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自民党「有害鳥獣特措法」案に関する声明

 
法案はこちらをご覧下さい

2007年11月21日

自民党「有害鳥獣特措法」案に関する声明

野生生物保護法制定をめざす全国ネットワーク

本年11月に、自民党が「有害鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律案」(農林水産省所轄 以下、有害鳥獣特措法)を提案し、今国会において議員立法として成立させることをめざしています。

当ネットワークは、この法案を検討した結果、被害対策に有効でないばかりか、ようやく緒についた被害防除対策や野生鳥獣の総合的保護管理の芽を摘んでしまいかねないことから、本法案には断固として反対いたします。

1.捕獲のみでは有効な被害対策となりえない

各地で野生鳥獣による農作物被害等が発生していることは事実であり、被害対策が重要であることは言うまでもありません。しかし、その対策は、有効かつ適切なものである必要があります。有害鳥獣特措法は、もともと駆除促進のための特措法として立案され、自衛隊を投入して一気に大量に捕獲することが意図されていました。しかし、従来の捕獲のみに頼る方法では被害が軽減しないことは明らかであり、新たな被害防除技術の開発と普及、および人材の育成と配置が必要であることは、これまで当ネットワークが「鳥獣の保護および狩猟の適正化に関する法律」(環境省所轄 以下、鳥獣保護法)の改正審議等においても繰り返し強く指摘してきたところです。

2.野生鳥獣の捕獲は鳥獣保護法に基づいて行われるべき

鳥獣の捕獲に関する事項は、鳥獣保護法において定められており、それに基づいて、国の鳥獣保護事業の基本指針および都道府県の鳥獣保護事業計画が定められています。また、農林水産業被害を起こす種については、都道府県単位で特定鳥獣保護管理計画(以下、特定計画)が策定されてきました。さらに、都道府県単位の対応では限界があることから、都道府県を超えた広域管理計画や特定計画の下位計画としての市町村計画が一部の種について策定されてきました。
一方、有害鳥獣特措法においては、市町村が独自に計画を立てた場合には鳥獣の捕獲の権限を完全に委譲するとしています。しかも、この市町村計画の策定にあたっては、専門家の参加や合意形成の場もなく、計画策定後のモニタリングや評価の制度がないため、駆除に歯止めをかける仕組みがありません。現行の特定計画でさえ、都道府県間・市町村間の連携不足が問題になっているのに、市町村単位で独自に捕獲することになった場合は、鳥獣保護法の体系を完全に分断し、現場に大混乱を招くばかりか、総合的保護管理の施策をまったく不可能とさせてしまいかねません。鳥獣の捕獲は鳥獣保護法にもとづいて行われるべきです。

3.被害防除を中心とした対策を推進すべき

この数年来、農林水産省では鳥獣害の防止のために、被害防除技術の研究開発を進めてきました。2005年に開催した「鳥獣による農林水産業被害対策に関する検討会」では、被害防除を中心とした対策が提言されています。その一つとして、農業改良普及員の業務に鳥獣害対策を含めることになりました。各地域振興局では鳥獣害対策の取組みがようやく緒につき、予算もついて動き出したばかりです。今、再び駆除のみに頼る施策が実施されるならば、これらの努力が無駄になってしまいます。2007年7月に策定された「農林水産省生物多様性戦略」では、生物多様性保全をより重視した環境保全型農業や野生鳥獣と共生する森づくりなどの施策が打ち出されています。特措法を制定するのであれば、被害防除に特化した立法措置を行うべきです。

4.生物多様性の保全が国際的に求められる時代に逆行した特措法

日本は生物多様性条約を批准し、2010年には名古屋でその締約国会議が開催される予定です。国内外に生物多様性の保全の促進をさせるべきときに、野生鳥獣の歯止めのない駆除につながる法律を制定することは、時代に逆行しており、国民一般の支持はえられません。

以上

連絡先:野生生物保護法の制定をめざす全国ネットワーク
e-mail: jimu@wlaw-net.net
URL:http://www.wlaw-net.met