換える。
「なお、捕獲に当たって半矢等の損傷を受けた個体が生じた場合は、当該個体による人身への危害の防止、鉛中毒事故等の防止および当該個体の無用な苦痛を防ぐために、当該個体の回収に努めるよう、また捕獲個体を致死させる場合は、できる限り苦痛を与えない方法によるよう指導することとする。」
 
●捕獲情報の収集(第9の1の(1)の5))
 捕獲の実態については、最近報道された大分市高崎山の例のように虚偽報告(さらには無許可捕獲も行っていた)などの危険がつとに指摘されるところであり、都道府県による厳格な情報管理が必要である。
(修正案)
第1段落「サンプルを添付させる等して、」と「捕獲実施者に対し求めること」との間に、次の部分を挿入する。
「捕獲日から起算して2日以内にされるよう求めること。」
(修正案)
「なお、必要に応じ捕獲の実施に立ち会う」との部分を、「なお、できるだけ捕獲の実施に立ち会う」
と修正する。
 
●許可対象者(第9の1の(2)の2)のア)
特定計画は、都道府県知事が計画主体であるから捕獲許可を受ける者は当該都道府県の鳥獣行政事務担当職員であるべきである。狩猟免許の有無は実際の捕獲に当たって捕獲実施者に要件に過ぎない。
また、特定計画の目的は、個別の被害に対応するものではない点が留意されなければならない。この点、素案は有害鳥獣駆除との性格の違いに対する認識が曖昧である。
(修正案)
第1段落を次のとおり修正する。
「許可申請者は、特定鳥獣保護管理計画に定められた当該都道府県の鳥獣行政事務担当職員とする。」
第2段落の「捕獲実施者には」以下を次のとおり修正する。
「捕獲実施者には特定鳥獣保護管理計画に定められた当該都道府県の鳥獣行政事務担当職員を含むこと。」
第3段落の「被害の発生状況に応じて」との部分を次のとおり修正する。
「特定鳥獣保護管理計画の内容に応じて」
 
●鳥獣の種類・員数(「員数」は用語として不適切なので、「数」と改められるべきだろう。)(第9の1の(2)の2)のイ)
 
●期間(第9の1の(2)の2)のウ)
(修正案)
1)の「区域」は「期間」の誤りである。また、見出しの数字の付け方を確認されたい。
 
(修正案)
2)の末尾に次の点を加える。
「駆除対象の鳥獣についても、その繁殖に著しい影響を与え、その結果地域個体群の安定した存続を危うくさせるおそれがある期間は避けるよう考慮すること。」
 
●方法(第9の1の(2)の2)のオ)
(修正案)
第1段落の「原則として」と「法第15条」との間に、「当該種のみを特定して捕獲する方法以外の方法及び」を挿入する。
 
第3段落の「なお、」と「水辺地のうち」の間に次の部分を挿入する。
「水質等の生活環境の改善を図るため、また野生鳥類の鉛中毒を防止するために、水辺地における鉛散弾及び鉛空気銃弾の使用は控えるよう協力を求めるとともに、」
 
●鳥獣の種類・員数(「員数」は用語として不適切なので、「数」と改められるべきだろう。)(第9の1の(2)の3)の1)のイ)
 
●愛がん飼養(第9の1の(2)の3)の4)
既に述べたとおり、愛がん飼養を、目的とした捕獲は一切許可されるべきでない。
(修正案)
この項の記述を次の部分と差し換える。
「愛玩飼養は、自然保護、生物多様性保全にもとるものであり、乱獲・密猟を助長し、このような目的での飼養の存在それ自体が違法な飼養との区別を困難にし、違法行為の摘発を困難にしているため、愛がん飼養目的の許可は今後行わないこととする。」
 
●養殖鳥遺伝的劣化防止(第9の1の(2)の3)の5)
飼育繁殖下の野生動物の遺伝的劣化防止のため野生の個体を捕獲することは、ワシントン条約においてもランチングとして議論されている。そこで前提となっているのは、こうした捕獲を許容するためには、全体的なランチングの計画、その科学的根拠、ランチングに名を借りた野生からの過剰捕獲や違法取引を防止するための措置等である。
 日本国内ではそのような緻密な議論などなく、ランチングの実施をチェックするためのシステムもない。このような状況下では、本項の捕獲は一切許可されるべきでない。
(修正案)
この項の記述を次の部分と差し換える。
「養殖鳥遺伝的劣化防止目的の鳥類の捕獲については、捕獲頭数設定等についての科学的知見の集積が十分でないこと等から、当面許可しないこととする。」
 
以上